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魔女狩りの悪魔  作者:
1.図書館の悪魔
1/13

01.

『私メリーさん。今図書館入口に居るの』


 知らない番号から電話だと思ったらコレだ。今時メリーさんって何だよ。


 秋人(アキト)は掲示板の「図書館内ではマナーモード。通話は控えるように」というビラをチラ見する。


 ブーンブーン


 マナーモードにしたスマホが振動する。

 番号は…先程のメリー某と同じだ。


「…出なくていいよな」


 寧ろ着信拒否した方がいいかもしれない。秋人はそう考え操作する。多分無駄だとは思いながら。


『……ザザ…ザ……わた…シワタシ…メリー……ザザ……今……今…へんきゃ…』


 通話にフリックしてないのに勝手に話し出した。

 迷わず電源を切る。


 ブーンブーン


 電源を切った筈のスマホが振動する。


 電話の相手はメリーさん。

 着信拒否した筈なのに掛かってくるとかホラーの類か。


「どうせ出なくても勝手に喋りだすんだろうなぁ…」


 秋人は誰ともなしにぼやく。

 彼のぼやきも、鳴り続ける電話にも注意する者は居ない。

 否、この図書館内には彼以外の生きているモノは一人しか居ない筈だ。


『…ピンポンパンポーン……私、メリーさん』


「今度は館内放送かよ。何でも有りだな」


『今あなたの後ろに居るの』


 後ろから響く、低く罅割れた声。

 弾けるように飛びすさび後ろを振り向く。

 否、振り向いてはいけなかった。秋人は小さく舌打ちする。つい釣られて行動してしまったが、考えるのが遅すぎた。


 条件を満たしてしまった。


 秋人は後ろに現れたモノを視認する。


 残バラな髪の間から覗くギョロギョロとした血走った目、身体に比べて頭部が異常に大きい。身体のバランスが悪いためか背を丸めて立ち、ほぼ四つ這いだ。


『私、メリー、さん。今、あなた、の前に、居る、わ』


 先程とは打って変わって鈴を転がすような声。

 異形の姿と相まって一層不気味さが増している。

 何よりその血生臭い吐息。恐らく、図書館内に居た人間を喰い殺したのもコイツだろう。


『……■■■■■■━━‼』


 大口を開け奇声を発しながら突進してくる怪物。ぞろりと生えた刃の如き歯は乱杭状であり、鮫の歯のように幾重にも重なり連なっていた。


 秋人は、その突進を直撃しないように左に避わす。

 右腕に鋭い痛みが走るも極力気にしない。死ぬよりかはマシだ。


『うふふふふふふふふふふふふ。お兄さんの右手おいぃぃいしいいいいいいいぃい』


  怪物はグチュグチュと音を立てながら何かを咀嚼する。


 秋人は自身の右腕を見た。後悔した。見なけりゃ良かった。

 右肩から先が無い。右腕は何かに引き千切られたように無惨な傷口を晒していた。


「まぁ、今食べてるのが俺の右腕だよなぁ…」


 秋人は今日だけでも両の手で余るぼやきを発する。

 何故こうなったと思いながら。

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