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第3話 勇者の話

(...ここは?)


マリウスは目を開ける。

床に直接寝かされていたらしく、身体に何も掛けられて無い。

だか爽快な目覚めだった。


「気がついた?」


(え?)


不意な声に慌てて視線を前にするマリウス。

その先に居たのは、


(...ユリフラ)


「マリウス!!」


ユリフラはマリウスを抱き起こし、その身体を激しく揺さぶった。


「お、おい俺は動けな...あれ?」


ユリフラを抱き留めたマリウスは自分の腕を見る。

最後の記憶にある身体は全く動かなかった。

その腕は痩せ細り、ただ横たえる事しか出来なかったのだ。

しかし今あるのは太い腕、鍛え上げられた昔の腕、それより驚いたのは、


「...話せる?」


「ええ...」


涙ぐむユリフラ、しかしマリウスは頭が追い付かない。


「これは夢なのか?」


「夢なんかじゃないわ」


「夢じゃない?」


即座に否定するユリフラ、マリウスの混乱は続いた。


(俺は魔王に敗れて、ランティスに勇者の力を託したんだ。

次に気がついたら身体は動か無くなってて、ユリフラに事情を教えて貰った)


(それからシルビアが来たと聞いて、1ヶ月後に記憶が途切れ...)


「そうよ突然だった、急に息が止まったからビックリしたわ」


「ユリフラ、人の心を勝手に読むなよ」


「仕方ないでしょ、これでしか話せなかったんだし」


「今は話せるだろ」


「やだ」


軽い会話にユリフラは楽しそうに笑う。

本来の彼女は明るい性格だった。

しかしマリウスが倒れ、シルビアと決別し、以来すっかり変わってしまっていたのだ。


(...それじゃ死んだのか)


さすがに今の現状はそう認識せざる終えなかった。


「そうみたいね、私もお供したって訳」


「お前までついて来ること無かったのに」


「いやよ、勇者ランティスが認められた世界なんて」


ユリフラは頬を膨らましてそっぽを向いた。

その仕草は微笑ましい。


(それにしてもユリフラは最後に見た時より若いな、確かもっと老けてて...)


読むなら読め、マリウスはそう考えた。


「マリウス!!」


「すまん」


悪びれないマリウスにユリフラは溜め息を吐いた。


「全く、マリウスはいつも変わらないね」


「そうか?」


「そうよ、普通あんな状態で目覚めたら絶望するでしょ?

身体は動かない、喋れない、それに勇者の名誉もランティスとシルビアに奪われてたのよ」


「そうかな?」


マリウスは軽く頭を捻った。


「違うの?」


「ああ、俺は魔王討伐をランティスに託したんだ、シルビアもな」


あっさりとしたマリウスの態度、ユリフラには意外だった。


「シルビアは婚約者だったのよ?」


「そうだよ」


「愛して無かったの?」


「分からん」


あっさりとしたマリウス。


「分からない?」


「多分好意はあったと思う。

勇者である以上聖女と結ばれるのは決定事項だったからな。

だが愛してるかと聞かれたら...」


「へえ...」


意外な答えにユリフラはマリウスの心を読む。

しかしマリウスの答えは同じだった。


「まあそんな訳だ。

だからシルビアがランティスと結婚したって構わない。

それに聖女だから勇者に惹かれるのは仕方ないだろ?」


「それでもダメ、あんなに『マリウス』『マリウス』ってベタベタしといて、あの尻軽女!」


どうやらユリフラはシルビアの変心が許せない様子。

それは仕方ない事。

ユリフラは諦めていたからだ。

マリウスへの好意を、マリウスへの愛を、マリウスとの未来を。


「やれやれ、手紙でも書いたのか?」


「手紙?誰に?」


「シルビアに」


「書いてないわ、[この手紙を読む時、私は居ません...]そんな救いシルビアに与えるもんですか」


どうやらユリフラとシルビアの和解は難しいようだ。


「そうか」


そんな様子を見てマリウスはユリフラの肩をそっと抱いた。


「ありがとうユリフラ」


「マリウス?」


「俺を支えてくれて。

眠り続けた俺をずっと保護して、目覚めてからも動かない俺の為に全部の世話まで」


マリウスの脳裏にユリフラと過ごした約1ヶ月が甦る。

ユリフラの献身はマリウスを絶望から救っていた。


「一緒に逝くか」


「そうね」


頷き会う2人の身体は実体を失いつつあった。


「また人に生まれ変われるかな?」


「そうだな、もう勇者は勘弁だ」


「そうね、私も貴族や賢者は嫌」


見つめ合う2人、静かに唇を合わせた。


「....一緒だぞユリフラ」


「ええ、マリウス愛してる」


「俺も...」


静かに2人の姿は消えて行った。




その昔、マンダリン王国という名の国があった。

魔王討伐を果たした勇者ランティスとその妻シルビアが治めるその国は世界の尊敬を集め栄華を誇っていた。


しかし今はもう存在しない。

ランティスは勇者では無かったのだ。

二度目の魔王討伐直後、ランティスは言った。


「私は勇者では無い」


妻のシルビアも、


「私は勇者マリウスを偽物と貶めました。

聖女の資格はありません」


そう言った。


最初、世界はランティス達の言葉を信じようとしなかった。

何しろ二度も魔王と戦い、勝利していたのたがら。


益々勇者を称える人々、そんなランティスに異変が起きた。

勇者の紋章が消えたのだ。

勇者の紋章は決して消える事は無い、絶対に。


2人は王位を返上し、マンダリン王国は解体された。

子供達は周辺諸国の貴族達の養子となった。


勇者では無かったが世界を救ったランティス、そして聖女シルビアの子供。

酷い扱いを受ける事は無かったという。


元聖女シルビアは修道院に入り、生涯を勇者マリウスと賢者ユリフラへの懺悔で過ごした。


元勇者ランティスは世界を巡りながら勇者マリウスの名誉回復をしながら一生を捧げた。


最後エピローグ行きます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ああ、まだエピローグ有るんですね。 [気になる点] ユリフラは心読めたのに、ランティスの中読めなかったんですかね。或いは、読むにしても一定の条件有るのか。 まあ、シルビアは事の真贋はなから…
[一言] いいね 作者さん頑張ってね!
[良い点] ランティスの何か悪いことしたのでしょうか。 彼は二回目の魔王を倒したのに、妻である聖女はマリウスへの贖罪しか考えず、ランティスへの愛情のかけらも感じない。マリウスも勇者としての責務をランテ…
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