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親愛なるものへ-5

 揺り動かされて目覚めてみると、険しい顔をした男の人が覗き込んでいた。寝惚け眼を見開いて見ると警察官だった。美生は大きく伸びをしてから、おはようございます、と挨拶した。警官は険しい顔を崩さず美生を見つめている。美生は溢れた涙を拭って、

「どうかしましたぁ」と言った。警官は厳しい顔で睨みながら、

「君、学校は?」と訊ねてきた。

「あたし?あたし、ガッコは行ってないの」

「行ってない?いくつだ、君は?」

「十六」

「十六ってことは、高校生じゃないか」

「んん。プー」

「プーってなんだ」

「プータロー、自由業、無職、ただ飯ぐらい」

「ふざけてるのか?」

「んん。全然」

「家は?」

「あっち」

「住所」

「どーして、そんなこと訊かれなきゃならないんです?」

「どうしてって、確認するためだよ。君の家に」

「あ、じゃあ、今無理ですよ。家に誰もいないから」

「お父さんは、仕事か。お母さんは?」

「お母さんは仕事。お父さんは、家出」

「家出?」

「そう、家出」

「どこへ行ったんだ」

「女の人のトコ」

「…あぁ、そうか」

「帰ってこないから、お母さんが働きに行ってるの」

「君は?」

「こないだまで、バイトやってたんですけどね、まぁ、根気がないもんで」

「兄弟は?」

「妹がひとり」

「学生?」

「中学生」

「そうか。どこの学校?」

「緑ヶ丘。そこのガッコ」

「ああ、あそこか。君もあそこの卒業生か?」

「まさか。あたし頭は悪いんです。妹は優秀で、お母さんの自慢で、あたしは厄介もので、もう家にも居場所がないくらいで」

「そうか。まぁ、しかし、一応確認したいから、交番まで一緒に来てもらえないか。時間あるんだろ」

「まぁ、あることにはあるんですけど、バイト探さないといけないんです」

「バイトって、こんな住宅街であるの」

「コンビニかなって思ってるんですけど」

「まぁ、来てもらおう」

「行ってもいいですけど、家に連絡してもムダですよ。誰もいないから」

「そうかぁ、まぁ、仕方ないな。何か身分を証明してくれる人はいないか」

「ないから、プーなんです」

「どうしようもないな。一応住所と電話番号を聞いておくよ。後で確認するから」

美生はでたらめの電話番号と今潜伏している寮の近くの住所を告げた。警官は不承不承という様子で去っていった。ちょろいもんだと思いながらまたごろりと横になった。案外、簡単に騙せたな、と思いつつ、半分は本当だもんねと呟くとまた眠りについた。


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