第六話 凛堂倖③
春希のお父さんがいる自衛隊の駐屯地に行く途中で天使から連絡が来た。こんな時にと思いつつも頼られたら仕方ない。
「ごめん少しトイレに行きたくなっちゃった。」
少し三人の前では言うのが憚れたが言葉を続けた。
「すぐ追いつくから先の公園で待ってて。」
返事を聞く前に自分の家に飛び込んだ。三人の性格上待ってるということは分かりきっていたので少し強引に行動した。しばらくして三人がしょうがないと言いたげな顔で出発してくれた。公園までは、5分はかかるので多分誤魔化せるだろうと思いつつ天界に向かった。
「どうしましたか?」
連絡を寄越した天使に言葉を投げかけた。
「少し私たちの手に余る事態が発生しました。」
なんだそんなことかと思い続きを促した。
「天照様が懇意にしている三人に関する物です。」
それを聞いた瞬間私は自分でも驚くくらいに狼狽した。
「近く、なにかしらのことで命が危険に晒されることが分かったのですが、何故か私たちではその結果が覆すことができませんでした。」
天使がここで一回言葉を切ってから
「いかがいたしますか?」
私は、一瞬言葉に詰まった後で
「それは、だいたいいつ頃の話ですか。」
天使は言いづらそうに逡巡しながら
「本日です。」
そのことを聞いた瞬間私は
「いますぐ不足の事態に対応できるように準備してください。」
天使へ指示を飛ばしながら大急ぎで地上にむかった。間に合ってっと心で強く念じたが願いが叶うことはなかった。……目の前には、無慈悲な結果が拡がっていた。
「おい。春希、返事をしろ。君、救急車呼んでくれ。後近くの軍医も呼んできてくれ。」
地上に降りて真っ先に目に入ったのは血にぬれた三人の姿と春希の父の姿だった。
「あぁー!?」
三人の姿を見て絶望と後悔を強く感じた、一命を取り留めるようにしか助けることができない自分を歯がゆいと思いつつ密かに治療した。
「三人とも、ごめんね。」
治療の最中もそんな言葉しか出て来なかった。
どうして、一瞬でも三人から目を離してしまったんだと後悔しか浮かばなかったが、そんなことばかり考えたら駄目と自分自身を叱咤しながら全知を使ってことの詳細を調べた。
調べてみて驚いた。天使たちの悪事の数々が大量に出てきた。全知の情報には、間違いは無いので、天使たちの処分に向かった。
「これは、どういうことですか?」
他の神にも手伝って貰い、全天使たちの捕縛に成功した。事情を尋ねると
「天照様が、……地上のあの三人の下にばかり向かわれ、我々天使たちを蔑ろにしていたからです。」
その言葉を聞いて一瞬ハッとなったが、
「そんな巫山戯たことで私の大切な人を傷つけたのですか!?」
正直、全員消し去ってしまいたかったが、アストリアからも怒られてしまった。
「天照、私も地上は楽しいよとは教えたけどそっちにばかり構ってたら駄目。私たちは、神だからみんなに平等に接しなきゃいけないの!」
言われていることには、納得はしたが、
「アストリア、だからって春希たちを傷つけたコイツ等を許せっていうの?」
アストリアは、この言葉を聞いて
「貴方にも非があるから、処分すると問題になるよ」
流石にそんな事態になると処理が面倒なことなると、思っていると
「そんな、天照に提案があるの!」
アストリアの方を見ると何か企んでいる顔が目に写った。
「その天使たちを、管理に苦労している神のところにあげればいいんだよ。」
その手があったとも思ったが、
「アストリア提案は嬉しいけど、やっぱりコイツ等ことが許せないから秘密裏に処理するよ。」
「それにそんなことをしたら、コイツ等逆恨みしそうなんだもん。遺恨を残さないように徹底的に処分する。」
アストリアは、呆れたように肩を竦めていたが、反対はせずむしろ手伝いまでしてくれた。
「貴方が、そこまで肩入れするなんて、地上の子達そんなに気に入ったの?」
そんな疑問に対して
「あの子達は、私を変えてくれた大切な人達だよ。」
残りの後片付けをアストリアに任せて春希達のもとへ向かった。
何時もの姿に戻ってから大急ぎで現場につくと、春希のお父さんと目があった。
「倖ちゃん、無事だったか。春希から一人であとから来ると聞いていて心配したよ。」
「おじさん、何があったの?春希、優真、霧香はどうしたの?」
矢継ぎ早に質問を投げ掛けていった。そうしていないと自分がどうにかなってしまいそうだったからだ。
しばらくして、事の顛末が語られ始めた。
「十分位前に春希から、遊びにいっていい?という電話が掛かってきたんだよ。急にどうしたと尋ねたら四人でお父さんの職場を見たいからと返ってきて、仕方がなく手配をしてからここの公園に迎え行ったんだ。」
ここまでは、全知で調べていたのて知っていたがその後の事は、天使たちの対応で、確認ができていなかった。話は続く。
「そうして、部下と一緒に迎え来てみると辺りが殺伐としていたんだ、何事だと思いすぐ近くにいた警官に聞いて見ると殺人鬼がこの近辺に逃げ込んだというものだったんだ。」
「慌てて、春希を探したが見つけたときには、殺人鬼と対峙していた。後ろの二人を庇ってか重症の怪我をしていた。部下と協力して犯人を取り押さえることが出来たが、二人にも被害が及んでしまった。」
悔しそうに歯をぎりぎりと鳴らしていた。
「三人は、大丈夫なんですか?」
ハッとしたようにこちらを見て、
「すまない、不安にさせてしまったな。あぁ、みんな無事だよ。」
その言葉を聞いて、私は緊張の糸が切れたのかその場に座り込んでしまった。
「さあー。春希たちも目を覚ましているはずだ、倖ちゃんいこうか。」
大きく頷いて、病院へ向かった。