第五話 凛堂倖②
「倖、何ボーッとしてるんだ。」
私が過去にふけっていると隣に住んでいる石川春希が話しかけてきた。
「うんうん。なんでもないよ。」
私は、いつも通り素っ気なく返事をした。
そんな私を見て春希は
「また、そうやって素っ気なく返事するんだ。」
こちらからもいつも通りのセリフを返ってきた。
「そんなんじゃ、僕や優真と霧香以外の友達出来ないよ。」
心配だと言わんばかりの顔でこちらに言ってきた。
「わたしは、それでもいいよ。」
「だから、そういうところが心配なのもしもの時、倖の性格上絶対助けとか呼ばないだろ。」
大きな溜息をしてきた。
「また、二人だけでいちゃいちゃしてる。」
「優真あれは、いちゃつきじゃないわ。一方的な指導よ。」
春希とやりとりしているうちに宮間優真と橘霧香が近くに来ていた。
「春希、そんなこと気にしてないで遊ぼうよ。」
優真が無邪気にただ純粋に言ったセリフに春希も毒っ気が抜かれたのか。
「そんなこと言うな!」
小さな抗議を残して、私への説教?が終わった。
「で、何する?」
私は内心切り替えが早いなーと思いつつも提案してみた。
「春希のお父さんのところに行ってみない。」
地上に降りたときは、貪欲すぎる欲望や闇がひしめき合っていて正直何回も消し去りたいと思うことがあった。
そんな世界に少々失望している中で明かりを見た。それが、春希と優真と霧香の家族たちだった。
似たような気配は、確かに多くあった。しかし、周りとはあきらかに違う。そう思って、すぐ近くまで引っ越してきた。
そして、その予想は当たっていた。結果として掛け替えないもの得ることが出来た。
「「うん、いいよ。」」
「でも、こっそりね。お母さんが煩いくらい危ないからって言って、父さんも連れて行きたがらないから。バレないように十分注意してね。」
二人の返事の後で春希が補足してきた。
しかし、こんな提案をしたことを私は後々後悔することになった。