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第九話 転生

 1928年5月3日、俺は、皇帝家の三男として生まれ、将暉と名付けられた。

生まれてから1~2年は、記憶が戻らずにただただ、こっちの住民と思って、生活していた。

 3歳の誕生日を機に神界や前世のことなどを思い出した。



「少し、想定外だった。まさか3歳まで記憶が戻らないなんて!」



 そんなことを考えていると、頭の中で声が聞こえた。


「(春希さん、聞こえますか。聞こえていたら、声に出さないで返事してください。)」



「(アリアか。聞こえているよ。じゃあ、説明を頼んでもいいか。)」



 記憶が、戻ったせいか前世の名前で呼ばれることに違和感は感じなかった。まあー。一、二年で認識なんて変わらないかとくだらなら事を考えてしまった。そこから説明を受け納得した。



「(そうか、倖からのお願いで三歳まで記憶が戻らないようにしたと。)」



 少し予想外な名前が出てきたことに驚きを覚えつつも、倖らしい心遣いだとも思った。



「(記憶が、戻って間もないと思いますが早速一つ頼み事をしたのですが、・・・・いいでしょうか?)」



 お願いがどんなものかは、予想がつかなかったがこの状態で無茶なことはしないだろうと思い、了承した旨を伝えてから黙って待っていると、



「(魔道機関に関する論文をいくつか私の指示に従って、書いて欲しいんです。まあー正確に言うと魔機に付属している電算機の論文を書いて欲しいのです。



 それと同時にその論文を実行に移すために、あなたにはいままで禁止してきた電算機に対する情報を開示できる方法を授けさせていただきます。あなたの役に立つように活用してください。情報の今後の扱いはあなたに一任します。)」



 一気にたくさんのことを頼まれてしまったが、そのことはまあなんとかなると考えそんなことよりも気になっていることをアリアに尋ねた。



「(頼まれたことについては、まず分かった。時間はかかるかもしれないがやっておく。・・・それよりも霧香と優真はどうしている?

 無事に転生を終えているか?)」



 少しの間、沈黙したことに不安を覚えたがすぐに否定と回答をくれた。



「・・・お待たせしました。ああーまず、先に言っておきますが転生が失敗したとかそんなことはありませんから、調べるのに手こずってしまいましてね。・・・さて、説明させていただきます。

 まず、優真ですがこの世界では、倉敷家という候爵家の三女として生まれていて、名前は寧々と言います。

 次に霧香は、こちらも高梨家という候爵家に次女として生まれていて、真矢と言う名前です。

それぞれ、皇帝家と繋がりの深いところです。注文どおりに行ったようでホッとしています。」



 そこからの会話はスムーズだった、二人の記憶は戻っているのか?こちらのことは伝えているのか?これからの展望について順をおって聞いていった。



「ふむ、連絡はもう済んでいて俺よりもさきに記憶は戻して魔力向上鍛錬を行わせていると。」



 記憶は戻っていると確認ができたので良かったが、そのことを少し羨ましく思ってしまった。今からでも充分に魔力を向上させることは出来るが、やはり差ができてしまうからだ。幼少の頃からやればやるほどに使える量は上昇していくという性質があるため早々この差は埋まるものではない。



「まあーしかたないかあー。俺には頭があるしな。記憶が、戻ったからには改革できるところにはてを加えていってやる。」



 そう言って闘志を燃やしていった。アリアからは、そんな体なんですから程々にと釘をさされたが気にせず実行に移していった。



「まずは、資源関連か。」



 前世の日本に取って燃料問題が特に問題であった。ほとんどを輸入に頼っているからであったため、この解決を進めるかと動き出すがこの世界では必要ないことを知った。



「へえー。これだけ出るなら燃料問題については考えなくても良さそうだ。」



 この世界においては、日本は有数の産油国と知られていた。そのため、精錬技術、基礎工業力も自ずと向上していた。そのため、取り組もうとしていたことの一部が終わっていることになる。

また、大陸方面に領土が合法的に存在するために鉄資源なども問題ないことが資料などを読んでいって分かった。



「あと必要になってくるのは、部品規格の統一化と技術者の師弟制度から広く学べるように制度を作ることだろうな。」



 師弟制度に関しては、駄目だとは言わないが非効率な面と一度に伝授できる人数に限りができてしまうため、一般工員に対する教育が不十分になってくる。この国で工業力の化け物たるユスティナ連邦と張り合う上では無駄なことを無くし、できるだけ効率化を推し進めなくてはならないからだ。



「ユスティナは、前世のあったナチスに近い思想が蔓延しているからなあ。」



 この世界において世界一と言える国家は、選民思想が蔓延してしまったためにその国民までもがその熱狂の中にあると言っていい状態になっていた。



「それこれもあの大陸での失敗がなければ、こんなことにはならなかったんだがなあー。」



 行っても仕方がない愚痴ばかりが漏れ出てきてしまう。



「そんなことを言うのも、まずはやれることをやってからだ。」



 小さい体ながらも改革をすすめるために動き出そうとしたが、その前に高梨家と倉敷家が俺の三歳の誕生日を祝いに来てくれた。

そこには、同い年の寧々や真矢がいた。



「皇帝陛下、将暉殿下誕生日おめでとうございます。」



 そこからは、ありきたりな社交辞令が飛び交い最後に真矢と寧々が紹介された。お互いに分かっているので確認の意味も込めて昔よく使っていた秘密の暗号を用いて話をした。

 その様子を親族たちが、微笑ましいといった感じで見つめ仲睦まじいと感じために俺と二人との婚約を推し進めていたが、当時の俺や二人は知らなかった。



「また、今度お会いしましょう。」



 綺麗なお辞儀をして二人は去っていった。



 そこからは、この体でも意見を反映させられることをしなければならないが、目立ちすぎても問題になるとしてどうしたものかと考えていた。

偽名を使って、意見を提出していくと言う事も考えたが実績作りに時間がかかる上に信用という面では、圧倒的にダメな発想だ。(そもそも、匿名で政に対する意見出したって、絶対怪しいってなるよな!)

 そんな、話の中みたいに上手く進んでくれないもんかなと嘆きつつも思考を巡らせていた。

 


「随分、思い悩んでいるようだけどどうしたんだい将暉?」



 頭をフルに使ってうーんうーんと唸っていると声がかかった。一瞬誰だろうと思い、後ろを振り向くと第二皇子たる兄が立っていた。



(じん)兄さん、……うんうん。少し忘れていることがないか考えていただけだよ。」



 真面目にそんなことを言うのも何なので、誤魔化したが怪しまれていると言うことがヒシヒシと伝わってくる。



「まあー。将暉が言いたくないって言うなら別にいいけどさあー。悩みがあるなら相談していいだよ。家族なんだし!」



 とてもありがたいことを言ってもらえているが、何とか話題をそらした。

 そこからは、誕生日のお祝いや贈り物をもらった。それに対して一喜一憂しながら話を続けているとふと仁兄さんが愚痴を零した。



「はあー。将暉と話をしているのはとても楽しいことだな!

 それに加えて、政府の連中は……もう少し警戒を緩めて話しやすくしてもらいたいもんだ。

 政などそんなことということは分かっていたが、こんなにも精神が疲弊するとは思っても見なかった。」



 そんな愚痴がポツリポツリとダムが水を流していくように徐々にその内容が増えていった。政策や制度のあたりの事を話し始めたその時ふと思いついた。

 知恵袋的な立ち位置に経てばこんな年齢でも純粋な発想と取られかもしれないし、誘導しやすい。そう考えたので、比較的簡単な質問をして知恵のアイディアにしたと思わせるようにしてから、政策や制度のことをこの年齢でも言いそうなことに置き換えながらに話していった。その変換にけっこうてこずったがなんとか意味が伝わるようにできた。

 最初は、笑って受け流していたが話をしていくうちに態度は変わっていった。語り終えると、



「将暉、お前は天才だ!こんな年齢でよくこんなことを思いついたな!」



「……そんなことは…ないよ。ただ、思ったことを言っただけだもん。」



 そんな感じで政治や工業関連のことに介入できるきっかけが完成していった。

 最初こそ、子供の浅知恵と笑っていた者たちが大半だったが最後まで聞くと一様にしっかりと聞くようになった。

 これで、発言権はできたと思い形に出来るだけの情報をもたらしつつも年相応の態度を維持していった。


 そんなことが皇帝陛下…いや父上にも届いたのか正式に相談役という称号をくれた。



「……もう少し年相応のことをしてほしいというのが、親としての心情だがその才能を生かさないのは勿体ない。今後も意見を与えていってくれ。」



 こんな感じで、皇帝家とは言っても結構緩い感じて過ごすことができる。そんなことができるのはひとえに今の父上によるところが大きい。

 今までも皇帝家とあって教育や民のことに対して第一にどうしろか教えられる。民は守るべきものと教えられる。

 そんな教育も相まって、暴君が生まれていないのが自慢とされてきた。

 だがやはり、序列というつまらない物を重視する風習は残っていた。

だが、そんな状況を壊したのが現皇帝たる父上による物だ。王位継承後に初めて実行に移したことが、序列重視の風潮の撤廃だった。

父いわく『そんなものに閉じ込められてたら、視野が狭くなるから』だそうだ。

 そのため、敬称は残るが第一第二と言った序列争いは起こりにくくなった。そのため、兄弟仲、家族仲は極めて良好と言える。ドロドロとした宮廷争いがないことに対してホッとしている。


 称号もいただいたためにそこからはスムーズだった。改革は緩やかにだが、確実に実行に移せていた。

 他にも勉強や魔法や魔術の鍛錬をしつつといった生活を続けていった。


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