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鋼と魔法の英雄伝  作者: 武本 丈
ゲートを抜けると、そこは戦場だった
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ドリュオンを発つ

 ここはドリュオン領ソーノ星系とアディードに占領されたクロム星系を繋ぐゲート付近の宙域。ドリュオン本国を出港したガンダルフは8日かけ3つのゲートを経由して此処までやって来た。比較的安全な自国内の航海でやや緩みかけていた艦内の空気も、戦場を前に引き締まったものに変わる。

 ブリッジでは操舵を担当するジム・ヴォル・ジェガンズが舵を握る手に力を込め、緊張をほぐすようにゆっくりと息を吐き出した。

「おい、まだ戦闘宙域にも入ってないんだ。今からそんな緊張してたら、この先持たないぜ」

 ジムに声をかけたのは、隣に座っていたディック・プライド。彼はこの艦の副長を務め、火器管制も担当している。ディックはジムと比べるとリラックスしていて、口髭をいじりながら悠々と計器のチェックをしている。

 ブリッジの側面の席にはレーダーや機甲部隊の管制等を担当するアルス・トロリアとレベッカ・オキス・ペタラムの2人が目の前のスクリーンに映し出される情報をチェックしている。

 ブリッジの中央、他より一段高くなった場所には艦長のアムラが座る。その周りには様々な情報を映し出したスクリーンが何枚も浮かび、正面の巨大な水晶球にはガンダルフを中心とした周囲5宙里の様子が映し出されている。

 アムラは水晶球の映像でガンダルフの前方に複数の艦影を認めると、マイクを手にとり艦内放送のスイッチを入れた。

『あ~、本艦は間もなくクロムに通じるゲートに到着する。先行していた艦隊と合流してそのままゲート抜ける。ゲートを抜けると同時に戦闘開始だ。総員戦闘配置につけ』

マイクを置いたアムラは自分の後ろ振り返り、艦長席よりさらに1段高いところにある席を一瞥した。他とは明らかに違う、玉座のような装飾のついたその席には現在誰もいない。この席の主であるアーサーは現在ドラゴンで出撃するために、先程ゴーレムデッキへ向かったところだ。

「機甲部隊もすぐに出すぞ。それぞれの機士はスタンバイ出来てるか?」

アムラはアルスに尋ねた。


 ガンダルフに所属する機甲部隊は3つの小隊で編成されている。

 まず1つめはアーサー直属のゴーレム隊。この隊はアーサーとリルムの乗るドラゴン、シアトリアのペガサス、そしてコスモのグリフィンの3体である。

 次にマルスが隊長をつとめるパペット隊。この隊は機動性に優れたマルスのランスが1体、遠距離攻撃に特化したバリスタが2体、スクネも乗る近距離パワータイプのバトルアックスが2体の計5体。

 最後にフォルスが率いるビークルアーマー(戦闘艇)隊。この隊には火力に優れた優れたファイアボールと、機動力に優れたウインドカッターの2種類の機種のビークルアーマーがそれぞれ3機づつ配属されている。


「今確認するッス」

 アムラに問われたアルスは機甲部隊につながる通信回線を開いた。

『皆さん間もなく発進ッスよ。準備はオーケーッスか?』

『は~い、こちらはゴーレム隊~、機体の準備は終了してま~す。あとは~、殿下のご搭乗を待つだけで~す』

『パペット隊、オーケーです』

『ビークルアーマー隊も準備完了。いつでも出られるぜ』

ゴーレム隊からはリルム、パペットとビークルアーマーの各隊からはマルスとフォルスが応える。

「キャプテン、あとは殿下が搭乗すれば全機準備オーケーッス」

「おぅ、ゲートを抜けて戦闘開始したら各機随時発進。艦はこのまま前進だ」

 アムラはスクリーンに映し出された艦の状態をチェックしながら答える。アムラが視線を注ぐスクリーンにはガンダルフ最強の兵装である魔導砲への魔力充填率が表示されている。その数値は100%を超え、なおもジワジワと上昇している。このまま充填を続けると、戦闘開始前に魔導砲は過負荷で暴発してしまう危険がある。アムラはスクリーンから視線を上げると、アルスに問いかけた。

「ゲートの向こうの状況は?」

アルスは自分の前にあるスクリーンに小さなウィンドウを開き、新たな情報を呼び出した。

「クロム側に潜伏している斥候からの情報によると、妖魔たちもこちらの動きを察知して、ゲートの前に群がって待ち伏せしてるみたいッスね」

「予定通りだな……」

 アムラはガンダルフがゲートに到達するまでの時間と魔力の充填率を照らし合わせて計算すると、クルーに指示を出した。

「ジム、ガンダルフのスピードをコンマ3宙里上昇、レベッカはゲートにアクセス開始、ディックはゲートを抜けると同時に魔導砲を射てるようスタンバっておけ」

「ラジャー」

「キャプテン、間もなく先行していた第13艦隊と接触するッス」

 各クルーがアムラの指示に応えて作業を開始する中、アルスが第13艦隊との接触を告げる。

 第13艦隊は旗艦であるレンジャー級アラゴルンを中心にアーチャー級レゴラス、ファイター級ギムリ、ナイト級ボロミアの4隻の戦艦が隊列を組んでゲートの手前でガンダルフを待っている。

「時間がねえ、このままゲートに向かいながら合流する。殿下との謁見は戦闘が終わってからだと伝えろ」

「了解ッス」

アルスがアムラの指示に従ってアラゴルンに通信しようとすると、通信席のスピーカーからアーサーの声が割り込んできた。

『待て、今からドラゴンでガンダルフの甲板に出て、略式の謁見とする。13艦隊にはそのように伝えろ』

アルスが指示を仰ぐようにアムラの方を振り替えると、アムラは艦長席のマイクのスイッチを入れドラゴンとの通信回路を開いた。

「敵は予定通りゲートの前に集まってます。状況が変わる前に突入する為に艦のスピードは落とさねえ。かまいませんか?」

『致し方ないな。顔見せ程度でもやらないよりはマシだろう』

アーサーは返事と共に発進ハッチを開く要請を送ってきた。アムラが無言で頷くと、レベッカがすぐにコンソールを叩き、ゴーレム発進用のハッチに開指令を入力した。

 ガンダルフの中央ブロックを取り囲むように据え付けられた4つのハンガーユニット、その内の1つのユニットのハッチが開き、紅の巨大な翼を背負った1体のゴーレムが姿を現した。鮮やかなトリコロールカラーに染め上げられたボディの要所要所には金色の縁取りが施され、胸の中央に盛り上がったブルーのコックピットハッチにはこれまた金色でドリュオン皇国の紋章が大きく描かれている。頭部のブルーのヘルメットの両脇からは耳に当たる部分に角状のパーツが伸び、純白の眉庇には深紅で楔状のモールドが刻まれている。眉庇の下のスリットの奥で輝く一対のアイレンズ。幅広の刀身の巨大な両手持ちの剣を手にガンダルフの甲板に降り立ったそのゴーレムこそ、アーサーの乗るドラゴンである。

 第13艦隊の4隻の戦艦はすでにガンダルフを先頭に魚鱗の陣形を組んでいる。防御力に優れたファイター級やナイト級が前に出る陣形ではなく、火力が高い反面防御力に劣るウィザード級のガンダルフを先頭に配置するのは、作戦上の都合もあるが、それ以上に周囲で見守るゲート守備軍や報道を通して見る中央の貴族や国民に対してアーサーが先頭に立つことをアピールするためでもある。

 進行方向に向けて仁王立ちしていたドラゴンはいよいよゲートにさしかかろうという時おもむろに振り返り、付き従う第13艦隊や周囲で見守る守備軍を見渡す。そして、魔力に乗ったアーサーの大音声が宇宙空間に響き渡る。

《ドリュオンの旗のもと我が剣ラグティウスに集いし戦士たちよ、共に戦地へ赴いてくれること感謝する。私は約束する。諸君と共にクロムを蹂躙した妖魔たちを打ち払い、勝利の二文字と共に帰還することを》

 ドラゴンは踵を返し正面に向き直ると、大剣を振るい、その切っ先をピタリとゲートに向ける。

《いざ、出陣!!》

 アーサーが叫ぶのとタイミングを合わせるようにゲートが輝き始める。直径5km程あるリング状のゲートの内側の空間には光の粒子に満たされていき、やがて光輝く1枚の壁となる。

 ゲート突入まであとわずかとなったブリッジでは、アムラが左手でシートの脇に据え付けられたスティックを握り、右手は正面のコンソールを滑らせる。左手に握られたスティックには小さなジェルーンが埋め込まれており、魔法が発動寸前であることを示す光が明滅している。

「ゲートを抜けると同時に敵の集中しているところに魔導砲を射つ。ディック、魔導砲発動呪文の最終文節権限を委譲するぞ」

「ラジャー、最終文節権限の受領を確認」

アムラの握っていたスティックの輝きがディックのシートにあるトリガー付きのスティックに埋め込まれたジェルーンに移る。

 ガンダルフを含むウィザード級戦艦最大の特徴として、大容量の呪文入力システムにより数万に及ぶ長文節の呪文を入力し、任意のクルーが最終文節を唱えることで大出力の魔法を発動する能力がある。

 ガンダルフ最大の威力を誇る魔導砲は充填した魔力を全て破壊の光として放出する魔法で、その呪文の入力には丸1日以上かかる。その魔導砲の発動トリガーがディックの手に委ねられたのである。

「ゲート起動確認」

「ゲート突入まで10…9…8…7…」

 無事ゲートが起動しソーノ星系とクロム星系、数百光年離れた2つの宇宙空間が繋がったことをレベッカが告げ、ジムのカウントダウンに合わせてガンダルフとそれに続く4隻の戦艦がゆっくりとゲートへと進入した。

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