第五話 錬金錬金錬金錬金錬金錬金れんき……ポーション
「何か知っているという程知ってはいません」
……ハズレっぽい。
「ですが、ゴというのはこの街が出来る前にいた部族の名前ですね。なので今の世の中にはいないでしょう、詳しいのは生産ギルドのギルドマスターが詳しいですよ、彼は歴史好きですからね」
でも次の目標は手に入ったわけか。なんかゲームしてるって感じだなぁ。でももう一度お願いしますを連発しても同じことは言ってくれなそうだし、怒られそう。試すのは止めておこう。
「分かりました、ありがとうございます。また今後資料見に来ます」
一礼して辞去した。
次は生産ギルドか、一応【錬金術】って生産に入るよね? ならギルドに入っておいてもいいのかな?
生産ギルドは丁度冒険者ギルドの目の前だったのでそのまま突撃。
<生産ギルド登録のチュートリアルを開始します>
っとチュートリアルが開始してたのでカウンターに座る。造りは冒険者ギルドと同じだ。
「ようこそ生産ギルドへ、ご登録でお間違いないですか?」
「はいそうです」
「畏まりました、では此方に手をのせてください」
此処までは冒険者ギルドと同じだ。
「生産と言っても様々な物があります。宜しければどのような生産活動をお望みかお教えいただいても?」
「【錬金術】と【料理】をコントラクトモンスターの為に使おうと思っているくらいです」
「成る程、では大まかな説明だけさせていただきますね。生産ギルドは様々な生産者を守る物です。例えば珍しい物を作れと強要されたり、レシピを譲れ公開しろさもないと等の脅迫から身を守らせていただいています。その代わり生産ギルドから指名依頼をさせていただく事もありますし、あちらの掲示板からご自身に製作可能な物を納品していただく事でランクを上げて行くことも出来ます。また商業ギルドと提携しておりますので、価格帯が分からない場合は商業ギルドを通してしっかりと適正価格で売る事も可能です」
へぇ、生産ギルドと商業ギルドは二つで一つみたいな感じなんだね。合体しないのはそれぞれ絶対に片方をやりたくない人がいるからかな。生産一筋とか。
「何がご不明な事があればお気軽に聞いてください、ある程度はヘルプにも載っていますよ」
「ありがとうございます」
「登録は以上になりますが、なにかございますか?」
チュートリアル中に言ってもいいのかなぁ? まぁ言うだけならただかな。
「あの、此方のギルドマスターに会うには、どうしたらよろしいでしょうか?」
「うちのギルマスですか?」
「はい、ちょっとお伺いしたいことがありまして」
「ふむ、そうですね、因みにその内容をお聞かせいただく事は可能ですか?」
「はい、ゴ・フレドという方を知っているか、知らなくてもゴという方たちについてお話をお伺いできればと」
「……そっち関連でしたか。そうですね、少々お待ちいただけますか?」
「はい」
受付のお姉さんは席を外してカウンターの奥にある階段を上がって行った。あの上にギルマスがいるのだろうか? でも門前払いされないだけよかった。此処で登録したばかりの方に会わせることはできない的な事を言われたら折角の初めてのクエストが長引いちゃう。ぱっと終わらせてアルフともふもふしたいなぁ……アルフ気持ちよかったなぁ、もふもふ。
「お待たせいたしました」
「は、はい」
ちょっとトリップしてたけど、大丈夫だよね?
「流石に直ぐにお会いになる事は出来ません」
それはそうだよね。
「しかし、此方の依頼を受けて達成して頂ければ、少しの間ですがお話をすることは可能です」
「因みに依頼とは」
「ポーションを作って欲しいのです」
「えっと、実はまだ【錬金術】を試したことが無くて」
「でしたら此方と提携している錬金術師の方のお手伝いをしていただく事は可能ですか?」
「それでしたら、因みに期間は?」
「本日一日ですね」
メニューを開いてみる。今のゲーム内時間は11時、ずっととなるけ結構な時間だけど仕方ないか。それに【錬金術】を学ぶ絶好の機会だしね。
「受けます!」
「ありがとうございます、実は今ポーションが足りずに困っていたのですよ。十二神の皆様からのお告げで異界人の方々が来るのは知っていましたが、思ったよりもポーションの消費が激しくて此方が追い付かなくなる見通しでして」
「成る程」
丁度いいから利用したってわけか。
「因みに生産系の技能を持っていなくてギルマスにあう場合はどうしたらいいのでしょうか?」
「それは各ギルドのギルド長のご紹介があればですね」
それぞれにちゃんとクエスト達成への道は用意してあるのかな。
それに、もしこのクエストの報酬が良くて皆やり始めたらそれこそポーションの数が賄えるって言う計算なのかも。
「では此方にお願いいたします」
貰った紙が地図に変わって私のマップが点滅した。
<生産ギルドの登録チュートリアルを終了します>
冒険者ギルドの時と同様に視界がぼやけて開けた時にはプレイヤーのいる光景に。
私はそのまま外に出て地図を開く。今度は大通りを神殿まで行って東に行くらしい。点滅している所は大通り沿いなので分かりやすいだろう。
足早に歩いて行く。プレイヤーの人数は先ほどよりも増していた。どうやら丁度皆さんが起きてから一服終わってINする時間らしい。
人ごみを通り抜けて目的地へ。
そこは一件の薬屋だった。入り口には閉店の看板があったけれども、中でポーションを作っているのだろうか?
ノックをしても返事が無いので無礼を承知で中に入ってみる事に。鍵はかかっていなかったので普通に扉を開ける。すると扉に付けられていたベルが鳴る。
「お休み中ですけど~、ギルドの方ですか~?」
奥から聞こえてきたのは女性の声だった。
「あの、ギルドから今日一日ヘルプに行くように言われた者です」
「助かります! 中に入ってきてください!」
お店のカウンターを超えて声のする奥へと入る。
奥に入ると直ぐにその人物はいた、茶色のパーマがかった髪を揺らして振り向いたそばかすの女性、結構可愛らしい方だ。
「どうも、薬師のマールです」
「レオラです。【錬金術】は持っているのですが、まだ使ったことが無くて」
「大丈夫ですよ、私も【錬金術】も持ってますから。量産するなら錬金術の方が楽ですし」
「今日一日よろしくお願いします」
「こちらこそ。じゃあ早速作業にはいろっか、先ずそこの鍋の前に立って」
鍋や薬草やらが置かれている場所に誘導されて、少し薄暗い部屋を行く。失礼だけど、此処に大釜があったら魔女の製薬所みたいだ。
目の前には鍋に入っている水、隣には乾燥された薬草、そしてポーションの瓶。
「【錬金術】の使い方は簡単だよ、材料を用意して錬金って唱えるだけ。本当は一度作ってから錬金をした方がいいけどね~」
「作ってというのは【薬師】で、ですか?」
「そうなのよ、そうすれば【錬金術】に品質の高い物を登録することが出来るからね~」
「【薬師】取った方がいいですか?」
「ん? 大丈夫。納品するのはそんなに品質高くない奴だから、取り合えずいっぱい欲しい~って感じらしいんだよね。品質高い奴はそのぶん薬草も余分に使うからね~、納品は品質Cでいいからね」
「Cって結構難しそうですけど」
「へ~きだよ、なにせ私が用意して加工した材料だから、最初はDにしかならないと思うけどスキルのレベルが上がればイケル~。じゃあ私はこっちで作業してるから、そこにこんもりある薬草と下に置いてある瓶無くなったら教えて~」
マールさんはパタパタともう一つの作業台に向ってから、ものすごいスピードでポーションを作り始めた。
「あっ、作り終わったのは棚に掛かってるマジック袋に入れてね」
「はい」
棚に掛かっている袋は一つしかないのでこれだろう。多分アイテムボックスと同じ効果なのかな?
さて、始めてみますか。
台の上にあるポーションの瓶に向って【錬金】。
唱えると瓶に薄い緑の液体が込められていた。流石錬金術、凄いファンタジー。
薬草の山は全然なくなっていないけど、一本にそれほど使わないのかな?
そうだ、どれくらいの品質なのか確認しないと。
名称:初級ポーション
☆:1 品質:E 再利用時間:40秒
HPを小回復するポーション。
製作者:レオラ
E……、ちょっとへこんでしまったけれどもやるしかない!
三本程作ったらDになっていた。どうやら【錬金術】のレベルが上がったようだ! よっしガンガン行きまっせ~。
それからはもう本当に無心に頑張った。目の前の薬草を無くすように永遠と錬金錬金錬金。でも目の前の薬草が消える前に消えてしまった物があった。
「すいませんマールさん!」
「どうした~? 薬草きれちゃった?」
「MPが切れました」
「あちゃ~、じゃあこれ飲んでやってね~」
さっと来て隣にいくつか紫色のポーションを置いて行くマールさん。中身はMP回復ポーションだった。
「あの、ポーション作るのにポーション飲むって」
「いいのいいの~、なんかMPポーションはもうちょっと後でもいいから普通のポーションが欲しいみたいなのよ~」
「では有難く」
一気にグイッと。
……不味い。なんて言ったらいいんだろう、超薄いだし汁を不味くした感じだ、なんか舌に残る。でもMPは回復したので頑張って製作しなくては。
それから山が半分以上消えたところで漸くCとDを行ったり来たりするようになった。品質が上がるとクールタイムも縮むようで、結構重要だ。もしかしたら回復量も少し違ってくるのかもしれない。
それじゃあ品質C安定を目指して頑張ろう!