第三話 人多いモフモフしよ
取り合えず言われた通り先ほどのレベルアップで得たポイントを使って【鑑定】のスキルを取って外へ。
街並みは結構綺麗だったけれども、どうしても初期装備のプレイヤーが目に付く訳で。そうするとそのプレイヤーが皆同じ方向に進んで行くのが分かったので私もそれにならってついて行くことにした。
地図は右上に簡略化されたものが表示されていて、どうやら私達の出発地点は街の真ん中だったようだ。今向かっているのは大通りを北へ。
途中大きな建物に入っていくプレイヤー。通りを挟んで二つある建物にそれぞれ入っていっている。私も入って行く人の多い方へとならって入ってみた。
中に入るとアナウンスが聞こえた。
<冒険者ギルド登録のチュートリアルを開始します>
イエスノーを選ぶことなく辺りが一瞬靄に包まれたと思ったら建物は先ほどと同じだけれども、プレイヤーがいなくなっていた。
カウンターには美人な女性や格好いい青年がいたので、その中でも可愛い系の女性の元へ向かった。
「ようこそ冒険者ギルドへ、ご登録ですか?」
「そうです、お願いします」
「はい、それでは此方のプレートに手を置いて下さい」
出された手形付きの銀のプレートに手を置くと、一瞬光って直ぐに消えた。
「もう大丈夫ですよ、これで登録の方は完了となります。冒険者ギルドの説明は聞かれて行かれますか?」
「はい」
「畏まりました。では先ず大まかな流れをご説明します。最初に入って左側にある掲示板から、お好きな依頼を受けていただきます。依頼は基本的に討伐、納品、採集等に分かれています。依頼はその場で受ける事が可能ですので依頼を受けていただき、依頼内容をこなしていただきます。完了しましたらカウンターまでお持ちいただければ清算致します。いくつかの依頼を完了していただくと冒険者のランクが上がり使える施設や規模が拡大していきます。特に冒険者の皆様に必要な物が入って右側にございますあちらの器械です」
つられて目線を動かすと、緑色の箱がずらりと並んでいた。
「あちらに手を置いていただくと、個人を認証しアイテムやお金を預ける事が出来ます。預けられる量はランクが上がるにつれて多くなっていきますので、頑張ってランクを上げられるのが宜しいと思います」
簡易的な倉庫なのかぁ。確かにそれは必要だね。
「ランクや依頼はメニューからご確認いただけます。また他のギルドへの重複登録に罰則等はございませんのでご安心ください。以上でご説明を終了させていただきます、何か分からない点はございますか?」
「大丈夫です」
「もし何かございましたらお気軽にカウンター、もしくはメニュー内のヘルプをご参照下さい」
「ありがとうございます」
<冒険者ギルドの登録チュートリアルを終了します>
また辺りがぼやけ、はっきりと視界を確保した時には先ほどいた場所、多くのプレイヤーがいる場所に戻ってきたようだ。
じゃ取り合えず依頼を受ければいいんだよね。
掲示板の方へと足を向かわせて、一定距離近づくと目の前にディスプレイが現れる。そこには、討伐、納品、採集の三項目に分かれた画面で討伐を押してみると討伐依頼が幾つか並んでいた。
こういうのは上から受けていきたくならので、一番上の依頼であるウルフ三匹の討伐を受けてみた。同時に受けられる依頼は三つのようだ。他にも納品と採集を見ると、納品にはウルフの牙三つというのがあった。でもこれって手に入れてから受けるのでもいい気がするのでスルー。何があるかだけ見ておこう。
採集は薬草、納品は他にネズの皮三枚というのもあった。
他のはスルーして先ずは肩慣らしにウルフ討伐だけ受けてみよう。ウルフは既に契約石を持っているので【契約】は出来ないけれども、沢山使えばレベルが上がるはず? それとも成功させるとレベルが上がる? やってみれば分かるかな。
場所はこのまま北に行ったところにある草原にいるらしい。
他のプレイヤーも私と同じく北へと向かっている。
……もしかして結構な数が北にいる? 狩る得物残ってる? そんな焦燥に駆られて少し早歩きで草原に出てみたけれど。
結果は、多くのプレイヤーがモンスターの出現するのを待っている状態だった。
「これ、どれだけ時間かかるんだろ」
外にでて思わずと呟いてしまった。癒しが必要だ。
「召喚、アルフ」
地面に召喚陣と思しき魔法陣が広がりそこから癒しのモフモフが出てきた。
「アルフ~」
門から少し離れてモフモフを堪能する。アルフは嫌がるそぶりも見せず、それどころか甘えてくるので更にヒートアップ。
このままずっと堪能していたいけど依頼はこなさないといけない。私も他のプレイヤーと同じようにアルフと一緒にうろうろし始める。
運よく一匹目は私の直ぐそばでリポップした。そのままアルフが噛みつきに行ったのでプロテクをかける。
私も牽制でダークバレットを放ち足を斬る。基本動物系のモンスターは足と首を狙うのが常套手段だ。腹が柔らかい敵もいるので足をかばっているところを蹴り上げて腹を見せて斬るのもいい、そのあたりは体に染みついてるのでいつでもできる。
いや~ほんと沙織とPS道場様様だね。
簡単にウルフは沈み、光の粒子となって消えていった。アイテム欄にはウルフの牙というアイテムが追加されていた、あと二つだね。
もう一匹も直ぐに見つかったけれども最後の一匹が見つからない。かれこれ三十分は見つからないので段々疲れてきてアルフと遊ぶ事をメインにしてしまっていた。
遊んでいる途中近くにリポップしたので速攻で刈りに行くけれども、なんと今度は二匹セット!
一匹はアルフに任せてプロテク、そして私に突っ込んで来た一匹に牽制のダークバレットを撃ってから私にもプロテク。更に接近してくるウルフに半身下がって首元に剣を斬り落としたけどちょっと浅いので追撃のダークバレット。それでウルフは沈んだ。
おっとそうだ、折角だからまだアルフと戦っているウルフに鑑定を。
種族:ウルフ Lv2
以上である。ちょっとだけ残念だ、もっと色々と見られるのかと思ったのに。だけれども鑑定した結果なのかウルフの頭上にHPとMPバーが出現。これで戦いやすくなった、確かに【鑑定】は必要技能だったようだ。
<レオラのレベルが上がりました>
<アルフのレベルが上がりました>
戦闘が終了したと同時にインフォがきた。メニューを開いてアルフのページに飛ぶ。
名前:アルフ
種族:ウルフ Lv2
基本値(BP:0):STR:7 VIT:6 INT:3 MDF:3 DEX:4 AGI:7
スキル:【噛みつき】
ランダム上昇はSTRだったので一点あったBPはVITへ、死んじゃうと悲しいからね。
名前:レオラ
種族:人間(女)
職業:ソーサラーLv3
基本値(BP:0):STR:11 VIT:10 INT:11 MDF:11 DEX:11 AGI:10
スキル(SP:3):【契約Lv2】【料理Lv1】【錬金術Lv1】【闇魔法Lv2】【無魔法Lv2】
称号:
私はこんな感じ。
ランダムはDEXだったのでSTRに振りました。さっきの剣はもうちょっと深く攻撃出来たらいいなぁと思ってのステ振り……私が未熟なのもあるけどね、反省。
【契約】を使うのを忘れていたのでレベルはそのまま、その代わり【闇魔法】と【無魔法】は上がってくれた、良かった。
依頼も達成したので街に戻ろう、次の依頼はもう少し人がいなくなってからにしたい。アイテムボックスには牙が三つと皮が一つ。ウルフは皮も落とすらしい。
帰ると途中もやっぱり人が多い、リリースしたばかりだから仕方無いけどもうちょっと腰を落ち着けて狩りをしたいところだ。
街に入る時にアルフは返すように言われてしまったので帰還してもらった。街中は自分のホームを買ってそこでモフモフしないといけないらしい……もうずっと外に居ようかな。
でも装備とか揃えないといけないのでそう言う訳にもいかないよね。冒険者ギルドに戻って来て一番少ない列に並ぶ。
何故少ないか、それは受付の人がおじさんだったからだ、筋肉モリモリ。皆見目麗しい方がいいらしい、個人的にはこのおじさんもカッコいいと思うんだけどね。お付き合いするなら筋肉モリモリな人がいいなぁ、こうばーんって太い人。
登録した時と同じようなプレートに手をのせると討伐依頼完了と牙の納品の依頼――並ぶ前に受けておいた――を完了しますか? というディスプレイが出てきたので完了を押す。
カウンターの中で私が収めたと思しき三つの牙を見て一つ頷くおじさん。
「大丈夫のようだな、依頼達成だ」
「ありがとうございます」
お金が新たに1200G振り込まれていた。初期は一万Gなので合わせて11200Gだ、ためとこ。
依頼を受ける気はしないので街を散策してみる。
私と同じなのか、それとも何かを探しているのか街ブラをしている人は多かった。特に現地人に手当たり次第に挨拶をしている人は凄いなぁと感心してしまった。私は知らない人と話すとどうにも緊張しちゃうんだよね、絶対にしないといけないと言われなければあれはやらない。
大通りには洋服屋さんや薬屋さん、鍛冶屋さんなどもあってファンタジー感を満喫出来た。
中心まで戻って来ると、やはり神殿の前はまだ人が多かった。
そう言えば神殿ってなんの神様を祀ってるんだろ? 例の十二神って奴なのかな?
ちょっと興味がわいたので神殿の中に入ってみる。
相変わらず大きな像と、そして最初は気が付かなかったけれども、端っこでひっそりとあたりを見渡している白い祭服を纏ったお爺さんがいる事に気が付いた。気になる事もあるし話しかけてみよう。
「あの」
「ん? 何かな?」
「ちょっとお伺いしたいんですけど」
「どうぞ」
「此処ってどの神様を祀っているのですか?」
「面白い事をお聞きになさいますな。基本教会や神殿は創造神様を祀っているのですよ」
「では十二神というのは?」
「十二神様ですかな? 勿論お祀りしておりますよ……そうですな、宜しければ奥でそのあたりの事もお教えしましょうか?」
「よろしいのですか?」
「勿論ですとも、信者が増える事は喜ばしい事です。残念ながら信者になって頂けなくとも、興味を持っていただけるだけ嬉しい事なのですよ」
にっこりと笑ったお爺さんにお願いしますと言って、お爺さんの後ろにあった扉を潜って奥へと進んだ。