第二十二話 料理は火のダンジョンの後に
南へと移動して火のダンジョンへ。
入り口は木のダンジョンと同じだ。ただ周りは草木の生えていない土地なので、少々殺風景に見えた。
列もそこまで長くなかったので、結構早めに入ることが出来た。
中は先ほどのフィールドとは違い、熱気が籠った洞窟のような場所だった。辺りも薄暗く少し見にくい。警戒は怠らないようにしないとね。
基本一本道の洞窟だけれども、そのぶん敵の襲来は多い。炎を纏ったトカゲのような生き物サラマンダーと、同じく炎を纏った鳥ファイアバードの襲来が続く。ファイアバードは火魔法を使うので相殺若しくは切り伏せて対処している。しかもファイアバードは鳥なので空中に居る。これまた私のMPが削られていく……。
サラマンダーの方は尻尾の攻撃や噛みつき攻撃、火を噴くブレスも使えるけれども、お腹が柔らかくてひっくり返されて直ぐに処理されてしまっている。前衛の人たちは鳥に攻撃できないのでこれまたフラストレーションが溜まっているようだ。投げナイフくらいは持ってもいいと思うし、私もイベントが終わったら買おう。
順調に進んで2階層。二階層は広々としたマップだった。障害物は川のように流れるマグマのみ。マグマの川を避けて通れるように岩が固まり大きくなっている場所もある。でも落ちれば痛手、途中ジャンプしないと通れない場所などもあったけれども、特にジャンプして崩れる事も無かったので普通に飛び越えられた。
「いやー、それにしてもレオラさんはよく平気でポンポン飛ぶよね」
「慣れてますから……」
「へぇ、他にもVRゲームを?」
「PS道場でやりました」
「へ、へぇ……」
いま一瞬引いたような気がしたけれど、なんでだろう。と思わなくもないけれども、今迄の話から言って、PS道場って普通の人はやらないゲームだって知ってるから何も言えないよね……。
そんな会話もしつつ、マップを移動。
この階層から新たに加わったのは火の玉だ。ふらっと現れてタックルをかましてくるので、分かっていればどうという事はない。でも上下左右と何処からくるか分からないので、精神的な疲労感が上昇してしまう。ずっと警戒してるのも大変だよ。
火のダンジョンは、木と違って一定時間でフィールドが変わるシステムも無かったので、皆でとぼとぼ先人の足跡――足跡と言っても掲示板の情報だけど――を辿っていく。
「皆、暑いけど大丈夫?」
モフモフ達はダレた様子もなく隣を歩いてくれているので頼もしい。今も皆大丈夫と言わんばかりに首を縦に振っている。
「取り合えず外出たらご飯とプリンとクッキー上げるからね」
そう言った瞬間嬉しそうに此方を見つめる面々、あぁ癒される。なんて愛いモフモフ達。私もこの暑いダンジョンを乗り越えてモフモフするのだ。頑張るぞー!
鳥以外は私も前衛に入れて貰ってMP節約。最初は驚かれたけれども、最後には何故前衛特化にしなかったのかとバレルさんにちょっと嘆かれた。なんでも対戦してみたかったらしい。今後ステータス調整出来る対戦システムのような物が追加されたらやろうと励ましたけど。なんか膝をついて本気で残念がっていた。でも今から転向しろとかは一言も言ってこなかった、さすがサイガのメンツ。
木とは違って結構なハイペースで3階層へ。この階層は分かれ道があるけれども、掲示板に攻略順が載っているのでそれを参考に進むことになった。普通のゲームなら自分で楽しむのもいいと思うけれども、今回はスピード勝負なので仕方ない。私も折角なら貢献してみたいしね。
なんでも掲示板ではひそかに貢献度なるものが存在し、ランキングに入ったら行動が審査されて貢献度ランキングなるものが出るのではと囁かれているらしい。
「貢献度は確かにあると思うわよ」
「そうなの?」
「他のゲームでも、脱出とかレイドとかのイベントには貢献度ランキングがあって、貢献度の高い人物には多くのポイントや称号だったり商品がもらえたりするわ。此処の運営は最後の最後までそういう事隠していたりするから、質が悪いのよね」
「でも発表した方がやる気出るんじゃない?」
「勿論やる気が出る人もいると思うわ。でも2陣だからと戦闘での貢献度を諦めて迷走し始める人もいるのよね。だからどっちもどっちよ、折角用意したダンジョンならやって欲しいと思うんじゃない?」
「でも貢献度あるって発表されてなくても信じてそういう行動する人もいるんじゃないの?」
「そういう人は元々それでイベントを楽しんでる人だからいいと思うわ。さっき言ったのは、本来ならダンジョンに潜っていたけれども諦めてしまった層の話ね」
という話をしたので、私も折角なら何かしらで貢献度を稼いでみようかなと思ったりしている。そして今思いつくのが、こうやってボスを巡る事なので、スピード勝負に負けないように暑い中頑張ってるわけだ。
「はぁ、漸くセーフティーエリアに辿り着いたね」
「そうだな」
「アタシは早くボスに」
「ムリ」
珍しくイマモさんが口にだしての否定。つまり全力否定をしている。
「そうね、元々此処で休憩の予定だったし、少し休むわよ」
私はモフモフをモフモフしながら時間を堪能する。
情報では火のダンジョンのボスはふらり火というモンスターらしい。外見は顔が犬のファイアバード、ただし大きさは一回り程大きいとのこと。それからサラマンダーの御供がレベルによって数匹出てくるそうだ。
「サイガ、暑いし私先にボス行ってるね」
「分かったわ」
なでなでもいいけれども、さっきの事を考えると先に入っておいた方がいいかなと考えて先行することに。
ボスへの扉は火の鳥が大きく描かれていた。
扉を開けるとフィールドが切り替わり、灼熱の洞窟へ。下は溶岩などは無いので安心だ。
視線を感じて上を見ると、洞窟の凹みに情報で聞いていた通りの姿をしたモンスターがいた。そのモンスターが一鳴きすると、どこからともなくサラマンダーが4体出てくる。
「皆は先にサラマンダーを攻撃!……アクアバレット」
私の魔法が届いた瞬間、ボスの標的は私になった。ボスが飛んで、そして私目掛けて急降下してくる。それを避けながら剣で攻撃、避けたことによって相手は地面に激突して隙が生まれているので魔法で攻撃。どうやら、一撃は重いけれどもしっかり避けてその後のスキに攻撃する系のモンスターらしい。時間は掛るけれどもじっくり着実にだね。
モンスターの攻撃パターンはこれで終わりかな?
先ずは捨て身の突っこみ。次に上からの爪攻撃、これは斜めに襲ってきて斜め上に上がっていくので与えられた隙は無いけれども、接近してくるという事は剣で攻撃が出来るという事、タイミングを見計らって攻撃。そして火の魔法攻撃。ファイアバレットらしきものと、あと上から火のブレスを放ってくる、火炎放射みたいな感じだ。これに対する効果的なカウンターは特になかったので避ける事に専念。私が避けると追ってくるからね、詠唱が止まっていなくても出来るならこれの限りじゃないんだけどさ。やっぱり後で投げナイフをいくつか仕入れてこないとね。
4度目の捨て身攻撃で、サラマンダーを早々に討伐してきた面々と共に撃破完了。
ビッグトレントと同じく光の玉がネックレスに吸い込まれていく。そして奥に階段が現れて脱出。脱出したところにまだサイガはいなかったので戦闘中だろう。今のうちにご飯だけ食べさせちゃおっと。
「皆お疲れ様、はいどーぞご飯だよ」
ドンッと置いてからフェリ用を渡す。
「ありがとうございます!」
フェリも待ってましたと言わんばかりにみんなと同じく尻尾を揺らしている。うむうむくぁゆいの。
私も自分の皿を取り出して食べていく。相変わらずMP料理は美味しい。もっといろんなものを作ってみたい。そして更なる餌付けを!
「ごめんお待たせ」
「いいの、皆とご飯してたから。サイガもお疲れ」
「敵は弱かったけど如何せん暑さが大変だったわ……」
「おー、それが噂の特殊進化の要なんだね」
「おーさんご存知なんですか?」
「2陣だから色々と情報を集めててね、それしかやることが無かったともいうけど。良かったら後で僕にもくれたりしない? 勿論お金は払うよ」
「うーんそうですね……少しだけなら。基本はモフモフ達のご飯ですので」
「ありがとう!」
「じゃあさっさと移動して寝ましょう」
寝る場所は次の土のダンジョンの近くという事に決まっていたので移動。
今回は待たせなかったし、よかったよかった。
人がいなさそうなところで皆で腰を下ろす。
「じゃあ見張りはさっき決めた順番で、睡眠は4時間で見張りは1組1時間ね」
私的には3日くらい寝なくてもゲームの中なのだから大丈夫だと思っていたけれども、やっぱり気を張り詰めていたりするとしっかり睡眠による休息は必要だよね。
「じゃあ皆これね、今日はお疲れ様、明日もモフモフさせてね」
プリンを置いて、おーさんに肉野菜炒めを進呈。
「うまっ! なにこれうまっ!」
と騒がれてしまい結局皆に少しずつ分ける事になってしまった。女性陣はプリンを上げました。
「【料理】舐めてたわ。MP料理が美味しいってのは聞いていたけれども、此処までとは……これ嫌な予感がするわね」
「ん」
「いや、予感じゃなくて確定でいいんじゃね?」
「どういうこと?」
「此処まで作っておいて、趣味で終わらせるなんてありえないと思ったのよ。これ、今後空腹度システム的なのが実装されるわね」
「空腹度?」
「そうよ、ご飯を食べないと減って行って、最終的にはMPやらHPやらが減ったり、ステータスが減少したりするわ。うちのパーティーも誰が取るか考えとかないとだめね……というか私が取るわ」
「流石サイガ!」
それから雑談をして、私はモフモフにくるまれて至福の睡眠にありついた。
ご指摘頂いた部分を変更致しました。
・十六話でナードが剣を踏んだ時に足が切れる(要約)というご指摘がありました。モフモフは大切にしないといけませんので、十五話のけんざんに装備を貰うときに試作品として籠手と足装備を貰いその後装備させた文を書き足しました。
・十話でナードの種族がムーンベアになっていたとご指摘がありました、此方はツキグマに直させて頂きました。
ご質問を頂きました。
Q・有利な情報を得た場合、毎回掲示板への記載をすると先行の旨味が無くなってしまうのでは? それに、書き込まなかったからと言って妬みや羨望はあると思うがそこまでヘイトがたまるのか?(コピペは申し訳なかったので要約の様な物)
A・確かに旨味は少ないとは思いますが、主人公が一番嫌なのは変な人に絡まれることだと考えています。なので、書き込まなかったらと方々から一気にヘイトが溜まる事は殆どないとは思いますが、一部の面倒な人を避けるための行為として軽く捉えて頂ければと思います。勿論攻略組は何かしら隠匿している可能性は大いにありますが、主人公は自分の事を攻略組とは思っておりません、攻略よりもモフモフとの何寧を、それを邪魔されないように掲示板を用いている形です。主人公は人見知りなので、変な人が結構怖いのです。
ご指摘、ご質問、ご感想ありがとうございました。




