第二話 アルフ・コントラクト~~プロローグの続き~~
先ほどまでいた白い空間がホログラムに浸食されていくように徐々に草原へと変わっていく。
「チュートリアルの説明は引き続き私が担当させていただきます。よろしくお願い致します」
「こちらこそお願いします」
「先ずはメニューの開き方からですが、此方は空中を三度タップしていただければ開かれます」
言われた通りにポンポンポンとしてみると確かにディプレイが開いた。
「先ずはステータスですが、此方は先ほど見ていただいた物が映っております。BPをタップしていただければ振り分ける事が出来ます。また新たなスキルを取得されたい場合はスキルを押していただければ一覧へと飛びます」
スキルを押してみると確かにスキル取得一覧というところに出た。今はSPが無いので何にも取れないけど。
「次にアイテムボックスの説明になります。基本50種類まで入れる事が出来ます、ポーションなどは10個まで、素材などで99個入る物もございますが、超過致しますともう一種類分アイテムの枠を使うことになりますのでお気を付けください。また入れられない物という物も存在致しますので、随時確認をお願いいたします。特にポーション等は一種類5個まで、二枠目にはいかず入れる事が出来ません。勿論ポーションとMPポーションはそれぞれ別ですのでご安心下さい。それではアイテムボックスに入っている二つのプレゼントボックスを開けてみてください」
言われた通りプレゼントをタップ、内容は武器と防具だった。先ずは防具からタップ。防具の選択肢は金属と皮に布。汎用性の高そうな皮鎧を選択すると、初心者の皮鎧という物に変わった。もう一つの武器は剣にしておいた。
「では装備してみましょう。アイテムボックスからも出来ますが、装備の項目からも出来ますので一度戻って装備の項目で装備してみましょう」
ぽんぽんと進めて行き装備を押すと、街人の格好から茶色い皮鎧の格好と左に剣が吊るされていた。
「装備できましたね、では次に【契約】スキルをお持ちの方向けのチュートリアルになります」
子子さんが私ではなく、何もない所に目線を向けるとポン! という音と共に灰色の犬? じゃなくて狼かな? が現れた。そう狼が……もふもふが、もふもふもふもふがぁ!
「では【契約】スキルを使ってみてください」
「【契約】」
「それでは倒してみてください」
ごめんよもふもふ。もふもふは動くことなくその場に佇んでおり、私は近寄って首を斬った。因みに下から掬う様に素早く。この辺りはPS道場で何回も繰り返した動作なのでためらいはない、ただ勿体無いなぁと思うけど。
「アイテム欄をご確認ください」
アイテム欄には『ウルフの契約石』という物が増えていた。
「ではアイテムを使用してみてください」
アイテムをタップして使用すると、メニューに新たな項目が増えた。その名もコントラクトモンスター一覧とコントラクト可能モンスター一覧だ。可能モンスターをタップしてみると、ウルフの名前が一番上にあった。
「では召喚してみてください」
ポチポチとコントラクトを押すと。
<只今のコントラクト上限は一匹です、『ウルフ』とコントラクトしますか?>
というメッセージが出たのでハイを押す。すると先ほど現れた時と同じように目の前にウルフが現れた。
「コントラクトできたようですね、ではそのまま名前を付けてあげてください」
ディスプレイにはウルフのステータスが出てきていた。
名前:アルフ
種族:ウルフ Lv1
基本値(BP:0):STR:6 VIT:5 INT:3 MDF:3 DEX:4 AGI:7
スキル:【噛みつき】
名前の欄が空欄になっていたので記入。
「くぅーん」
目の前でお座りして尻尾を振っているアルフ……。
「すいません」
「どうしましたか?」
「少しだけ時間頂いてもいいですか?」
「構いませんよ」
「もふもふー!」
その後私の記憶は定かではない。気が付いた時には横抱きにしてアルフの頭をなでなでしていた。毛並みはそこまで良くなかったけれども、これからしっかりフワフワにして行こうと誓った。
「ふぅ、お待たせしました」
「は、はい、あ、いえ大丈夫ですよ」
ちょっと引いてる気がしたが気にしない。リアルでは早々触れ合うことが出来ないのだ。家は母親がアレルギーなので動物に触れない、触って帰って来ても大惨事になるので遠くから見つめるしかない。だが! ここでは! ためらわなくて! いい! ので思いっきりフィーバーしたわけだ。
アルフは私の足元に丸まっています、かわゆい。撫でているときも決まったパターンのようなものは見当たらずに、本当に生きているようでびっくりした。そう言えば子子さんもAIなんだよね……今更だけど普通に凄いね。
「では次ですね、と言ってももう最後ですが。次は戦闘です、魔法を使って倒してみてください」
メニューの魔法欄を開いて今使える物を確認。
闇魔法:ダークバレット 威力:10 詠唱時間:3秒 待機時間:3秒
無魔法:プロテク 効果時間:2分 待機時間30秒
ダークバレットは闇の攻撃で玉が飛んでいくらしい。プロテクは任意の相手一人の防御力底上げらしい。
出てきた敵はウサギさんだった。うさぎさんもうさぎたんでいいですねぇかわいいですね。
「【契約】」
出来るか分からないけど、取り合えず使ってみる。子子さんが頷いているので、もしかしたらこれもチュートリアルの一環だったのかも。
【契約】で私が敵だと判断したのか、此方にぴょこぴょこやって来るウサギさん。ごめんねと思いながら詠唱という名の時間を消費してダークバレットを打つ。
<レオラのレベルが上がりました>
ウサギさんはダークバレット三発でお亡くなりになりました。私も後ろに下がりながらの戦闘でした。
距離を取って詠唱発動、距離を取って詠唱発動。いつかは行動しながら詠唱が出来るようになるといいんだけど。
ダークバレットの消費MPは思ったよりも少な目で助かった。ただ一つしか呪文が無いと再使用までに6秒かかるので少し長い気がする。威力に関しては更にINTと装備で底上げしてになるんだろうけど、私の場合今の装備は特に何も効果が付いていないし剣装備なので微妙。
それはさておき、なんと! 『ラビットの契約石』を頂きました! ハイ拍手! わっふ~。でもまだ一体しか召喚できない~……早くうさたんうさうさしたい。
「では最後にレベルアップで得たBPを分配してみましょう」
名前:レオラ
種族:人間(女)
職業:ソーサラーLv2
基本値(BP:0):STR:10 VIT:10 INT:11 MDF:11 DEX:10 AGI:10
スキル(SP:2):【契約Lv2】【料理Lv1】【錬金術Lv1】【闇魔法Lv1】【無魔法Lv1】
称号:
ランダムアップはINTに入っていたので、MDFにポイントを配布。HPはVIT、MPはMDFが直にかかわっているのでは? というテスターさんのお話だったので上げてみた。まぁ平均的に上げていけばいいでしょう。
【契約】もレベル上がっていたけど特に何もなし。コントラクト出来るモンスターは増えていなかった。無念。
「ではこれにてチュートリアルを終了します。何か分からないことがあればヘルプを参照してみて下さい。最後にアドバイスが二点あります。先ず一点目は【鑑定】を取得することをお勧めします。二点目はセクハラがありましたら即報告なさることをお勧めします。しない場合でも相手を数秒見つめると出るポップアップからブラックリストに登録できます。登録すると基本その方から此方が見えなくなりますので使用することをお勧めします」
「成る程、わかりました」
ブラックリストに入れる事態になるのが嫌でやらなかったってところもあるんだけど。まぁアルフに会えただけでも結構満足してるし、折角なら楽しまないとね。それに沙織も二陣で来れたら来るって言うし、一緒にゲームするのは初めてだから楽しみ。私は基本一人用のしかやらなかったから。
「……これは忠告になりますが、現地人の皆様にもそれぞれ感情がございます。その点お忘れなきよう、ではよろしくお願いいたします」
「ありがとうございました」
辺りがまたホログラムが変わるようにぱらぱらと砕け、そして教会らしき場所に立っていた。
らしきと思ったのは、後ろにある銅像とステンドグラスが教会っぽかったからだ。結構広いのか他にもプレイヤーが幾人もいた。更に目の前に見える街にも多くのプレイヤーがごった返していた。……取り合えずどうしたらいいわけ?