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ナデサセテ・コントラクト  作者: なでり
18/34

第十八話 同士! 貴女に感謝をッ

 


「では此方も依頼達成ですね、おめでとうございます、ランクアップです」

「ありがとうございます」

「コントラクターギルドのランクが3になりましたので、深夜0時から朝の5時まででしたら一匹街中で連れ歩くことを許可致します。此方をどうぞ」


 渡されたのは銀色のカードだった。


「そちらが先ほどお伝えいたしました証明書になりますので、もしギルド員や衛兵に話しかけられた際はそちらをご提示ください」

「分かりました、ありがとうございます」

「こちらも、将来が有望なコントラクターは大歓迎です。それとくれぐれも時間は守るようにしてください。街中で連れていることを許可と言っても、ある意味仮許可です。夜間は人も少なくなりますので、そこで更に見極めているという事です。浮かれ過ぎないようにご注意くださいね」

「分かりました」

「では今後ともよろしくお願いします」

「こちらこそお願いします」


 あまりカウンターを占拠しているのも気が引かれるので辞去。左手に売店のようなものがあり、そこでご飯を売っていると思われるのでそちらに歩を進める。


「あのッ」


 だが私の行く手を阻む人が……。

 遠目に見て誰も話しかけてこなかったので、大丈夫そうかなと安心していた矢先の出来事。目の前には黒髪ストレートの身長は小さめの少女が。でもこのゲームプレイヤー身長いじれるので、色々と当てにはならない。


「私ですか?」

「はい、急に呼び止めちゃってすいません……」


 呼び止めた時は元気いっぱいな感じだったけれども、いきなりしょんぼりされてもこっちが困る。でもなんというか、可愛い生き物である。ロリっぽさががにじみ出ている感じがするし、そのせいだろうけど。身長というよりも、仕草がなんだけど。勿論身長も相まってといった感じだ。


「ごめんさい、先ほどツキグマさんらしきモンスターと、コボルトの特殊進化らしきモンスターを見て、居てもたってもいられなくて、是非御礼を言いたくて」

「えっ、御礼ですか?」


 てっきり情報くれとか、SS撮らせてとか、そういう感じかと思ったけど。御礼とな?


「私、ボスはコントラクト出来ないって思いこんでいて、それであの掲示板を見てフォレストベアもコントラクト出来るんだと知りました。私、動物大好きで、熊さんと一緒に旅したいなって思いましたけどボスだし無理だと思ってしまって、でもそれは違うと言ってくれた人がいて、更にゲームが楽しくなりました。ありがとうございます!」


 つまり同士?

 このモフモフを仲間にしたいけど、ボスだしと諦めていたら私がコントラクト出来た物だからよっし私もモフモフするぞーって事だろうか。つまり同士。


「熊ちゃん可愛いですよね、モフモフしたさで粘りました!」

「はい! 熊さん可愛いです! さらさらで気持ちいです!」


 ふぅ警戒したけど同士なら話は別だ。まぁ同士でもしつこい人はだめだけど。


「あっ、私サーナって言います」

「レオラです」


 それにしてもサーナってどこかで聞いた気が。うーん、でも確実に初めて会う子だしなぁ。けんざんさん達の会話で他の人の話は出てこないから違うだろうし、他にはプレイヤーと関わってないから、後はアナウンス?


 メニューからワールドアナウンスを呼び出してログを探ると……。


「ソロ討伐の?」

「あの、それはその、そうですけど、コントラクトモンスターは人数に含まれないようなので、コントラクターが他の人と組まないで初めてボスを攻略すればソロ討伐になるんです。私、名前出る設定の事知らなくて、弄ってなくて……恥ずかしいです。忘れてください」


 がっくりと肩を落とすサーナさん。私も再度設定を確認、うん大丈夫私はちゃんとワールドアナウンスで名前出ないようになってる。


「お引止めしてすいませんでした。いつか会えたら御礼を言おうと思っていて、いきなり目の前にいたので驚いて話しかけてしまいました。ではまたどこかで」


 さっと言いたいことを言ってぺこりとお辞儀をして、走って引き戸を押してから引くちょっとおっちょこちょいな感じを見せつつも退場。でも悪い人じゃなくて良かった。今度会えたらフレンドになれたらいいなぁ、それでお互いのモフモフをモフモフしたり情報交換とかできたら最高だよね。


 っと、当初の目的通りに売店に行かないとね。

 受付のおばちゃんに話しかける。


「すいません」

「はい、何を買われます?」

「モンスターのご飯があると聞いたのですけど」

「ありますよ、はちみつクッキーです」

「ではそれを15個下さい」

「あいよ……はいどうぞ」


 袋で貰ってアイテムボックスへ。すると内約が出るので確認。うんちゃんとある。


 他の人は話しかけてこないけれども、チラチラ見てくるので居心地が悪い。買う物買ったしさっさと外に出よう。

 

 では料理ギルドに行ってみよう。




 料理ギルドも同じ通りに在るので、少し行けばギルドに着いた。


 料理ギルドには人が……2人しかいなかった。受付も2つしかなく、ちょっと寂しい印象を受ける。

 近い方の受付のに座る。因みにここは両方とも男性だった。ただ奥に女性も見えるので、交代で受付をしているのかもしれない。


「ようこそ料理ギルドへ、本日はギルドへのご登録でしょうか?」

「登録と説明を聞きに来ました」

「では此方にお手を、はい結構です。失礼ですが料理スキルをお持ちですか? それともお持ちではないですか?」

「持っていますけど、持っていなくても入れるのですか?」

「勿論です。当方は料理ギルドであって料理スキルのギルドではありません。例え今日から料理を始めようという方でも皆料理人としてギルドに加盟することが出来ます」

「成る程」

「ただスキルを持っている方とそうでない方とでは扱いが違ってきます。やはりMP料理は素人が作っても美味しいですからね。ですが職人の料理はそれを越す事もあります、ですのでスタートラインの確認としましては、料理スキルがあるかないか、あった場合は元々料理をされていたか、されていた場合はどの程度の経歴かをお伺いいたします。また持っていない方でも同じことを聞きます。それによって料理ギルドの中でも細分化されている科への登録になります」

「確かに、一緒くたに扱うことはできないですよね」

「その通りです」

「因みに私はスキル持ち素人です」

「畏まりました。それでは料理ギルドMP初科のご登録になります。ご自身のスキルやMP料理を増やすことでランクが上がります。ご自身のスキルを上げられると科のランクアップも可能ですので頑張ってください。因みに依頼版の隣に検索板がございまして、そちらに載っていないレシピを獲得された場合、そのレシピを売る事も出来ます、売買には商人ギルドを挟みますので安全です。他はその他のギルドと同様ですね、公序良俗に反する行為を慎んでください。料理に関しての金銭やカツアゲ地上げのようなトラブルにあった場合は真っ先にギルドへご報告を頂ければ対処させていただきます」


 そのあたりは生産ギルドでも行ってたよね。アフターケア的な事は嬉しい。


「分かりました、ありがとうございます」

「他に、何かご質問はございますか?」

「あの、MP料理なのですが、レシピはどのように増えていくのでしょうか?」

「MP料理のレシピに関しては、スキルレベルが上がる間に作った新たな料理から厳選して2個得ることが出来ます。ただし料理としてスキルに認められなければレシピを得ることが出来ませんので、最低でも5つは作ってからレベルを上げる事を推奨いたします」

「成る程、ありがとうございます」


 やっぱり自分の経験の中からレシピ化するって事なのね。それじゃあ色々作らないと、今のままで満足していたらダメって事だよね。

 でも、現実で修行してもあんまり関係ないし、何処か修行出来る場所ってあるんだろうか。


「料理の修業を出来る場所ってありますか?」

「一応ございます。ただ拘束時間が長めな事で、冒険者と兼業されている方にはあまりお勧めできません。そもそも料理人を育てようという一環でしたので」

「毎日行かないとだめとかはありますか?」

「日にちについては自由ですね」

「そこで働いたら将来その店で働くことになったりとかはしますか? レシピを見られてしまったからとか」

「それは心配ありません。ご紹介するお店には新人教育調理室がありまして、そこで下ごしらえや基礎の料理で、レシピは一般に公開されている物を使っています。ただ出来によってはお給料は発生しませんのでタダ働きになる事があります。具体的に言うと材料費と相殺ですね」

 

 現実だったらありえないけど、ゲームだしね。でも衣食住が完備されているならスキルも育つしそれでもいいのかも? 労働時間にもよるか。


「ずっとは出来ないのですけど、空いた時間というか、空いた1日に行くくらいで良ければ教えていただけませんか?」

「構いませんよ、此処ティーリの街でしたら、モメンティというレストランです。場所を書いて紙でお渡ししますね」

「ありがとうございます!」


 紙を貰うと地図上にチェックが入る。時間がある時に行ってみよう。


「他にご質問が無ければ以上です。あと失礼でなければ此方からお聞きしたいことがあるのですが、宜しいでしょうか?」


 ん? 今までにはなかったパターンだ。なんだろ。


「はい、内容次第ですけど」

「レオラさんは異界人の方とお見受けしますが、異界人の方の料理への関心が低いようなのですが、何かご存知ないでしょうか」

「あー、それは、異界人は食べなくても生活できるのですが、異界では物を食べないと生きていけないのです。ですので、食べても本当に趣味程度、食べる必要もありませんし、口寂しくなれば食べるか異界に戻って食べる方が多いのだと思います」

「……そうでしたか、ありがとうございます。ただ最近は少しだけ登録してくださっているかたも増えてきまして、頑張らなければと思っております。もっと異界人の方に今すぐ食べたいと思わせるような何かを考案しないといけないようです。貴重なご意見有り難うございました」

「特に女子は狙い目です、スイーツとか、甘いものとか、ケーキとか」

「甘い物ですか、分かりました上に提出しておきます」

「是非」


 此処ならいくら食べても太らないから、絶対需要はあると思うんだけどね。食べ物専用のVRゲームもあるけれども、わざわざログアウトしちゃったらこっちの時間が凄く進んでしまうし、ゲームしながら美味しくが一番だよね。私もケーキとか焼いてみたい。


 そんな事を夢想しながら、ギルドを後にした。





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