第一話 『PS道場』の猛者VRMMOに初参戦
頭空っぽで何か書きたかっただけの物です……。
「ってことで春入試終わったら何しようかなぁって」
「はぁ流石結愛、まだ入試終わってすらいないのに」
「んーでも模試で合格率90%切った事無いし」
「……」
「いや勉強の賜物だからね?」
「知ってるよ、あんたが努力チートな女だって事はよく知ってるよ」
「え、なんでそんなに深々とため息?」
高校二年の冬。試験対策は万全だけどその後に不安を抱えていた。そう暇という名の不安を。
春入試に合格すればその後学校へは行かなくてもいい。その間約二か月に一度論文の提出を大学側と学校側にしないといけないけど、前年の傾向から九回分の論文は既に用意してある。論文って言っても高度な事を求められているわけじゃないしね。
「私のお勧めした『PS道場』を未だにやり続けている猛者だしね、あんた」
「あれね、結構アプデ来るから楽しいよ? 私基本負けず嫌いだから出来るだけ最高評価取りたいし」
食べ終わったお弁当を仕舞いながら何故かため息をつく沙織。
PS道場は高校の入試前に今と同じく暇になりそうだと愚痴をこぼした私に、沙織がお勧めしてくれたゲームだ。
私は基本育成か箱庭のVRゲームしかやったことが無かったので、剣とか振り回すPS道場は苦戦をしまくったけど、段々楽しくなっていい暇つぶしになった。今でもアプデが来るたびに籠ってやってしまう。
ゲーム以外の趣味と言えば、可愛い物の画像を見たりとかペットショップを覗いたりとかくらいだろうか。VRの動物はやっぱりプログラムなので一定の動きのループを見つけてしまった時に悲しくなるから。
可愛い画像は動物のほかには幼女とか少年とか。
多分こんなことを言うと一気に変態っぽくなるだろうけど、私的にはなでなでしたい対象ってだけで性的な好みってわけじゃないんだよね……誤解されるから仲のいい人にしか言わないけどさ。
勿論犯罪を起こさなきゃ別にいいと思うけど、人の趣向をとやかく言うのは好きじゃないし。ただ私は違うってだけ、どっちかって言うとペット感覚! まぁこれも不味い気はするけどさ、そのままの意味でね。かわいいねぇなでなでみたいな! リアルでやったら変質者だけどさ!
……落ち着こう。
とまぁそんな暇つぶししか持たない私に、今回も親友である沙織に何かいいアイディアはないもんかと尋ねているわけだ。
「『Challenge to Reality Online』って知ってる?」
「知らない」
「今最も注目されてるVRMMO、なんでもAIが人並らしいわよ」
「おぉ技術進歩!」
「βテスターの話ではガチっぽいのよね、動物とかも結構リアルだって」
「なぬ!」
「あんた結構人見知りするからVRMMOはやった事無かったけど、これを機にやってみたら? って言っても今は本サービスの抽選受付中ってだけだけど」
「申し込んだ」
私は既に端末で検索して申し込みを済ませてディスプレイを閉じた。もふもふと戯れるの楽しみ~。
「抽選受かってるといいわね。第一陣は一万人って結構少ないと思うわよ」
「でも他にもいっぱいあるよねVRMMO」
「だから、AIが人並に進化してるのはこのゲームが初なのよ。だからかなりの注目度、倍率だってそれこそ大学受験よりはるかに高いわよ」
「う~ん、まぁ落ちたら諦めるよ」
「いや、やるのが遅くなるけど第二陣、三陣ってどんどん人入れてくから大丈夫でしょ」
「そーなんだ、じゃあいいよ流石に一年入れない事はないよね?」
「一年は無いと思うわ」
「じゃあ気長に待つよ」
そんな話を思い出したのはなんと当選のご案内が来たから! あっ大学も受かってました。そっちはそこまで高い偏差値の大学じゃないし、中学からちょいちょい大学入試に向けて勉強してたからいいんだけど。
そんな事よりゲームですよゲーム。それにもふもふと戯れる事の出来る職業があるらしいので、私はそれ一本で行く予定。攻略? とかは初めてなのでよく分からないけど、用語や設定くらいは覚えておこうかなぁと思ってサイトを開いている。
ゲームの舞台は剣と魔法の中世ヨーロッパっぽい何か。魔法で便利になっているらしいけど、アニメや小説なんかでよく見る舞台みたい。
新大陸を発見した国の先遣隊が魔王の封印を解いてしまって、魔王がこの大陸に攻めて来てるー助けて~って内容らしい。神様が仕方ないので私達異界人を派遣するとの事。
……え~尻拭い? これって尻拭い? ストーリーはあんまり積極的にやらなくていいや。
種族は基本四種から選ぶらしい。器用貧乏の人間。前衛向けの獣人。後衛向けのエルフ。生産向けのドワーフ。
初期職業は前衛向けのファイター。後衛物理のハンター。魔法職はソーサラー。生産職のクリエイター。
以上の四つになる。そこからレベルを上げて職業も転職していくらしい。取り合えず私はモフモフと戯れるために契約というスキルを取る予定、後はキャラクター作成の時に運営のAIが付いてくれるらしいのでそこで聞こうと思っている。
契約は、所謂サモナーとテイマーの中間みたいなスキルらしい。先ず敵にコントラクトを掛けてから倒す。倒して魔物の契約石って言うのが無ければ失敗、あれば成功。一度契約石をゲットした魔物は何体でも呼び出せるらしけど、スキルレベルによって契約数に上限値があるとの事。
始まりの舞台は新大陸を目指していた大陸。魔王がそこに襲い掛かってきたとの事。その軍勢を押しのけて新大陸に渡って魔王を斃すことがグランドクエスト。
「リアルラックぅ……おめぇぇぇ。あ、私もギリで春入試突破したから二陣目指して頑張るわ」
「おめでと~、先適当に遊んでるね」
そんなメールを沙織にしてから幾日か。開始はゴールデンウィーク初日の朝八時。既に高校側と大学側には一年分の論文を提出して合格を頂いたのでこの一年は遊びましょう。……ある程度は勉強するけど。
でもゲームの中はこっちの四倍で進んで行くらしいので十分に楽しめると思う。
「ようこそ『Challenge to Reality Online』CROへ、貴女様の担当をさせていただきます十二神が一人子子と申します」
ぺこりと頭を下げたのは、綺麗な女性だった。だけど頭の上にデフォルメされたネズミの耳と、そして尻尾が見える……なでなでハムハムしたい。
「お名前を伺ってもいいですか?」
≪キャラクター名の設定をお願い致します≫
おぉいきなり声が聞こえてきてびっくりした、どこかにスピーカーでもあるみたいな響き方だ。周囲を見ても白い空間オンリーなのでどこから鳴っているのか分からないけど。
「えっと、じゃあレオラで」
「レオラ様ですね……問題ありません。改めましてようこそレオラ様」
重複するとダメらしいので、一発認証ラッキーラッキー。
「この度は私達の世界の危機に立ち向かって頂きありがとうございます。界を渡るにあたり、此方で活動するための体を作成させて頂きたいと思います。先ずは種族をお選びください」
「あの、質問いいでしょうか?」
「はい」
「【契約】のスキルを取って、モンスターと一緒に冒険しようと思っているのですが、どの種族がいいのでしょうか?」
「そうですね。モンスターと共に前衛で戦う場合はファイター、モンスターを支援しながら戦う場合、または後衛で魔法を使って戦う場合はソーサラーになりますので、前者ですと獣人、後者ですとエルフがお勧めになります」
「んーじゃあ支援をしながら前衛に出たい場合はどれがいいですか?」
「その場合は人間か、獣人で魔法技能寄りの進化をすることをお勧め致します」
「因みにモンスターの餌ってどうなりますか?」
「餌ですか? 【料理】もしくは【錬金術】で製作可能ですが、基本はコントラクターギルドにございます」
ん? しらない単語が飛び出して来た。
「コントラクターギルドですか?」
「はい、【契約】スキルを持つ方が転職できるコントラクターという職業に特化したギルドになります」
成る程、この世界でのコントラクターはお仕事関係じゃなくて、スキル【契約】関連って事になるんだね。
でもまぁ折角ならモフモフのご飯は私が作りたいかなぁ。あと人型のモンスターちゃんも捕まえて私が作った料理をもきゅもきゅしてるのを見るのもきっと至福だよね。
「【料理】と【錬金術】を取る場合はどちらがいいですか?」
「そうですね、前衛に出ながら支援をしつつそのお二つを入れられる場合は、人間が宜しいと思います」
「なら人間でお願いします」
「分かりました」
「では次に職業ですが、どれになさいますか?」
子子さんの言葉と共に四つの職業が出てくるけれども、やっぱりお勧めを聞いておかなくては。
「おすすめを教えてください」
「では、前衛でどっしり構えてモンスターたちに攻撃させるのと、乱戦に持ち込み翻弄しながら避けて戦うのではどちらが宜しいですか?」
あー私PS道場でもどっしりタンクって苦手だったんだよね、それならまだ避けタンクの方が好きだった。
「後者で!」
「でしたらソーサラーからのコントラクターが宜しいでしょう。MPが豊富であれば出来ることも増えますが、その分HPが少ないので前衛に行く際にはお気を付けください」
「分かりました!」
「それでは人間のソーサラーでよろしいでしょうか?」
「はい!」
「では次にスキルを五つ取得できますので、お選びください」
再度私の目の前にディスプレイが現れる。項目別で分かれていたり、名前で検索出来たりするので先ずは先ほど上がっていた【契約】【料理】【錬金術】を覚える。後はおすすめを聞いてみましょう。
「そうですね、援護ですと無魔法がいいと思います。またモンスターを回復するには基本的にダークヒールが有効ですので闇魔法もよろしいと思います」
ということなので此処はおすすめに従ってその二つを取得。闇を取得した時に光の項目が取得できなくなったけれども、相反する的なことで取れないのだろうか? 折角なので聞いてみる。
「……申し訳ございません。そのことに関してはお答えできる権限を持っていません」
どうやらイベント? とか攻略絡みの事だったようだ。でも取れないわけじゃなくて、何かしら条件が合えば取れるのかもしれないね。
まっVRMMOやった事無いから全部推測だけど! きっと上級者はこの辺のキャラメイクなんてパパっと終わらせてるんだろうなぁ。
「では【契約】【料理】【錬金術】【闇魔法】【無魔法】でよろしいでしょうか?」
「はい!」
「それでは此方が暫定的なレオラ様のステータスとなります」
名前:レオラ
種族:人間(女)
職業:ソーサラーLv1
基本値(BP:0):STR:10 VIT:10 INT:10 MDF:10 DEX:10 AGI:10
スキル(SP:0):【契約Lv1】【料理Lv1】【錬金術Lv1】【闇魔法Lv1】【無魔法Lv1】
称号:
「HPとMPは何処にありますか?」
「そちらはバーでの表示になります」
数値的には出ないって事か、しっかりバーを気にしとかないとダメね。
「BPは何ですか?」
「そちらは基本値に加算できるポイントとなります。レベルアップなどで取得することが出来ます」
成る程。後は大丈夫かな。BPとSPは同じような仕様だと思うし。
「こちらで確定しても大丈夫でしょうか?」
「はい、お願いします」
「畏まりました。それでは最後に容姿の設定となります」
今度はディスプレイと共に目の前の壁が一面鏡に変わった。
取り合えず現実の自分をスキャンした物を元に変えていく。
目元のたれ目をほんのすこーしだけつり目にして、身長も伸ばす。身長は160に設定、胸もちょっと盛る。それから年齢を引き上げてくれるシステムで大人っぽさを演出。後は髪の色を金髪にして目の色を蒼、美形補正をONにすれば終わり。
鏡でチェックしてけど、容姿でリアルばれすることは無いでしょう。それじゃあこれで完了っと。
「それではキャラクター作成は以上になります。次にチュートリアルを開始しますが、スキップすることも可能です。スキップした場合はチュートリアルで取得できるアイテムが先にアイテムボックスへ送られます」
「受けます!」
「畏まりました」
それでは次へレッツゴー。
現実の設定は、ゲームをやらせるための物なのであまりお気になさらず。基本現実は出てこない予定、出てきても一話で出てきた友達とゲームの会話をする程度です。




