6-4
日曜日の午後、普段の様にログインすると、またもや時雨が妙なことをしていました。
「こんー」
「あー、きたきた。ふっふーん、待ってたよー」
……これは何かの自慢話がありそうですね。前回と違い運ばれることはなさそうなので、腰を据えて話を聞きましょう。
「お茶入れるから待ってて」
「はーい」
何というか、徹夜明けのテンションですね。まぁ、徹夜をしていたとしても今は午後なので、少しくらいは寝ていると思いますが。まったく、お肌に悪いというのに。
時雨が自慢話をするためにクランメンバーが全員揃うのを待っていたそうですが、普段は私が自慢話をするので、珍しくはありますね。
「とりあえず、単刀直入、これを見て」
そう言って時雨は一本の短刀を取り出しました。銅の短刀らしいので、装備を切り替えて数値を見てみましょう。
――――――――――――――――
【銅の短刀+10】
銅の短刀
耐久:100%
攻撃力:▲
魔法攻撃力:=
AGI:=
――――――――――――――――
おやや? まさかまさかの最大強化ですよ。失敗時のペナルティで強化値が下がったり破損したりするらしいのですが、どれだけの苦行を乗り越えたのでしょう。
「どう? どう? どう? 昨日の夜に生産クラン主催の精錬祭りをやるって聞いて、いっそいで開放したんだよ」
何でも、+4以降の確率などを確認するために多くの生産者が集まったそうです。まぁ、鍛冶系のプレイヤーが大半を占めたらしいのですが、練習やスキルレベル上げに作って余っていた武器を持ち寄り、精錬しまくったそうです。
「流石に通常精錬だけだけど、みんなで武器を壊して楽しかったよ」
あ……、これ、途中の性能評価を考えず、+10を作ることだけを考えて集まってますね。
「精錬の成功率を割り出すほどの試行回数はないから確定は出来ないけど、DEXとかスキルレベルで多少の影響があるだろうって仮説を立ててね、協力者はこれからも精錬時の成否の情報を持ち寄ることになったんだよ」
他にも、精錬時の行動が影響するのかなど、様々な実験を行ったそうで、今はその情報をまとめている最中らしいです。
「限定精錬はまた今度やることになったから、それが終わったら、金属製の装備強化したい人は言ってね」
こうして時雨の自慢話も終わり、自由行動になりました。私はまぁ、日課をこなしてからクエストの続きですね。
「あ、リーゼロッテ、これ上げる」
そう言って手渡されたのは先程の【銅の短刀+10】です。これは一体……。
「私は作ったら満足したし、売れるに売れない装備なんだよね。銅製だから基本能力低いし、そこまで強化したから安値は付けたくないし、高値を付けても同じ額でいい素材の武器買った方が今後の成長性もあるし、完全なコレクション品なんだよ」
「なら、コレクターに売ればいいのに」
「残念ながら、コレクターに知り合いはいないの。それに、そういう人は付き合いのある生産者がいるから、割り込むのもねぇ」
つまり、いろいろあるのでしょう。今まで持っていた銅の短刀は今後の精錬用に返して、+10の方を装備しました。ああ、ついでに大昔の第二陣歓迎会の時の売れ残りも押し付けましょう。もう不要ですから。
「もう返せって言われても返さないからね」
「いいよ。必要なら自分で作るから。それで、リーゼロッテは何か面白いの見付けた?」
時雨は自慢話に満足したようで、今度は私に話を聞いてきました。クエストをこなせば手に入るものはありますが、人が減ってしまったので、練習の成果を見せるのはまた今度にしましょう。
「まだ時計塔ダンジョンを登ってる最中だからなー」
「そうなんだ。ところで、マギストにはダンジョン何個あるの? テクザンは今の所2個見付かってるけど」
「あー、NPCが言うには修練場が4個って言ってたから、4個じゃない?」
「面白そうなダンジョンだったら教えてね」
「りょーかい」
ふむ、目立つダンジョンは時計塔と天文台の二つですが、他の二つも何かありそうな場所ではありますね。今のクエストは200体倒さなければいけないので、他の場所も見てみましょう。
そんなわけで日課を終えてからマギストのポータルへとやってきました。東の魔力屋本部と西の魔法技術研究所、今回はどちらかに向かう予定ですが、どうしましょう。
「ヤタ、信楽、どっちがいいかな?」
『KAA』
『TANNUNU』
ふむ、わかりません。それではまだ行ってない天文台の方を向いて、時雨から貰った短刀を立て、倒れた方へ向かいましょう。
いざ、尋常に。
パタリ
えーと、左に倒れたので魔力屋本部ですね。魔力付与を覚えるためのクエストのNPCが魔力屋とか言っていたので、あのお店の本部ですね。魔力付与は素材ごとだったのが統合されているので、別の何があるといいのですが。
「たのもー」
丁寧に扉を開けて入ると、右側には受付などがあり、左側には酒場……いえ、喫茶店のような場所が広がっていました。全体的に年齢が高めで、いかにも高位の魔法使いといった雰囲気を醸し出しているNPCが多いですね。とりあえず、受付で話を聞いてみましょう。
「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件でしょうか?」
「あー、えー、見学……、いえ、ここの修練場を利用するための条件を聞きに来ました」
「ここの修練場は利用料をいただければ入ることが出来ます。ただ、組合員のからの推薦があれば、自由に入れるようになりますが……、あれ? 既に組合員の方とお知り合いなんですね?」
うーむ、魔力付与を教えてもらったというのをお知り合いというのであればそうなのですが、一度会っただけの人を知り合いとはいいませんよね。
「えーと、ノーサードとウェスフォーとサウフィフで魔力付与を教えてくれた人ですか?」
「いえ、その魔力からわかるのは、魔力操作に関わりの深い組合員のはずです」
「あー、オババのことですね」
「そのオババという方は、もしかしてセンファストにいらっしゃる方ですか?」
「そうですよ」
「…………その方からの紹介状はお持ちでしょうか?」
「持ってくれば、いろいろと手続きが短くなったりします?」
「ええ、それはもう、かなりの手続きと試験がなくなります」
「ちょっと行ってきます」
今日はこの街から出ないつもりでしたが、そうは言ってられないようです。
「オババオババー」
「何じゃ小娘、騒がしいのう」
大急ぎでセンファストのオババの元へやってきました。どんな要件であろうとこのやり取りは大事ですよ。
「マギストの魔力屋本部に行ったんですけど、ここって魔力屋だったんですか? 修練場使うための紹介状ください」
「騒がしい小娘じゃのう。前に学院に行けと言ったが、道を間違えて本部へ行ったんか」
「学院にも行きましたし、基本スキルの操作なら出来るようになりましたよ。見せましょうか?」
「やってみるんじゃな」
流石にお店の中でどこかを狙うわけにもいかないので、あれをしましょう。
「【ファイアボルト】」
右手を伸ばし、腕の周りをぐるぐると回るように軌道を設定しました。まぁ、腕を抜いても同じ場所でぐるぐると回り続けています。
「ほう、覚えただけではなく、それなりに練習したようじゃのう。ならええ、これを持って行くんじゃな」
そう言うとオババはどこからともなく封蝋のしてある手紙を取り出しました。どうやら準備は出来ていたようです。
それを片膝をつき、頭を下げながら拝領しました。
「もう、返しませんからね」
「さっさと行かんか小娘」
どんなフラグ管理なのかはわかりませんが、無事にオババの紹介状だと思われるものを手に入れました。これで、途中をかなりすっとばせるはずです。
それでは、魔力屋本部へ急ぎましょう。
再びマギストの魔力屋本部へとやって来ました。
「紹介状だと思うんですけど、貰ってきました」
流石に貰ってくると言って本当にすぐ貰ってくるとは思わなかったようです。まぁ、紹介状をくれと言われてすぐに出す人もそうそういませんよね。
あくまでも予想ですが、本部で魔力屋の誰かを紹介され、クエストをこなして紹介状をもらうという流れなのでしょう。それなら、もっと時間がかかるはずですし。
「…………確認させていただきます」
封蝋を切り、中身を確認しています。何が書いてあるかはわかりませんが、紹介状だといいのですが。
「はい、確認いたしました。多種多様な教えを受けたようですね。それではこちらの修練場の立ち入り許可証を発行します。こちらで6階までは自由に入ることが出来ますが、5階以上はお一人では辛い場所ですので、同行者を連れて行くことが出来ます。同行者に関してはご自身で用意していただくか、こちらで斡旋することが出来ます」
ふむふむ、何が理由なのかはわかりませんが、オババの紹介状のお陰でかなりの工程をすっ飛ばすことが出来たようです。ええ、もうオババには足を向けて寝れませんよ。
「わかりました。それで、その修練場にはどうやって――」
「ほうほう、そこの小娘があのオババの弟子かのう。魔法以外にそんなもんに頼っとる小娘がのう」
なにや……、いえ、夏イベは8月で終わってましたね。
「オババに弟子だと言われた覚えはありませんよ」
紹介状になんと書かれていたかは知りませんが、弟子ではないでしょう。
「そ、そうか……」
急に突っかかってきたゴテゴテしたローブを纏った老人風のNPCが困っています。流石にそこで否定されるとは思っていなかったのでしょう。けれど、弟子とは言われていないのに弟子と名乗ることはありません。
「それで、何かようですか?」
「いや……、そのう……。そうじゃ、あのオババからいろいろと学んどるそうじゃが、なぜ魔法使いがそのようなもんに頼っとる」
「そのようなもんって何ですか?」
「それじゃよそれ、その腰のもんじゃ」
腰ですか。まだ頼ったことはありませんが、時雨から貰ったばかりのこれでしょうかね。とりあえず外して見せてみましょう。
「これですか?」
「そうじゃ。魔法使いともあろうものがその様なものに頼るとは……」
「これ、貰ったばっかりで使ったことないんですよね。それに、私が頼ってるのはこっちです」
そう言って願いの長杖を見せつけます。やはり、魔法使いには杖ですよ。
「そうかそうか。なかなかによい一品じゃ。じゃが、惜しい。その杖はまだ強くなれる。けれど、その腰の物と同じ方法だけでは、魔法使いの武器としてはまだまだじゃ。どうじゃ? 儂から教えを請わんか?」
これは……、まさかの別口強化でしょうか。精錬だけでも2パターンあるのにも関わらずです。まぁ、精錬と枠がかぶらないのであれば、有用です。
「教えてください」
ここはしっかりと頭を下げます。有益なことを教えてもらうのに躊躇する必要はありません。
「ほう、素直な嬢ちゃんじゃ。ならば、着いてこい」
「いえっさ」
軽く敬礼してから後を追います。
ここの入り口の正面にある関係者以外立ち入り禁止の扉から中に入り、奥へと進みます。
「そうそう、嬢ちゃん、名は、何と言うんじゃ?」
「リーゼロッテです」
「そうかそうか。儂はオジジじゃ。覚えとくがええ。……着いたぞ」
オババにオジジ、何かしらの関係のあるNPCなのでしょうか。ちなみに、案内された部屋には【オジジの作業場】というプレートが下がっています。
中に入ると妙な機材やら怪しげな物品やら、よくわからないものが大量に鎮座していました。
「さて、本来であれば教える前にいろいろと試験代わりに手伝ってもらうんじゃが、それだけの強化をする伝があるのであれば、必要ないじゃろ」
おや、この短刀のお陰で途中が省略されましたよ。
「ちなみに、本来はどんな試験をするんですか?」
「ふむ、何、簡単なことじゃ。ここの修練場である【魔力の渦】へ潜り、今からすることに必要なものを集めてもらうだけじゃよ。じゃが、それは儂が使う分じゃから、嬢ちゃんが使う分は別で集めてもらうがのう」
うーむ、まぁ、ダンジョンに潜る回数が減ったと思えばいいことですね。下手をすれば1階から順にクエストを進めながら潜る必要がありましたし。
「それでは、どの道その修練場には行く必要があるんですね」
「そうじゃ。じゃが、先に教えるぞ」
そう言ってオジジは杖と謎の回路らしきものを取り出しました。識別してみると【破損した回路】となっています。どうやら、これが別口の強化に必要なアイテムのようです。
「それだけですか?」
「嬢ちゃんは魔力を操作出来る。じゃから、魔石は必要ないんじゃよ。そして、これをこうじゃ」
オジジが杖の上に回路を置き、手をかざしました。すると、その二つが光に包まれ、杖から何かをはめ込むための窪みが描かれたウィンドウが出ています。
「これが【スロットエンチャント】じゃ」
「スロット……エンチャント」
「そうじゃ、そして、ここには様々な力を持ったオーブを取り付けることが出来るんじゃ」
「オーブですか。それはどうすれば手に入るんですか?」
スロットエンチャントが出来ても肝心のオーブがなければ何の意味もありません。果たして作れるものなのか、MOBからのドロップなのか、これは重要なことです。
「今から教えるから、大人しく待っとれ。必要なものはあるが、何でもいい。それぞれの素材が持つ力を魔力を用いて引き出すんじゃ」
オジジが取り出したのは魔石(小)です。どうやら本当に何でもいいようですね。
「【オーブ化】」
すると、魔石(小)が光に包まれ丸い玉になりました。
――――――――――――――――
【オーブ・MPアップ】
効果:最大MP+5%
装備場所:全部位
――――――――――――――――
ふむ、こうなるわけですか。オーブ化したらどんな効果を持つかはやってみなければわからないそうですが、その素材の由来から大まかに推測することは出来るそうです。まぁ、装備場所という欄があるので、武器とそれ以外とかになるのでしょうか。
「そして、最後にこうじゃ【マウント】」
すると、オーブが杖から出ていたウィンドウの窪みに取り付けられました。後は出しっぱなしのウィンドウを閉じれば作業終了だそうです。
「これがスロットエンチャントとオーブ化のアーツスクロールじゃ。さっさと覚えてアヤツに報告するんじゃな」
「オババにですね。りょーかいです」
そんなわけで二つのアーツスクロールを手に入れました。これは使う以外の選択肢がないので、そのまま使用します。
ポチっちとな。
ピコン!
――――System Message・アーツを習得しました―――――――――
【スロットエンチャント】を習得しました。
【オーブ化】を習得しました。
強化付与から選択することが出来ます。
――――World Message・強化システムが解放されました―――――
プレイヤー・【リーゼロッテ】によって強化システム-スロットエンチャントが開放されました
※詳しくはヘルプを参照してください。
――――――――――――――――――――――――――
……あ。まぁ、見なかったことにしましょう。
えーと、スロットエンチャントとオーブ化は強化付与の範囲ですか。それではヘルプを見てみましょう。
何々、装備の主な素材によってエンチャントが出来る回数が違うそうです。
ちなみに、各地の魔力屋でスロットエンチャントをしてもらうことも可能ですが、NPCの場合、スロットが一つまでなら高確率で成功で、複数のスロットを付けられる場合は、1回目は必ず成功しますが、2回目以降は少しづつ確率が下がるそうです。失敗時のペナルティは確率で武器が壊れるそうです。
まぁ、プレイヤーの場合は何回目であろうと、付けられる回数なら成功するらしいので、心配する必要はなさそうです。
ちなみに、スロットのウィンドウの出し入れにはいろいろな方法がありますが、音声のキーワードとして【オープン】と【クローズ】が設定されています。
オーブの取り付けに関しては、オーブ化が出来るプレイヤーにしか出来ないそうで、取り付けの【マウント】と削除の【デリート】があるそうです。ただ、アーツの説明の匂わせ方からして、削除以外にも取り外して再利用する方法がありそうですね。
さて、スロットエンチャントの確認はこれくらいにして、必要なアイテムの確保に向かいましょう。【破損した回路】とかいうアイテムが必要で、それはここのダンジョンにあるらしいですし。
ハヅチ:おーい、何やらかしたんだ?
リーゼロッテ:必要なもの集め終わったらね
正直なところ、これの習得方法を教えるにしてもわからないことが多すぎます。ええ、私に言えることは強化付与を取って、精錬された装備を用意しろということだけです。それに、まだスロットエンチャントをするのに必要なアイテムがないので、出来るけど出来ないよという状態です。ならば、
話をするための最低条件を揃えなければいけません。
というわけで、再び受付へとやってきました。
「ダンジョンの入り口と中のMOBの情報が知りたいんですけど、どこで調べられますか?」
「入り口は扉の正面に専用の部屋がございます。中の情報に関しては、そちらの資料室をご利用ください」
「あー、後、6階までは入れるって言われましたけど、7階にはどうすれば入れますか?」
「7階は魔力の操作に関する腕を磨いていただくか、こちらで仕事をしていただくかの二つです。どちらにしろ、5階以上はパーティーでの立ち入りを推奨しています」
「わかりました。ありがとうございます」
何であれ、まずは情報です。早速資料室へと足を踏み入れました。
本棚と申し訳程度の机と椅子があります。腰を据えて調べる気もないので、本棚の前に陣取り、MOBの情報が載っている資料を探します。まぁ、検索ウィンドウがあるので、すぐに見つかりました。
えーと、1階から順に、【動くパペット人形】、【マギパペット】、【マギドール】、属性持ちの【マギドール】、【マギウォーリア】、属性持ちの【マギウォーリア】が出るそうです。ちなみに、立ち入れない階の情報は見れないようですね。まぁ、MOBの情報も名前と大まかな特徴と外見くらいしかのっていませんが。
1階と2階のはそのままパペット人形が浮いている感じのようで、3階4階のマギドールはフランス人形くらいの大きさのMOBが歩いているそうです。最後のマギウォーリアになると、いろんな武器を持った小柄なマネキンだと思えばいいでしょう。
破損した回路は3階以降のドロップですが、5階からでないと確定にならないそうです。まぁ、4階でもほぼ落ちるそうなので、そちらで試してみましょう。1階や2階では破損した回路の下位アイテムが落ちますが、そちらだと必要個数が多かったり、武器の素材によっては出来ないそうです。
そんなわけで本部の入り口に戻って正面にあるダンジョン用の入り口がある部屋の方へ向かいます。その部屋の床には様々な色に変化する魔力の渦巻きがあり、ここが入り口用のようです。さて、初見の場所なので、安全のためにヤタと信楽を送還しましょう。
準備が出来たので、渦の中に入ると何階へ移動するかのウィンドウが出たので、4階へ移動しました。
一瞬の暗転の後、洞窟の様な場所へ出ました。壁やら床やら天井やらには照明の代わりなのか小さめの魔力の渦巻きがあるので、目がチカチカしそうです。魔力視で見ても反応があるのですが、果たして背景以外の意味があるものなのか……。ちなみに、識別では反応しませんでした。
触ってみても、どこかへ繋がっているとうことはなかったので、ちょっと期待はずれです。
しばらくすると、マギドールと思わしきMOBが見えました。識別した結果、マギドールと出たので間違いないでしょう。ちなみに、属性が火属性の小なのは、あの赤い髪と関係あるんでしょうかね。服がボロボロでゆっくりと歩いていますが、ダンジョンの雰囲気と合わせて恐怖を抱きそうになります。まぁ、包丁を持ってるとか、服が血だらけとか、そういった要素がないので問題ありませんね。
そういえば、属性は違いますが、名前は同じなので、【熟知】が役に立ちそうですよ。時計塔のダンジョンは複数のMOBが出現したので、バフがあまり上昇しませんでしたし。
相手は火属性なので、ここは水属性の出番です。
「【アイスランス】」
魔法陣を5個描き、氷の槍を5本放ちました。もちろん、閃きも使っているので、これで倒す気ではいますが、時計塔の3階で出てきた【動く魔本】がランス系5発だったことを考えると、倒せない可能性の方が高いですね。
氷の槍が命中し、マギドールの足が止まりましたが、壊れかけた顔で私を睨みつけ、ゆっくりと向かってきます。やはり、倒しきれませんでしたね。
「【メタルランス】」
まぁ、歩みが遅いことに変わりはないというか、瀕死なのか余計に遅くなっているので次の魔法が余裕で間に合いました。流石にランス系を10発も受けると、耐えきれずにポリゴンへと変化し消滅しました。
私としては単体魔法のレーザー系が欲しいのですが、そのためにはボム系を使い続けなければいけません。ランス系ではスキルが違うので、スキルレベルが上がらないんですよね。やはり、どこかボム系を使いやすい場所で使うしかないのでしょうか。パーティーであれば、投げるために距離を詰めることも出来ると思いますが、私は近付かれるということのリスクが高すぎるので、やりたくないですし。
とりあえず移動しながら戦っていますが、ドロップ率はかなりのもののようです。流石に10回やそこらで何割だなんて言うことはしませんが、毎回落ちているので、ここでも集めることは出来そうです。
ここに通うのであれば、ちょっとボム系を使った戦い方を考えてみましょうかね。例えば、手元に出したボム系を投げつけ、攻撃される前に逃げるということも出来ますし。実際、あの移動速度なら相手の攻撃範囲外から投げて一方的に倒すことも出来るとは思うので、試してみましょう。
流石に何の属性が来るかわからないので相手が見えてからボム系を出すことになりますが、時間的余裕はたっぷりあります。
見えてきたマギドールは土属性で、髪は茶色です。やはり、属性と髪の色は関係があるのでしょう。まぁ、識別のスキルレベル上げにもなるので、毎回やりますが。
「【ゲイルボム】」
杖を脇に抱える形で風の玉を2個出しました。そして、こちらから一気に近付き――。
「とりゃ」
『KETAKETAKETA』
「ひゃ」
この行動自体は慣れたものですから、ゲイルボムの爆発にマギドールを巻き込むことは簡単です。ただ、予想外だったのは、ある程度近づくとマギドールの目がくるりと回転し、いきなり走り始めたことです。
その結果、ゲイルボムがマギドールの体に命中したのは不幸中の幸いでしょう。まぁ、威力は変わらなそうですけど。
……そういえば、ボム系の射程距離はどうなっているのでしょう。いつも手元に出しているので試したことはありませんでしたが、一度手を経由しなくてもいいことはわかっています。木の上から落としたこともありますし。
一つ、試してみましょう。設定せずに魔法を使えば初期設定の位置に魔法陣が描かれます。けれど、複数のスキルによる補正で発動場所はある程度自由に出来ます。それに、MPを追加で消費することにはなりますが、伸ばすことも出来ますし。
では、MPを消費しない範囲で発動地点を伸ばしてみます。
うーん、2メートルといったくらいでしょうか。これは流石に無理でしょう。
ちなみに、MPを追加で消費するにしても、元の距離と比べてどのくらい伸ばすかで消費するMPが決まるので、ランス系を相手の上から発動するのと同じ様に使ったら、とんでもないMPを消費することになります。いい案だと思ったのですが、残念です。
まぁ、出してから近付くようにしているので、攻撃を受けて吹き飛ばされても落とさない限りは攻撃出来ないということはありませんでした。というか、落としてもマギドールが巻き込まれるので、失敗しても倒せています。
攻撃を受けても回復すれば問題ないので、もうこれでいきましょう。ええ、多少のHPは必要経費です。
途中、【魔法威力上昇】スキルがLV30になったのですが、これは治癒以外の下級魔法スキルがカンストした時に取得出来るようになりました。つまり、これの上位もほぼ全ての中級魔法スキルをカンストさせないと取れないのでしょう。
それではいい時間になったので、一度ログアウトです。
Tips
武器についた+の分だけ途中のクエストが飛ばされる
なお、未精錬だと発生しない




