表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Hidden Talent Online  作者: ナート
6章 ハロウィンイベント
96/148

6-2

 学校のある日は日課の後に少し討伐クエストを進める予定でしたが、クランハウスにいる間にザインさんからの連絡があり、西側のデータを受け取りに行くことになりました。ちょうど情報屋クランの人も時間があるとかで、同席すると言われました。

 向こうから時間を合わせてくれるというのなら拒否する理由はありませんね。

 それでは、ザインさんから送られてきた案内に従って出発です。

 まぁ、クランを作った順番が近いので、クランハウスの入り口は近い場所にあるんですよね。街中に土地を買ってそこから入る様にすれば話は別ですが、冒険者ギルドから入れるクランハウスの入り口が並んでいる廊下経由なら、あっという間です。


「お邪魔します」


 何度目かは覚えていませんが、片手で足りる数の回数には間違いないはずです。


「よく来てくれた。ユリアがお茶とお菓子の準備をしているから、かけてくれ」


 応接室に案内されると、トレージャーハンター風のプレイヤーが一人、壁に掛けてある絵の方を向いて立っていました。被っている中折れ帽に手を当てているところが芝居がかっていますね。

 こういう時はこうです。


「ここでいいですか? あと、ヤタと信楽を召喚しても?」

「……あ、ああ、かまわない」


 それではヤタを肩に乗せ、頭の上によじ登ろうとする信楽を抱きしめてモフモフしましょう。


「ハッハッハ、君がリーゼロッテ君だね。私はロジスト秋生、クラン【フィールドワーカー】のサブマスを務めている者だ」


 放置してみたのですが、思った以上に早く芝居がかって挨拶をしてきました。やはりというかなんというか、このプレイヤーが私にあってみたいなんて言っていた物好きですか。


「初めまして、リーゼロッテです」

『KAA』

『TANUNU』

「ハッハッハ、よく出来た従魔だ」


 簡単な挨拶を終えると、頃合いを見計らっていたかのように扉をノックする音が聞こえ、ユリアさんがやってきました。紅茶にケーキとは、いいおもてなしをしてくれるようです。


「おまたせしたわね。話はどこまで進んだのかしら?」

「ハッハッハ、まだ挨拶をしただけさ。さて、時間は有限だ。まずは事前の約束を果たそう」


 そういってロジスト秋生さんがマル秘メモを取り出しました。その数は二枚、つまり、地図データとMOBデータですね。私も同じ様に二枚のマル秘メモを取り出し、交換します。

 さて、これで用は終わりましたね。後で増やしてクラン倉庫に入れておきましょう。


「ハッハッハ、リーゼロッテ君、食べながらでいいから、話を聞いて欲しい」


 食べる合間に話を聞くと、ロジスト秋生さんはいろいろな意味で情報を取り扱うクランのサブマスターで、多くのクランやプレイヤーと協力関係にあるそうです。

 中でも、ワールドメッセージを流したプレイヤーや、新しいスキルやアーツを見つけたプレイヤーとは特に懇意にしているそうです。

 そういった活動をしていながらも、功績はあるのに影も形も見えないプレイヤーがおり、興味を持っていたとか。


「それが、リーゼロッテ君、君だよ」

「そですか」


 もぐもぐ。紅茶の種類に詳しくはありませんが、爽やかで微かに甘い気がしますね。これがショートケーキのせいないのか紅茶のせいなのかは知りませんが。


「ハッハッハ、どうだろうか、今後、何かを見付けたら、うちでその情報を取り扱わせてもらえないだろうか」


 私の視界に一枚のウィンドウが現れました。内容はフレンド申請です。つまり、これを承諾したら、今後は情報をそちらへ売りに行くということですね。

 なら、回答は決まっています。


「めんどうですね。それに、私が見付けたのは、クランのみんなに任せてるので、そっちに流れてると思いますよ」


 前に情報屋クランがあってどうのこうのと時雨が言っていたので、きっと情報は流れているはずです。それに、ザインさんに伝えておけば流れると思うので、私が直接やり取りをする必要はありませんね。


「そ……そうか。では、欲しい情報はないか? 私達が攻略サイト以上に詳しい条件を知っていることも多いぞ」

「召喚獣について、ユニコーン以外に情報があるのなら、考えます」


 今度は私からフレンド申請を送ってみました。さて、情報はあるのでしょうか。まぁ、サモナーズーの方にヤタと遭遇時の詳しい情報で聞ける範囲を聞くつもりではありますが、向こうが仕入れたという話を聞かないので、まだ先になりそうですね。

 ちなみに、情報がないようで、フレンド申請は却下されました。


「ハッハッハ……、それでは君がエンストに来る前にそこで召喚獣の話を仕入れてからまた会うとしよう」

 またもやフレンド申請が送られてきました。このやり取り、面倒になってきましたよ。それに、断るような内容ではないので、承諾しました。


「ああそれと、我々フィールドワーカーの拠点はセンファストにある。君が何か情報を売りたいと言う時は、私に連絡か、そちらに来てくれ」


 それだけ言うと、ロジスト秋生さんは簡単に別れの挨拶をして去っていきました。私も用事は終わったので日課の続きをしてログアウトしましょう。





 平日にも少しずつ討伐クエをしていたので、何とか50体まで倒す事が出来ました。そして、金曜日の夜、明日は休みなので、討伐クエを終わらせてしまいましょう。


「こ――」

「確保ー」


 挨拶の定型文を口にしようとした瞬間、背後に柔らかい感触を感じながら確保されてしまいました。犯人の声と腕にある白い布と背中の感触からして時雨だということはわかっています。


「どしたの?」


 その答えは一枚のウィンドウでした。えーと、パーティー申請ですねぇ。とりあえず思考操作で許諾しましたが、何をするのでしょうか。


「それじゃ、いこっか」

「えーと、説明はなし?」

「移動しながらね」


 時雨が私を担ぐと、他のみんなも集まってきました。


「えーと、必要な物は?」

「リーゼロッテは鞄にいれっぱでしょ」


 時雨がポータルを操作しノーサードへ転移する為の確認ウィンドウが出ました。ふむ、本気で説明する気がないようですね。本気で拒否すればハラスメント警告が出ると思いますが、移動が楽なのでこのままでもいいかと思ってしまっている私がいます。

 ノーサードのポータルに移動したので、近くにいるグリモアに聞いてみましょう。


「どういう状況?」

「うむ、黎明の時、世界の言葉が響き渡ったのだ」

「へ?」

「世界の言葉曰く、我らが武具に秘められし力を解放する技法の封が解かれた」


 あー、ワールドメッセージですか。恐らくは精錬だか強化だかのシステムが開放されたわけですね。確認してみましょう。


 ――――World Message・強化システムが解放されました―――――

 プレイヤー・【種子島】率いるパーティー【RK製造班】によって強化システム-精錬が開放されました

 ※詳しくはヘルプを参照してください。

 ――――――――――――――――――――――――――


 なるほど、精錬ですか。続きはヘルプですね。


「鍛冶スキルを持ってる時雨なら急ぐよね、そりゃ」

「うむ、我らも神に仕えし者が新たな力を手にするのなら、彼の地へ向かうことに異存はない故」


 えーと、通常精錬と限定精錬ですか。

 精錬は+10までで、精錬石とかいうアイテムが必要のようですね。通常精錬は単純な攻撃力の強化で、限定精錬は攻撃力と特定部分の強化が出来るそうです。

 限定精錬の強化項目は6個で

速度強化……攻撃速度増加

会心強化……クリティカル性能強化

強打強化……振れ幅の最大値が上がる

安定強化……振れ幅の最低値が上がる

耐久強化……耐久値の最大値が上がる

破壊強化……相手武器・防具の耐久減少量増加

 となっているそうです。

 防具の精錬に関しては、効果を防御側に置き換えればいいだけですね。

 そして、デメリットというか成功率ですが、4回目までは必ず成功し、5回目からは確率で成功するようです。詳しい数値やその内容はわかりませんが、わかりますよ、これは課金要素の匂いです。きっと成功率が上がる精錬石とか、デメリットから装備を守ってくれるアイテムとかを出すんですよね。今の課金アイテムは必要性の薄いものばかりですから、きっといい収入源になるはずです。

 まぁ何にしろ、強化というアーツを覚える必要があるので、その装備に適した生産スキルを持っている人がクエストをこなさないといけないんですよね。


「リーゼロッテ、悪いけどここからは自分で歩いてね」

「えー」

「えー、じゃないの。流石に外に出るし、初見の場所なんだから」

「へいへい。この先もゴーレム系だっけ?」

「そうだよって、リーゼロッテが情報貰ってきたんでしょ」


 一応目は通したのですが、マル秘メモを作るために見たと言った方が正しいですね。一応確認のために視界の端に表示させましょう。

 出てくるゴーレムは4種類ですが、遭遇率が高いのはソードゴーレム・ シールドゴーレム・ガンナーゴーレムの3種類です。この3体の違いは手が剣なのか盾なのが銃なのかだけで、体がだいたい2メートルくらいでゴツゴツしている点は共通しています。この坑道はゴーレムが警備をしているという設定なのか、3体のゴーレムが戦闘を行っても差し障りのない広さがあります。ですが、私がよくふらついている森と違って広いわけでもないうえに天井も壁もあるので、上手く立ち回らなければいけませんね。

 そして、最後の1種類が交じると、難易度が跳ね上がります。

 情報を確認しながら何度か戦闘をこなしていたのですが、とうとう斥候役のリッカがその気配を察知しました。


「……リカ、バリー、……ゴーレム、……いる」

「グリモア、リーゼロッテ、回復役を先に頼む。モニカ」

「わかったよ、【ハウル】」


 4種類のゴーレムが陣形を組んでいます。ゴーレム系は物理系のステータスが高いので、いくらモニカでもまともに受け続けることは危険です。


「【フレアボム】」


 そのため、私とグリモアがボム系の魔法を持てるだけ用意しながらリカバリーゴーレムへと近付きます。流石に5個も抱えると動きづらいですが、落としそうになったのをリッカが拾ってくれたので、手伝ってもらうことになりました。


「往くぞ」


 グリモアの合図でリカバリーゴーレムへフレアボムを投げつけました。そして、結果にかかわらず、一目散に元いた場所へと戻ります。何せ、このリカバリーゴーレムには厄介な特性がありますから。ここのゴーレム系MOBはダメージを受けると体の岩がボロボロになります。そのお陰で他のMOBよりもダメージがわかりやすいのですが、このリカバリーゴーレムは自身の体を使って他のゴーレム系のダメージを回復するんです。

 なんとも役割がわかりやすい名前ですよね。

 その上、周囲の壁を削って自身のHPも回復するので、火力が足りないと永遠に戦い続けることになります。まぁ、ただの回復役なら、いくら周囲の壁を掘って自らの体も補修するとはいえ、そこまで厄介にはなりません。

 ええ、厄介な特性は別にあります。


「リカバリーゴーレムは倒せたよ」

「わかった。モニカ、頼むぞ」


 モニカの動きが防御主体のものから攻撃主体のものへと変わりました。

 理由は簡単です。リカバリーゴーレムを相手に稼いだヘイトはそっくりそのまま一緒にいるゴーレムにも加算されます。しかも、モニカに掛けてもらっているバフで減少する前の数値が、です。つまり、残った3体のタゲを持っているのは、私です。


「ひゃっ」


 ソードゴーレムとシールドゴーレムはまだいいのですが、ガンナーゴーレムは遠距離攻撃が主体なので後ろを確認しながら逃げないともろにダメージを受けることになります。更に、グリモアもそれなりにヘイトを稼いでいるので、下手に攻撃をすればグリモアにタゲが移ります。つまり、私達は今、手を出すことが出来ません。

 全てのゴーレムをしっかりと巻き込めれば、苦労することはなかったと思いますが、そうは上手くいかないものですね。


「【ハウル】」


 二度目のハウルで3種類のゴーレムのタゲがモニカへと移りました。私達のヘイトが時間経過で減っているとはいえ、まだ手を出すわけにはいきません。

 もう一度ボム系を全て叩き込めば倒せる可能性があったのですが、スキルレベルのことも考え、手を出しすぎないことになっています。けれど、物理防御の高い相手に物理職だけで挑むのは時間がかかります。


「あー、もうめんどくさい。リーゼロッテ、グリモア、やっちゃって」


 まぁ、そういうことなのでしょう。スキルレベルをここで上げる必要はありませんし、今回の目的はテクザンへ行くことですから。


「【ゲイルボム】」


 もちろんリッカにも風の玉を持ってもらいました。ボム系が何発必要かはわかりませんが、8発もあれば、ある程度のダメージを受けているゴーレムには十分です。

 リザルトウィンドウが出たので倒したことは確定しました。レアMOBであるリカバリーゴーレムがいたので、精錬石が少し多めにドロップしましたが、特に何か珍しい物が落ちるわけでもないので、手間がかかるだけで、出てきて欲しくないMOBです。


「あー、一応確認しておくが、道中はグリモアとリーゼロッテが魔法で手早く処理するということで異論はないか?」


 リカバリーゴーレムが混じった戦闘後に最初に口を開いたのはアイリスでした。面倒に思っていたのは時雨だけではないようで、リカバリーゴーレムの有無に関わらず、私とグリモアでさっさと倒すことになりました。まぁ、それが出来ればいいのですが、上手く巻き込めるようにモニカに苦労をかけることになりそうです。

 しばらく進んでいると、リッカが止まるよう合図をしました。


「……前、つまって、る」

「ピンチのパーティーがいるよ」

「少し離れて待つか」

「横は通れないもんね」


 どうやら魔法職を連れずに来ているパーティーがいるようです。いなければいけない理由はありませんが、いないと大変でしょうに。

 こちらはフルパーティーですから、下手に手を出すと共闘ペナルティが発生します。プレイヤーに対して付与魔法でバフをかけるくらいなら問題ありませんが、下手に近付いて邪魔になってもあれなので、待ちましょう。


「この先はっと」


 ザインさん経由で貰ったこの坑道の地図データ、ほぼ踏破してあるんですよね。人海戦術なのかはわかりませんが、とてつもない労力の結晶ですよね。


「ちゃんとゴールから逆に辿って確認してあるから迷わないよ」

「そっか。なら、安心してついてけばいいわけだ」


 休憩している間に前のパーティーの戦闘が終わったようです。ちゃんと倒したようなので、慌てる必要もないので、ゆうゆうと通り過ぎましょう。


「道を塞いで悪かったな」

「いや、ここは狭いから仕方ないさ」


 他のパーティーとの会話はアイリスの担当なので、少し足を止めて話しています。


「ところで、君達はこの先の地図データを持っているのか? 持っていないのなら、中間ポータルまでのデータをポーションと交換してもらえると助かるんだが」

「済まないが私達も地図は持っている。まぁ、ポーションには余裕があるから、少しくらいなら売れるぞ」


 交渉の結果、私とグリモアで回復もしてあげることになりました。MPには余裕がありますし、すぐに回復するので何の問題もありません。


 ついでに詠唱系スキルのレベル上げにもなるのでちょうどいいですし。

 その後、早く先へ進みたくてウズウズしていた時雨を先頭に坑道を進み始めました。まぁ、十分慣れてきましたし、中間ポータルへの道も半分を過ぎると、プレイヤーが密集し始めました。その結果、戦闘回数も少なく、無事に最初の目的地である中間ポータルへとたどり着きました。


「へー、廃棄工房って言うらしいけど、ロボットものでいう格納庫っぽいよね」

「うむ、ここより更に奥深くには、ゴーレム達を生み出す場所が存在するはずだ」

「あー、どっかの箱とかどかしたら地下への通路とかあったりしてね」

「さて、ほっとくとそこらじゅうをひっくり返しそうな二人がいるから、さっさと予定決めよっか」

「あれ? このまま進むんじゃないの?」


 MOBとの戦闘回数も抑えられたので、思った以上に時間は経っていません。ここから先も同じ可能性があるので、順調にいけばテクザンのポータルを開放出来るかもしれません。


「私としては行きたいけど、みんなの都合もあるし、今日もわがまま言ってここまで来たし……」


 おや、自覚はあったわけですか。けれど、やるならやりきるべきですよね。


「よーし、アイリス、こういう時はどうやって決めるの?」

「最近は、用事があるとか、明日が早いか確認してからだな。さて、みんなどうだ?」


 確認したところ、特に問題はないようで、このまま先へ進むことになりました。いざとなれば、街に戻ってログアウトすればいいだけですし。





 中間ポータルより北で出現するMOBを確認しながら進むことになりました。出てくるのはこちらも4種類で、 ソーディアンゴーレム・ガードナーゴーレム・ブラスターゴーレム・リペアゴーレムです。全体的にスタイリッシュになっており、完全に上位MOBですね。

 HPが高いのか魔法防御力が高いのか、8発のボムでも倒しきれないので、修理役のリペアゴーレムを最初に狙い、ボロボロに崩れかけたゴーレム系に襲いかかります。時雨は一応魔法を持っていますし、リッカは魔法の矢があるそうなので、ある程度のダメージを与えることは出来ます。いざとなれば、私とグリモアがランス系を叩き込めば終わりますし。

 ちなみに、ドロップは同じく精錬石ですが、こちらの方が多くドロップします。倒せるのであれば精錬の為に籠もる必要があるようですね。

 しばらくして、分かれ道で何か相談しているパーティーを発見しました。残念ながら迂回路はないので、黙って通り過ぎましょう。


「おー、いいところに、なあ、あんたら、ここはどっちに行けばいいかわかるか? そろそろ遅くなるし、ボス戦も考えると迷ってる時間ないんだよ」

「私達はこちらへ行くが、ここに来るのは初めてだぞ」


 私達は答えを知っていますが、嘘はついていません。それに、きちんと対価を払って手に入れた情報を知らない人にタダで教える気はありません。


「そうか。答えてくれてありがとうな」


 そう言うとそのパーティーは座り込んでしまいました。どうやら、どちらに進むにしても、こっそり後を付けるようなことはしないという意思表示のようです。他にも、パーティー毎の間隔が近いとMOBのリポップが間に合わなかったりするので、スキルレベル上げもしたいプレイヤーはわざと止まるそうです。私としては倒してくれておいた方が楽なんですけどね。早く着きますし。

 MOBが強化されているため、一戦毎の時間は長くなっており、少し時間はかかりましたが、戦闘の回数自体は人の多さもあって、マギストの道中ほどではありませんでした。そのため、少し余裕を持ってテクザンの目の前らしき場所へと到着しました。

 これはボスに挑めそうですね。


「よし、確認するが、このまま挑むか?」


 アイリスの問に対し、満場一致でボスに挑むことになりました。まぁ、流石に情報の確認や消耗品についての確認はしますが。

 ここのボスであるゴーレムサージェントについてもかなり詳しい情報があるので、それぞれの行動パターンについて復習してから挑むことになりました。

 ………………

 …………

 ……


「よし、わからないことはあるか?」


 アイリスがパーティーリーダーとしての風格を見せながら聞いてきました。オークサージェントと行動パターンが似ているので覚えるのは楽でしたね。


 ピコン!

 ―――System Message・エリアボス【ゴーレムサージェント】を解き放つことが出来ます―――

 技術都市の門前に立ち塞がる【ゴーレムサージェント】と戦うことが出来ます

 【ゴーレムサージェント】を解き放ちますか?

 【はい】 【いいえ】

 ――――――――――――――――――――――――――――――


 確認も終わったので、早速ボス戦突入です。

 アイリスが【はい】を押すと、一瞬の暗転の後、円形の格納庫の様な場所へ移動していました。壁や床、天井には光が走る回路の様な模様があり、ほんの少しSFが混じった様な場所です。

 もちろん60秒のカウントがあり、ゴーレムサージェントの出現位置が表示されています。


「作戦通りに頼むぞ」


 まずは私とグリモアでバフを掛けます。今回は情報を聞く限り【アンチショット】の出番はなさそうですし、状態異常無効という裏設定のありそうな能力があるので、今回の担当分けは掛けるバフ別です。

 準備が出来たのでカウントが0になる前に開始です。


『Warning Warning Warning』


 そんな音声と共に警報が鳴り響きます。

 すると、頭上から巨大な金属製らしきブロックが降ってきました。

 ……流石にあれに潰されたら一撃でやられそうですね。落ちてきたブロックに切れ目が入り、変形しました。この部屋は天井が高いのでゴーレムも大きく、狙いを外すことはなさそうです。

 そして、ゴーレムサージェントの後ろの壁から小さめのブロックが4つ出てきました。

 事前情報によると、取り巻きは4体でその構成は中間ポータルよりも北側に出てくるMOBが1体づつなのですが、少し強くなっています。まぁ、リペアゴーレムに関しては取り巻きの回復しかしないそうなので、ここまで来れるのなら火力が足りずに無限ループに陥る可能性は低そうです。


「【アローレイン】」


 位置取りを済ませていたリッカが弓の範囲攻撃で取り巻き全てのタゲを取ります。ええ、取り巻きを残してはいけない理由があるので、ボスはモニカ達に任せて3人で一気に片付けます。


「【ストリームボム】」


 リッカが素早く動いて4体の取り巻きをまとめてくれたので、持てるだけのボムを手にし、取り巻きへと投げつけました。流石に8発では落としきれなかったので、先にディレイが終わったグリモアが追撃をして取り巻きを倒しきりました。


「こっち終わったよ」


 ゴーレムサージェントの方を見ると、モニカが盾を使って慎重に攻撃を受け流しています。流石に巨体を相手にしているので、正面から受け止めるということはしないようです。アイリスと時雨も攻撃をしてはいますが、物理攻撃の通りが悪いので、見えているHPバーに大きな変化はありません。

 それでも、時雨は魔法も持っているのでまだましではありますが、事前情報には物理攻撃の通りが良くなる方法はなかったので、存在しないのでしょう。

 ちなみに、大勢で取り囲むと足と手を伸ばして周囲を薙ぎ払う回転攻撃をしてくるので、遠距離攻撃が出来る私達は絶対に近付きません。

 なんとかゴーレムサージェントのHPを半分削ったところで、最初の変化です。


『First binding system release』


 かっこいいアナウンスと共に取り巻きのブロックが4つ出現しました。それと同時にゴーレムサージェントが妙なポーズをしていますが、ここで前の取り巻きが残っていた場合、なんと、前の取り巻きが変形合体し、ゴーレムサージェントが強化されるんです。ソーディアンゴーレムが残っていると巨大な剣を、ガードナーゴーレムだと巨大な盾を、ブラスターゴーレムだと肩に大砲が、リペアゴーレムだと空中を舞う修理ビットが追加されるそうです。1体でも残った時点で行動パターンに変化が起こるそうなので、取り巻きは残さないことを推奨されているそうです。


「【アローレイン】」


 まぁ、ボスはモニカ達に任せて私達は新たに出現した取り巻きを倒すことを優先します。ちなみに、このアーツ、弓の消費が激しいそうで、魔法攻撃が出来る矢も高いので、かなりの散財になるそうです。そこはまぁ、消耗品なのでパーティ資金である程度はまかなっているとか。今回は私も少し負担すると言ってあります。


「リーゼロッテ、変化はあった?」

「んー、何にもないよ。光ってるのには反応あるけど、演出っぽいし」


 前もって言われていたので、魔力視で辺りを見回しますが、回路の様な模様の走る光以外には反応しないので、何かをすれば弱体化するといったことはないのでしょう。


「わかった」


 ボスのHPも少しづつ減っていますが、だんだんと動きが激しくなっているようなので、モニカ達は大変そうですね。時雨なんてたまに床を斬っていますし。


「ストンプ来るぞ」


 HPバーが30%を切り黄色になると、次の変化の為に両手を振り上げ、地面へと叩きつける攻撃をしてきます。これはフィールド全体に効果があるので、衝撃波のエフェクトを見ながらしっかりとジャンプしなければいけません。何せ、ダメージはなくとも、しばらく動けなくなりますから。ちなみに、この後からは本来の意味のストンプ攻撃が追加されるわけですが、効果が同じなので、こちらもストンプと呼んでいるそうです。そちらの場合は動けない相手へ突進攻撃の起点にされるので、後衛の私がそんな攻撃を受けたら一撃でやられてしまいますよ。


「うりゃ」


 衝撃波の後、時雨の声が聞こえました。何をしたのかと思いきや、ジャンプでの回避を利用し、勢いをつけて地面へと刀を突き刺しています。

 どうやら地面を走る光を突き刺したようで、そこから漏れ出た光が一瞬、視界を覆いました。


『Emergency Emergency Emergency』


 そんなアナウンスが聞こえ、光が収まるとゴーレムの色合いが少し暗くなりました。これが何を意味するのかはすぐに分かりました。


「手応えが変わったな」


 そう口にしたのはアイリスです。どうやらこの回路を走る光の様なものはゴーレムサージェントへのエネルギー供給の一環のようです。床に光が走ることはなくなり、壁と天井の光も減っています。同じことをすればまた物理防御力が下がるかもしれませんが、流石に同じことを何度もするつもりはないようです。

 そして、ボスのHPが危険域を示す赤へと変化しました。


『Second binding system release』


 またもやかっこいいアナウンスが聞こえました。ここでも取り巻きが残っていたら変形合体するのですが、そんなものはとっくにいないので、謎のポーズをしているだけですね。それでは、私達はまたもや出現した取り巻きを片付けましょう。多少強化されているらしいのですが、手こずる相手ではありません。


「多分次で終わるよ」

「わかった」

 今回に限り、取り巻きを片し切る前に声をかけます。その理由は簡単です。

『Third binding system release』


 ええ、そういうことです。HPが危険域に入ってから新たに出現した取り巻きを倒し切ると、オークサージェントにもあった血の涙を流すモードが追加されます。情報源であるロイヤルナイツではオーバーヒートと呼んでいるそうですね。まぁ、その名の通り、ボスの攻撃時に火属性の追撃が入るらしいですから。

 まぁ、体がどんどん崩れていくので、見るからに燃え尽きる前のロウソクですよね。

 ちなみに、後一撃くらいになるとHPの消費も止まりますが、ここまでくれば時間の問題です。


「あちち」


 受け流さなければいけないモニカには防御属性に水属性を付与していますが、それでも熱いようです。まぁ、私に出来ることは安全な場所から攻撃することだけです。

 しばらくして、ゴーレムサージェントの体が崩れ落ちました。


『Wa……ing War……ng Warn……』


 警報らしき音が途絶えると、空中に文字が現れました。


 ――――Congratulation ――――


「やったか?」

「だから、前にも行ったけど、終わってから言うセリフじゃないからね」


 せっかく全体の流れがオークサージェントに似ているのですから、そこは同じ様にするのが様式美というものですよ。


「あー、確か……直したばっかの盾がボロボロだよ」

「……つか、れた」

「我らの勝利だ」

「………………モニカ、……えっと、ボスを抑えきってくれてありがとう。だったな」


 なんだかんだいいながらもみんな乗ってくれたようです。

 リザルトウィンドウの確認をすると、【ゴーレム軍曹のメダル】を1つ手に入れました。確かザインさんは4種類のメダルを手に入れると何かに使えると考えているようなので、細かいことは情報待ちですね。

 最後に上がったスキルの確認です。


 ピコン!

 ――――System Message・所持スキルがLVMAXになりました――――

 【治癒魔法】がLV50MAXになったため、上位スキルが開放されました。

 【蘇生魔法】 SP5

 【治療魔法】 SP5

 これらのスキルが取得出来ます。

 ――――――――――――――――――――――――――――――


 とうとうですよ。ええ、基本的にソロなのであまり上がらない魔法でしたが、やっとカンストしました。まぁ、蘇生魔法なんてソロで使えるとも思えませんが。

 えーと両方取得したので、詳しい仕様を見てみましょう。

 まず、蘇生魔法です。覚えた魔法は【リザレクション】です。ええ、蘇生魔法ですから、当たり前ですよね。ただ、復活時HP1で確率蘇生だそうです。この名前で確率蘇生って……。一応無駄打ちしましたが、消費MPは少なめですね。ちなみに、ゴーストやらゾンビやらには条件を満たせば確定即死だそうです。その条件はよくわかりませんが、一応は確定即死なので、便利といえば便利なのでしょう。

 次に治療魔法です。こちらは魔法ではなく、アビリティが追加されました。【回復強化】となっていますが、回復系アーツ全ての回復量が増加します。しかも、なんと、驚くべきことに、消費MPも増えるんです。ええ、ON/OFFは出来ますし、回復量を考えればお得なんだと思いますが、微妙な効果ですね。


「よーし、テクザンに入るよ」


 上がったスキルの確認も終えた時雨が音頭を取り、テクザンへ入ることになりました。まぁ、あの場所にずっといる必要もないので、ポータルを開放しに行きましょう。





 暗転の後に広がった光景は、正しく技術都市と言えるものでした。ノーサードは山の中でしたが、ここは山の上を削って作った街の様です。蒸気機関ぐらいならありそうな街の構造ですが、ファンタジーらしい謎の建造物も多く見えます。

 テクザンへ入ると、赤を基調とした鎧のプレイヤーが我が物顔で街を闊歩しており、他のプレイヤーはどことなく遠慮している雰囲気です。


「……………………」

「いきなり何だ?」


 おや? 赤を基調とした鎧のプレイヤーが同じ様なプレイヤーを引き連れて来ましたが、相手が何を言っているのかわかりませんね。

 アイリスは聞こえているようですが、どういうことでしょうか。


「時雨、何かあったの?」

「え? いや、あのプレイヤーがどこのクランの者だ? って聞いてきたんだけど……。あ、リーゼロッテ、ブラックリスト開いてみて」


 何かに気がついたようなので、言われたとおりにブラックリストを開いてみると、【***】という項目から矢印が出ています。どうやら、登録してあるプレイヤーが近くにいると確認出来るようですね。まぁ、名前は知りませんが。


「あー、あのプレイヤーが登録してある」

「そっか」


 おや、時雨が不敵な笑みを浮かべましたね。


「ねぇ、その人、ブラックリストに載ってるってさ」


 会話をオープンに変更し、私を指さしながらアイリスに伝えました。すると、何かを理解したようで、アイリスが頷きました。


「そうか。そちらは私達のパーティーメンバーにブラックリストに登録されるようなことをしたということか。ロイヤルナイツの勧誘部門と言っていたが、そんなプレイヤーがいるクランに入るはずがないな」


 どうやら勧誘を受けていたようですね。

 まぁ、それも完全に断ったので、ポータルへと向かうことになりました。


「ところで時雨、強化システム開放したのってロイヤルナイツの人でしょ。その辺りの情報はどうするの?」

「しばらく待てば情報も出てくるだろうし、ここは鍛冶系のクエストが多そうだから、NPCに話を聞きながらクエスト進めてれば、見つかると思うよ」


 なるほど、クエストをこなせばスキルレベルも上げられるので、急ぐ必要なないということですか。


「そっか。じゃあ、ここに来るまでにドロップした精錬石、いる?」

「ほし……、リーゼロッテも使うでしょ。持ってなよ」

「限定精錬の仕様確認に数が必要かと思ったけど、いいなら持っとくよ」

「その辺りは生産クランに協力した方が早いと思うから、気にしなくていいよ」


 なるほど、+5からは失敗時のペナルティもあるそうですし、時雨一人で検証するのはほぼ不可能ですよね。


「あ、徹夜しないでちゃんと落ちなよ」


 ポータルを開放してからクランハウスへ戻ったわけですが、一応釘を刺しておきましょう。しないとは思いますが、明日は土曜日なので、寝坊出来る日ですから。

 日課のユニコーンを召喚し、ログアウトです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ