5-6
金曜日、今日もログインの時間が遅れましたが、明日は休み……ではなく、文化祭準備のために午後から登校しなければいけません。まぁ、午前からではないので少しぐらいなら夜更かししても問題はありません。というわけで、日課を終えたらこっそりと工房へ行き、除草剤を作りましょう。
「あれ、今日も錬金?」
「いやー、だってほら、ホムンクルス可愛かったし、肩に載せておくだけならただだよ」
「……そっか」
嘘ではありませんが、時雨には何か怪しまれています。けれど、何の確証もないようなので、これ以上は追求してきませんでした。
まぁ、工房自体はクランメンバーであれば誰でも入れるのですが、作業を見物する気まではないようで、成果が出れば言ってくると思われているのでしょう。
さて、鱗粉は98個、赤色の欠片は127個、樹皮は48個、これが残りの数です。成功した除草剤は4個しかありません。1個でどれだけの葉を散らせるかはわかりませんが、4個でどうにかなるはずはありませんね。
それではしっかりと完成品を想像して。
「【錬金】」
光って出来たのは相変わらずの毒々しい液体です。一発目から成功とは幸先がいいですね。
連続で10回行ったところ、6個成功しました。今日の成功率は6割ですよ。まぁ、確率を論ずるのなら試行回数は一万回を超えてからですね。
それにしても、この除草剤、地味に難易度が高いですよ。もしも複数作成のスキルがあったとしても、ゴミが量産されるだけですね。更に15回ほど行い9個成功したところで、錬金術がLV30になってしまいました。
ピコン!
――――クエスト【合成獣作成】が開始されました――――
錬金ギルドを訪れよう
――――――――――――――――――――――――
除草剤を作っていただけなのに、まさかこうなるとは……。
ちなみに、スキルの方では合成獣という項目が追加されていますが、灰色になっており選択出来ません。つまり、クエストをクリアしたら使えるようになるということです。ところで、錬金ギルドってどこでしょう。てっきり生産系は商人ギルドにまとめてあると思ったのですが、そうではなかったようです。まぁ、魔術ギルドはランクがなかったので、錬金ギルドにもランクがないことを祈りましょう。
ここから更に10回行うと、8回も成功しましたよ。このまま行けばLV40になるころには成功率が100%になるかもしれませんね。流石にそこまで上げるのは除草剤だけではつらいと思いますが。
そのまま残りを全て除草剤の材料にしたところ、合計で37個になりました。流石にスキルレベルの上がりも落ち着いたので、除草剤でこれ以上上げるのは難しそうですね。
さて、37個ですか……。まぁ、試さないことには何もわかりませんね。ハヅチに紫色の鱗粉と赤色の買い取りをお願いしようと思っているのですが、今はみんなとどこかへ行っているはずですから、明日にしましょう。
そんなわけで残りの時間を有効活用するためにオールドトレントの群生地へやってきました。ここ二、三日は錬金術のスキルレベルを上げていたので来ていませんでしたが、根が少し減っている気がします。まぁ、私だけが来れるわけでもないので、不思議ではありませんね。というか、一人でここの根を全部伐採するのは大変ですから、教えはしませんが、誰かにもやって欲しいですよ。
オールドトレントの射程距離の目印まで移動し、何をするか考えます。ここに来る間に移動しながら考えるつもりだったのですが、猿と戦いながら木の枝を跳び回っていたので、他のことを考える余裕がありませんでした。
エアロハンドの練習は全くできていないので、別の方法を取りましょう。うーむ、エリアシールドがあれば、一発は耐えることが出来ます。けれど、あれは遠距離攻撃に対してのものなので、根で絡め取ってくる攻撃には無意味です。バリアとの併用は出来ませんし、防げるとは思えません。そういえば、ヒートボディで根に捕まるとどうなるか試していませんでしたね。ついでに併用が出来るかどうかも気になるので、一度実験をします。
魔法陣を二つ描き、エリアシールドとヒートボディを発動しました。まず、併用は可能のようです。ボム系の例もありますが、エリアシールドとバリアは同時発動でも発動しなかったので、これは併用が出来る魔法だと思って間違いはないはずです。
次に根が生い茂る場所へ足を踏み入れます。流石にオールドトレントの射程内に行く気はないので、焼き払って作った道から横へそれる形になります。
私の足跡の形に根が焼かれ、周囲から根が私を絡め取ろうと襲ってきます。けれど、巻き付いた瞬間に焼け落ちるので、根から身を守る方法としては十分ですね。
それではエリアシールドを解除して次の実験です。これがオールドトレントの遠距離攻撃に対して防御効果を持っているのかどうかです。何もわからない状態で射程内に足を踏み入れる気はありませんでしたが、必要なことはわかったので、今度は真っ直ぐオールドトレントに近付きます。
私が射程内に入ると、ざわざわと木が動き始め、葉っぱらしき物が飛んできました。けれど、それは私の体に命中する直前に焼け落ち、ダメージを受けることはありませんでした。これも成功ですね。まぁ、エリアシールドをぶち抜いてくる樹皮まで防げるかはわかりませんが。というか、あれを防げたとしても焼いてしまっては回収が出来ないので意味がありません。そのため、樹皮の回収自体は今までの方法で行う必要があります。
目印の場所まで戻り、次は除草剤の実験方法を考えます。ええ、ここから投げても投擲スキルのない私ではどう考えても届きません。それに可能性の一つではありますが、投げようとしただけで反撃をしてくるかもしれません。詠唱反応とは言っていますが、何らかの対象にした段階でアクティブになるので、フルダイブでは何がきっかけになるのかわかりませんし。まぁ、見てるだけなら問題はありませんが。
所持スキルを眺めながら考えていますが、虚空移動の空中ジャンブがあっても一回だけでは届きません。ショートジャンプはスキルレベルが上がって飛距離が伸びているのでいけるかもしれませんが、移動してすぐに投げられるかわかりませんね。
……あ、そうですよ。この二つを使えばいいんですよ。念の為にエリアシールドとヒートボディを発動した状態で、ショートジャンプを使って飛び、移動先で空中ジャンプをして投げればいいんですよ。ジャンプしながら投げるなんて命中率を考えなければ出来ることですし。
そんなわけで早速実験です。
ショートジャンプの魔法陣を描くのにかかる時間は大体わかっているので、それに合わせてジャンプ出来ればわずかながらも飛距離を稼げますが、ぶっつけ本番で出来るとも思えないので、練習あるのみです。
身を守るために二つの魔法を発動し、助走距離を取ってから魔法陣を描きます。そして、走り出してジャンプしてから魔法を発動させる……つもりでした。
「【ショート――
上空に飛んだ瞬間、重力に従って一気に落ち始めました。
――ジャンぴゃあぁぁ」
遅れればこうなることはわかっていましたが、急に来ると驚きますね。そこから急いで空中ジャンプをしたため、飛距離がいまいちな気がしますが、ここからなら届くかもしれません。
不安定な体勢で手にした除草剤をダークエルダートレントの葉へと投げつけました。
その瞬間、視界の隅で洞の目が開くのがわかりました。
「ぐえ…………ふぎゃ」
投げた結果を確認する前にエリアシールドが破壊され、樹皮が燃え尽きる前に胸へと突き刺さりました。その衝撃で後ろへ回転しながら落下し、地面を転がっています。
ヒートボディは時間が来るまで消えないので、私が転がされた場所の根が一直線に燃え尽きています。空中で受けていたオールドトレントの遠距離攻撃ではびくともしなかったのですが、やはり、あの樹皮は防げないようです。
『WOOOOOO』
私が転がっている途中で妙な鳴き声が聞こえましたが、体勢を整えた段階でその声の主がダークエルダートレントだとわかりました。何せ、全体の一割にも満たない狭い範囲だとは思いますが、葉が落ち、枝がむき出しになっていますから。急いでオールドトレントの射程内から離脱し、四分の一ほど減ったHPを回復させます。
一応は成功のようですが、魔法陣を描く時間に想定よりも誤差がありましたね。スキルレベルやステータスしだいで変化するので、しかたのないことです。それに、あの急に落ちる感覚を味わえたのですから、あれ以上に恐れる失敗はないでしょう。まぁ、必ず成功するという保証はありませんが。
さて、毎回成功しても手持ちの本数ではたりません。それに、不安定な体勢で投げる以上、必ず成功するとも限らないので、量産は必至です。
その後も何度か挑戦した結果、転がったのは毎回でしたが、葉を散らしたのは4回だけでした。失敗の要因は急な落下からの復帰に失敗したのと、ジャンプ中にショートジャンプをしてバランスを崩したことです。つまり、どっちにしろ失敗するということです。
除草剤はまだ残っていますが、何度も挑戦して疲れた気がするので、識別を使って樹皮を集めることにしました。待ち時間には外周の根を焼いているので、オールドトレントも倒しやすくなるでしょうし。
……何度か樹皮を回収しているのですが、なにか変です。樹皮の飛距離には目印をしてあるのに、どうにもそこまで届いていません。まるで、樹皮を飛ばすことが出来る最大距離が短くなったかのようです。もし、これが葉を散らした影響だとすれば、同じ様な役割を持つ根を焼き払えば、オールドトレントの射程距離も短く出来るかも知れませんね。まぁ、私にはあまり関係のない話ですが。
さて、根も結構焼き払いましたし、今日はこのくらいにして安全な場所でエアロハンドの練習をしましょう。いつまでも投げることにこだわっている必要はありませんから。
安全な場所であるクランハウスへ戻ってきました。さっそくエアロハンドの練習をと思ったのですが、さて、何で練習しましょうか。流石に何度も瓶を壊すのもあれなので、魔石にしましょう。
「【エアロハンドォォォォォ】」
目の前に置いた魔石(小)目掛けて透明な手を伸ばします。風の手なのにあるのがわかるのは便利な仕様ですねぇ。
最初は動かし方です。大まかに動かす分には問題ありませんが、細かく動かしたり、力の加減を覚えるのは大変ですから。
この魔法、ハンドという名前がついていることだけあって、手の形を模しています。そのため、風の指で掴もうとすると、自然と私の指も動いてしまいますね。まぁ、私はこういうのを自分の体とは別に動かせるような力量は持っていませんし。
何度か練習した結果、力強く掴むことには慣れてきました。ですが、まだ指でつまみ上げようとするとすぐにどこかへ転がしてしまいます。それに、私の体も同じように動いてしまうので難しいですね。
「珍しいことしてんな」
「あ、ハヅチ、どしたの?」
「いや、それは俺のセリフだ。いつもはどっかふらついてんのに、クランハウスでスキルの練習なんて珍しいな」
そう言われてみればそうかも知れませんね。まぁ、何のための練習かは秘密ですが。
「そうそう、買い取りして欲しいアイテムがあるんだけど、【紫色の鱗粉】と【赤色の欠片】っていくらくらいで買える?」
「そうか、何か企んでるってことはよーくわかった」
そういいながら何かを操作し始めたので、相場を調べているのでしょう。それでは結果が出るまでエアロハンドの練習の続きをしましょう。ええ、狙いはハヅチです。それっ。
「邪魔」
ハヅチの頬をつねってみようとしたところ、すぐに手で払いのけられて、魔法が消えてしまいましたよ。まったく、姉に対して邪魔とは何事ですか。
「……この魔法、脆いね」
「そりゃ、一芸用って言われているからな。それで、買い取りするなら鱗粉は500G、欠片は100G、ってところだな」
「両方とも60個ずつ欲しいから、36,000Gね」
「何に使う気だ?」
「ひ・み・つ」
「もう少し高くてもいいなら、売りに出てるの買い漁るけど、どうする?」
おや、せっかくかわいこぶって見たのに流されてしまいましたよ。
「あー、倍とかならないんならそれでもいっか」
「そんじゃ、はい」
すぐにトレード申請が来たので、代金を入力しましょう。えーと。
「いくら?」
「リーゼロッテの積み立てから引いとくよ」
「何それ?」
私の知らぬ間に積み立て預金があったようです。そもそもそのお金はどこから出ているのでしょうか。
「鞄の技術料だ。リーゼロッテの取り分から上納分引いた分を貯めてあんだよ。後は、リーゼロッテが見つけてきた情報の分もあるか」
「へー、そんなのあったんだ。……あ、ちゃんと返してくれるんなら少しくらい使ってもいいよ」
「……言うと思ってた。流石に手を付ける気はねーけど、一応、借りるかもとは言っとく」
さて、エアロハンドで消費したMPも回復したので、練習の続きをしましょう。
動かすだけなら何とかなるのですが、何かを持つとなるととたんに難易度が上がりますよ。
「乗せるんじゃだめなのか?」
……。
「い、いやー、もちろん気付いてたよ。でも、細かい動作も出来るようにしとくと便利じゃん」
「そうか。ま、俺は落ちるぞ」
「おつー」
時計を見てみると普段なら落ちている時間でした。とりあえず最後にエアロハンドの手のひらに魔石を乗せ、動かしてみることにしました。
「うん、完璧」
乗せる除草剤の瓶はポーション瓶ですから、目的の場所の上で力任せに握りつぶせばいいですし。
さて、ユニコーンを召喚してログアウトです。
土曜日、今日は文化祭準備のために午後から登校です。集合時間が13時なので、それに間に合うように伊織と待ち合わせをしてます。クラスが違う葵は、忙しいらしく午前中から一人で登校していきましたね。
「葵と一緒じゃなくてよかったの?」
「流石に他のクラスを手伝う気はないから」
私達が教室に着くと、やる気があると思われる生徒や、部活などで来ていたらしい生徒がグループに分かれていました。そういえば、準備に関しては基本的にはクラスを優先するという決まりがあると委員長が言っていましたね。まぁ、委員長からの許可があれば部活を優先してもいいらしいですが。
今日の準備も終わり、教室でゆっくりしてから帰ることになりました。
「今日って集まる意味あったのかな?」
「水岩さんが言ってたでしょ。展示系だからって油断してると後で困るから、出来ることは前倒しでやっておこうって」
「……あー、委員長か」
おっと、伊織から疑いの視線を向けられてしまいました。ちゃんとクラスメイトの名前と顔は覚えているので疑わないで欲しいですね。ええ、覚えてはいますから。
「お二人とも、ちょっといいですか?」
噂をすれば何とやら、委員長の登場ですね。
「どしたの?」
「先週のお礼を言っておこうと思いまして。私の素材集めを手伝ってくれてありがとうございました」
「一緒にどっか行くって話だったから、気にしなくていいよ」
「そうそう。茜なんてホムンクルスが可愛いからってレベル上げしてなかった錬金スキル上げ始めたもんね」
おっと、そういうことになっているんでした。まぁ、間違いではありませんが、正しくもないんですよね。本当のことをまだ言う気はまだないので、訂正はしないでおきますが。
「そうなんですか? ホムンクルスも合成獣と同じで錬金ギルドでクエストを受けないといけないので、何か困ったら言ってくださいね」
「りょーかい。あんがとね」
「いえ、それでは」
委員長は委員長で何やら用事があるらしく、どこかへ行ってしまいました。
「私達もそろそろ帰ろっか」
「そだね」
特に用事もないのでそろそろ帰りましょう。
夜のログインの時間です。日課をこなしてから、錬金工房に引っ込んで除草剤を作ります。
しっかりとあの毒々しい姿を想像して――。
「【錬金】」
紫と茶色の混ざった毒々しい液体の完成です。ええ、何度見ても失敗作なのに成功品ですよ。
4点錬金の場合は複数生成できないので、一回ずつ行う必要があるので時間がかかります。まぁ、しっかりと意識しなければ失敗しそうなので、スキルレベルの問題なのでしょう。
用意した30個分の材料を全て使い、除草剤30個を完成させました。もともと26個残っていたので56個です。まだ足りない気もしますが、材料がないのですから、しかたありません。
準備も出来たので、オールドトレントの群生地へやってきました。ここに来るのも手慣れてきたので、あの猿を先に見つけられるようになりましたよ。途中、ジャンプ中にショートジャンプをして、そこから空中ジャンプをする練習もしていたので、今回はしっかりと除草剤を投げられるはずです。
ちなみに、張り巡らされている根の様子が少し変化しています。外周部がところどころギザギザになっているので、間違いなく誰かが来ているはずです。そんなわけで私が焼いて進んだ反対側へと移動すると、こちらも外周部や私が焼いて進んだ辺りがギザギザになっていますね。どうやら反対側でこそこそしていたのがバレたようです。まぁ、バレた以上はしかたありません。目印はしっかりと残っているので、間違えてオールドトレントの射程内に足を踏み入れることはありませんね。
確認の為に射程の目印から一歩踏み込んでみたところ、すぐに葉っぱが飛んできたので慌てて回避しました。大した威力はないようですが、無駄にHPを減らす気はありませんから。
それではここまでの練習の成果を見せてあげましょう。
除草剤を手にし、エリアシールドとヒートボディを使い、ショートジャンプの魔法陣を描くのにちょうどいい時間で走れる距離まで下がります。そして、魔法陣を描くと同時に走り出し、思いっきりジャンプします。そして――。
「【ショートジャンプ】」
踏み切った場所とダークエルダートレントの中間地点の上空に出現します。立体機動のお蔭でジャンプ距離だけはかなりのものがあるので、そこから更に生い茂った葉へと近付きました。そろそろ落下し始めるので、虚空移動のお蔭で出来るようになった空中ジャンプです。空中を足場にもう一度ジャンプしました。勢いは落ちていますが、立体機動の補正が消えるわけではありません。そして、空中ジャンプをしながら除草剤を振りかぶります。動いたせいで少しバランスを崩しましたが、急に落下するようなことはありません。
落下し始める頃に除草剤を投げました。
その瞬間、ダークエルダートレントの洞が三つ開くのが見えました。どうやら投げた瞬間に何かしらの判定があるようですね。
まぁ、除草剤の行き先を見る前に私は樹皮によって撃ち落とされ、ゴロゴロと根を焼きながら転がるわけですが。
『WOOOOO』
声から察するに一応は成功のようです。
えーと、ふむ、狙った場所より少し上に命中していますね。手を離すのが早かったのか、思ったよりもSTRがあったのかのどちらかですかね。詳しくないのでわかりませんが。
今思えば次を1分以内に投げれば安全に着地出来ますが、準備を整え直してから挑戦したいので、樹皮攻撃のクールタイムが終わってしまうのは甘んじて受け入れましょう。
効果時間の終わったヒートボディと解除していたエリアシールドを掛け直し、次の挑戦です。
「【ショートジャンプ】」
空中ジャンプをする前に狙いの再確認をしましょう。あの葉よりも少し下、枝があるはずの辺りですかね。流石に外側から順々になんていうコントロールは出来ないので、葉がいっぱいある場所を狙うわけですが。
空中ジャンプをして振りかぶり、投げま――。
「ふぇ?」
『WOOOOO』
予想よりも早く洞が開き、樹皮が発射されました。持ったまま撃ち落とされるのも癪なので無理やり投げましたが、勢いが足らず、葉に届いていないのを転がりながら確認することが出来ました。
『WOOOODDDDD』
妙な声が聞こえましたね。根が襲ってきてもヒートボディで守られるので体勢を整えて確認してみると、ダークエルダートレントが妙な表情をしていました。まるで、蜜柑の皮による汁攻撃を目に受けたかのようです。狙いが外れたのは確認しましたが、どこに当たったのかは確認していませんでした。ただ、目に該当する洞からは紫と茶色の毒々しい液体が少し溢れています。見た通り、目に入ったということでしょう。
おっと、長居していてはヒートボディの効果時間が切れるので根がある場所でゆっくりしているわけには行きませんね。急いで戻りましょう。
少し離れて気が付きました。ダークエルダートレントがかなり禿げています。全体の三分の一程度ですが、葉が落ち、枝が見えていますよ。
……つまり、あの洞に投げ込むことさえ出来れば、3回で済むということですか。
うーむ、少ない回数で何とかなる方法はわかりましたが、狙ってやるのは無理ですね。それに、今回だけ向こうの反応が早かったのが気になります。今までとの違いは、狙いだけですが、葉と枝で何が違うのでしょうか。そもそも狙った時点で反応するのであれば、最初から撃たれますし……。
おっと、流石に考えて座り込んでいるだけではMPがもったいないので、オールドトレントを焼き払いながら考えることにしましょう。
そう思っていると。
ピコン!
――――System Message・所持スキルがLVMAXになりました――――
【閃き】がLV50MAXになったため、上位スキルが開放されました。
【博識】 SP5
【熟知】 SP5
【閃き】【魔力増加】がLV50MAXになったため、複合スキルが開放されました。
【魔力許容量増加】 SP5
これらのスキルが取得出来ます。
――――――――――――――――――――――――――――――――
おやおや、更に頭が良くなったようです。
詳細は取得してから見てみましょう。
まず、博識ですが、これはINT上昇のパッシブスキルですね。大元の知力上昇と同じ様なスキルということです。次に、熟知ですが、これは良いスキルですね。こちらもパッシブですが、一定時間内に同じMOBを倒し続けると、それに応じてINTが上昇し続けるそうです。ただ、違うMOBを倒したり、時間が空きすぎたりすると効果が途切れるそうなので、同じMOBを乱獲する時に効果を発揮してくれます。
最後に魔力許容量増加という長い名前のスキルですが、スキル名から想像したのとは少し違いました。ええ、パッシブではなくアクティブだからです。使用中の最大MPを増加してくれるスキルで、効果時間は長めのようなので、忘れずに維持するようにしましょう。
閃きはカンストしてもお払い箱にはならないので、これからもお世話になりますね。
そして、スキル取得のためにメニューをいじっていたのですが、ここで一つ取り忘れていたものに気が付きました。ええ、【魔法威力上昇】というスキルです。前提条件は前に本を読んだので満たしていることを思い出し、最後の条件である攻撃可能な下級魔法スキル1つのカンストを夏イベの最後に満たしたので、取得できるようになったのを完全に忘れていました。そんなわけで、SPを更に1消費し取得しました。
まったく、こんなにも大事なスキルを忘れるとは。一生の不覚です。
ついでにスキル一覧の投擲スキルについて詳しく見てみたのですが、これは構えた時点で対象に取ったと判断されるようです。なら、このスキルを持っていなければ、構えただけでは対象に取ったと判断されない可能性があります。そう考えると、今まで投げるまで攻撃されなかったことに説明が付きます。
ですが、最後だけ攻撃されたことに説明が出来ませんね。
無理にでも説明するとすれば、狙いが枝で本体と直接繋がっているからでしょうか。うーむ。まぁ、枝を狙うと構えても攻撃され、葉っぱを狙うと投げたら攻撃される。この違いさえわかればいいので、理由を気にするのはやめにしましょう。
そろそろいい時間なので、最後に一度だけ、洞を狙ってからログアウトしましょう。
準備をして走ってから――。
「【ショートジャンプ】」
空中に飛んで気が付きました。洞、どこでしょう。あれは攻撃時に出てくるので、狙いをつけてから構えることが出来ません。まぁ、いつも出てくるであろう位置を狙い、構えると、洞が2ヵ所開きました。もう1ヵ所は糸目のように閉じていますね。同じ場所は狙えないということでしょう。流石に投げるのが間に合わず、樹皮によって撃ち落とされ、手にした除草剤を落としてしまいました。ゴロゴロと転がされてから確認すると、落とした場所の根がなくなっていますね。ダークエルダートレントに特化しているとはいえ、オールドトレントにも効果はあるようです。
さて、ユニコーンを召喚してログアウトです。
Tips
錬金時のイメージ補正
錬金時に完成品のイメージをしっかりと持つことで、成功率に僅かながら補正が掛かる
また、複数の効果を持つ場合、効果の比率を変えることが出来る




