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こんばんは
やっと出来上がったので投稿を開始します。
何箇所か書き方を試験的に変えた部分と王道ポイントの変わりにやってみたいことが出来たので、詳しいことは活動報告の方に書きます。
読めばわかる。や、気にしない。という人は特に見る必要はないと思います。
4章のあらすじ
・夏イベ!
・浴衣で夏祭りの夏イベ!!
・ヤマタノオロチ的龍を倒す夏イベ!
・姫巫女と交流した夏イべ!
8月29日、夏のイベントが終わりましたが、夏仕様はまだ続いています。
午後のログインの準備が出来ました。ログイン画面で表示されているアバターの装備の中で、先の折れた三角帽やスカートに編み上げブーツ、黒い手袋、そして、アクセサリ枠の小さめのネクタイはずっとそのままですが、薄い水色のノースリーブのブラウスや、肩周りが後ろに垂れるという形で強制的に着崩す外套は夏仕様の装備なので、8月が終わったら元に戻す必要があります。
腰まである白に近い銀色の髪やきついツリ目気味の翠色の瞳は課金で変更出来ますが、する必要はありません。
それではゲームを始めましょう。
ログインした場所はいつも通りクランハウスです。手早く日課をこなし、ユニコーン探しへ向かいましょう。テレポートでエスカンデの北の方にある湖のほとりへと移動しました。ここからは歩いて移動するのですが、金属装備がダメらしいので、腰に付けている短刀をインベントリへしまいます。流石にインベントリに入っているだけでダメだと言われたらどうしようもないですね。
警戒のためにヤタと信楽を召喚します。
それでは元気に出発しましょう。
セイフティゾーン付近にはシカジカが多いはずです。まぁ、距離を取って戦えば何の問題もありませんし、東へ向かうにしたがい、遭遇するまでの間隔が空き始めました。これは遭遇しなくなるのも時間の問題ですね。
まぁ、シカジカの代わりに湖から何かが飛び出してくるようになりましたけど。
謎のMOBによる襲撃をうけましたが、すぐに回避したので、事なきを得ました。けれど妙です。湖から飛び出して放物線を描く途中で私がいた場所を通り、地面にぶつかると同時に爆発しました。その後には何も残っていないため、何だったのかわかりません。今のがMOBだっとしても攻撃していないのでスキルへ経験値が入らないのはもちろんのこと、ドロップアイテムも手に入りません。また、MOBによる攻撃だったとしても追撃がないのはおかしいです。
いろいろと考えることは出来ますが、自爆攻撃か、衝撃を与えると自爆するのか、この辺りが有力でしょう。これ以上は判断するための材料がないので、本体による直接攻撃と仮定して動きましょうかね。
しばらくすると湖のギリギリまで木が生い茂るようになりました。今までは少し開けた場所があったので、陸側に出現するMOBが切り替わる目印かもしれませんね。
仮定謎の爆発するMOBに対して何度か攻撃しようとしましたが、いちいち魔法陣を描いていると間に合わないので、膨大なMPを使って遅延発動をするか、もう一つの手段を取る必要があります。もちろん、もう一つの手段を取りますよ。
「【フラッシュボム】」
これで後は出てきたMOBに投げつけるだけです。私の前に現れてすぐに消えたその罪、しっかりと償って貰いましょう。
そんなわけで移動しながら虎視眈々と謎のMOBが出てくるのを待ちます。
その時は唐突にやってきました。湖から飛び出す音が聞こえ、フラッシュボムを盾にするように突き出しました。自分から光の玉に飛び込んだ謎のMOBは光の玉の爆発の中でいつの間にかポリゴンとなり散ったようで、結局どんな姿をしていたのかを見ることは出来ませんでした。
まぁ、リザルトウィンドウに【ボムトビギョ】という名前が表示されていますし、ドロップしたアイテムがトビウオなので、元にしている魚はトビウオなのでしょう。しかもこのトビウオ、今までの魚と違い、変化させられない素材なので、料理に使うと何かしらのバフが付く可能性があります。
でも、一つ言わなければいけません。トビウオが何故湖にいるのでしょうか。
返事が返ってくることはないと思いますが、思うだけは自由です。
その後も何度か襲撃を受けましたが、頻度がそこまで高くないので、フラッシュボムのクールタイム待ちになることはありませんでした。それにしても、複魔陣の効果が上がって同時に5個作ることは出来ても、手元に1個ある状態で2個目を作ることが出来ないとは、妙な制限ですね。ちなみに、ボム系を5個抱えることは出来ましたが、動きにくくなるので、そのまま落下させない限りは4個で使うことにしましょう。
途中の遭遇の際に足元で爆発したため、そのあおりを受けただけでHPを半分持っていかれたので、直撃したらそれだけでHPが全損するかもしれません。
ある程度進むとオーガの影がちらつき始めたので、少し進みましたが街に戻ってログアウトです。
夜のログインの時間です。いつもの様にしているとザインさんから連絡がありました。アカツキとしては毎週大きい樽2個分の不滅の水が欲しいそうです。他の細かい条件は生産クランと同じになったので、仲介をしてくれているエステルさんの元へ向かいました。
当事者でなくとも、契約スキル持ちの人が間に入ればいいそうなので、仮契約を済ませました。後はザインさんが仮契約を済ませると本契約になるそうで、私は先に納品をしました。流石に代金は本契約が終わらないと貰えませんし、仮契約の段階で素材だけを持っていくことも出来ないそうです。
不滅の水が減ってしまったので、一度クランハウスへ戻り、時雨の空の樽と交換してから補充に向かいます。
ついでですし、採集中には例の石版を眺めて言語学のスキルレベルを上げるだけなので、何の問題もありません。
しばらく石版とにらめっこをしていると、突然下側の文字が変化しました。正確には読めなかった謎の模様の一部が読めるようになりました。まぁ、単語だけなので、封印とか、復活とか、意味ありげな単語がわかるだけなので、何もわからないことにかわりはありません。言語学のスキルレベルが30になっていたので、まだまだのようです。
少し遅れましたが今日もユニコーン探しです。ヤタと信楽には引き続き警戒してもらいますが、どうやら水中からの襲撃には反応が遅れるようです。困りましたね。
湖から離れ過ぎればオーガが、湖のすぐ近くを歩いていればボムトビギョが襲ってくるという二択ですが、フラッシュボムを用意しておけば何とか対処は出来ます。事前準備で1発ずつしか用意していないので、ここは普通に詠唱してスキルレベルを上げることにしました。
何度か襲撃を受けましたが、スキルレベルの上がりが遅いので、弱い部類のMOBのようですね。
ザインさんから聞いている場所へ近付くに連れ、ボムトビギョの襲撃間隔が短くなって来た気がします。クールタイムが間に合わない程ではありませ――。
「ちょっ……」
そんなことを考えていたら2体同時に襲ってきましたよ。咄嗟にしゃがんだため、手にしていたフラッシュボムはどこかへ行ってしまいました。
ボムトビギョ は後ろの方に飛んでいって……あ。
「ふぎゃ……ごぼごぼ」
まさか爆風で吹き飛ばされて湖に放り出されるとは。
2体分の爆風を受けたのでHPが危険域を示す赤色になっています。そういえば水中で魔法を使ったことがないのですが、どうなのでしょうね。まぁ、ボムトビギョに襲われてもあれなので、さっさと上がってしまいま――。
気がつけばエスカンデの教会にいました。
水中でも爆発するとか何なんですかあれ。装備の耐久はまだなんとか大丈夫ですが、今日はもう不貞寝します。
30日、昨日は早めに不貞寝をしたので普段よりも早く起きましたが、9月になったらもう少し早く起きなければいけませんね。まぁ、午前中は基本的にゴロゴロするので忙しいためログインはしないので、宿題の確認をしておきましょう。これで何か忘れたとかなったら大変ですし。
午後になったのでログインします。
日課をこなしてから昨日進んだ場所に近付きました。もう少し進むと2体同時に襲ってくる可能性がありますね。この辺りで一度休憩しておきたいので、木に登りましょう。座っていても高い位置にいれば襲われないかも知れませんし。
「【ステアー】」
前はロックウォールを足元に出してから軽業スキルを使って枝に跳び移ったり、軽業スキルの恩恵を受けてジャンプを繰り返したりしましたが、これならゆっくり高い位置へ行けます。まぁここから跳び移ることにはかわりませんが、安全な方を選びました。
さて、ヤタと信楽と一緒に食事を取ります。
そういえば、ヤタや信楽と出会った時も木に登っていましたね。識別なのに詠唱反応したり、木を殴り倒したりと、妙なことが切っ掛けでしたが、ラクーンファイターやオーガと遭遇しない限りは木の上は安全地帯でしょう。……そうですね。そうですよ。湖の近くではありますが、流石にここまで飛んでこないはずです。なら、木を使って移動すればいいんですよ。
早速挑戦を……。
「信楽、ごめんね」
ヤタの召喚コストは最大MPだけですが、信楽の召喚コストは最大MPとSTRです。ジャンプ力に影響を与えるかもしれないので、ここは一度送還しましょう。
それでは準備も出来たので挑戦しましょう。近くの枝へ腕を思いっきり振って立ち幅跳びの様に。
「とりゃ………………ぐげぇ」
ええ、わかっていましたよ。そんな上手くいかないことはこうしてひっくり返った状態で地面に転がって痺れを感じる前からわかっていましたよ。
もう一度木に登り、HPを回復してからどうすればいいか考えます。もう少し近くに跳び移れるような枝があればいいのですが、毎度そんな都合よく枝があるとは限りません。なら、どうすればいいか……。
「あ、そっか……【ロックウォール】」
固定されている場所からなら石の壁を出すことが出来ますし、それは地面とは限りません。岩や家からも出せたんですから。木の幹からだと向き的に難しいですが、枝から横に出せばいいんですよ。そうすれば助走をつけるための場所を確保出来ますし、狙っている枝からも出せば、着地のための足場も確保出来ます。
これなら少しくらい遠くても何とかなりますね。
問題はウォール系は3枚までということです。時間経過で消えますが、消えるまで暫く待つことになります。
うーむ、いい方法だと思ったのですが。
まぁ、行けるところまで行きましょう。近い枝ならロックウォールがなくても移動出来るはずですし。
途中で氷魔法でウォール系を作ればいいのではと思いましたが、ウォール系の枚数に属性は関係ないので、やるだけ無駄ですね。
新しい移動方法を試した結果、時間はかかりましたが昨日よりも進むことが出来ました。それに不安定な場所での移動にも慣れてきたので、多少距離があっても跳び移るのに問題はありません。
もう少しで目的の場所なのですが、向かう先にある大きな木が少し揺れています。警戒はどれだけしてもし過ぎということにはならないはずなので、遠望視で確認しましょう。
ズームしてみた結果、オーガが大きな木に寄りかかって寝ていました。まだ気付かれるような距離ではありませんが、厄介ですね。オーガの索敵範囲はわかりませんが、下手に近付いて気付かれては大変です。私が乗っている木を倒されてしまいますから。
迂回も考えましたが、ここは実験をしてみましょう。今後もオーガが出現するたびに迂回していては時間がかかりますから。少しずつ高い位置の枝へ跳び移り、オーガを高い位置から見下ろすことに成功しました。もちろん、オーガが起きないようにオーガが寄りかかっている木には触れていません。
さて、索敵範囲はどうなっているんでしょうね。上空に対しては鈍いのか、それとも狭いのか、寝ているからなのか、まぁいろいろ考えられますが、間抜けな姿を晒している内に攻撃しましょう。
まずはフラッシュボムを4つ発動し、光の玉を抱えます。ええ、動きにくいので4個で使うと決めましたから。ちなみに、ここですぐに投下してしまうと、ディレイやクールタイムの問題があるので、少し待ちます。ああ、念のためにロックウォールを発動して逃げ道を……、距離を取るための足場を確保します。ふっふっふ、準備完了、それでは爆弾投下です。
光の玉が降ってきても寝ているオーガはそのまま光に包まれました。そのまま観察していると、光の中から何かが飛び出し……、あ、ちょっ。
太い腕の様な物が私が足場にしている木へと強烈な一撃を叩き込みました。その結果、バランスを崩してしまいましたが、幹を支えにして落下を防ぎます。
どうやらフラッシュボムによってダメージを受けながらも木を破壊しようとしたようです。ですが、私には足場の木を破壊された経験があります。その上、次の足場は確保してあるので慌てることはありません。
完全に倒される前に用意しておいた足場へと移動し、オーガの様子を見ます。
『GUAAAA』
おー、怒り狂っていますね。ですが、誤魔化せていませんよ。かなり弱っていますね。もう、虫の息というやつでしょうか。
近くの木々に八つ当たりしながら近付いてくるので、引導を渡して上げましょう。
「【フレイムランス】」
オーバーキルの可能性はありますが、魔法陣を5つ描き、炎の槍を5本放ちました。まっすぐ向かってくる相手に当てるのは簡単です。
前は苦労しましたが、今回は簡単に倒せました。これが成長というやつですよ。
それでは先へ進み――。
「うわわ」
また足場の木が揺らぎました。前もって用意していたロックウォールの足場は残っていますが、少し高い位置なので今から飛び乗るのは無理でしょう。今から跳び移れる枝を探しますが、木を破壊される方が早いようです。おのれ、一体いたら二体いるなんて、黒いあれですか。まったく。
もう、崩れる木から落下するのに身を任せることにしました。
今回はオーガの勝ちですよ。ええ、潔く勝ちをゆず――。
視界が暗転し、エスカンデの教会が目の前に広がりました。あのオーガめ、木から落ちている最中に攻撃するとは、まったく、酷いオーガです。
流石に2回もHPの全損したので装備の耐久が大変なことになっています。ハヅチに連絡して修理を頼んだらログアウトです。
夜のログインの時間です。装備の修理はちょっと忙しかったらしくまだ終わっていないようなので、浴衣で日課をこなしながらゴロゴロしています。
「リーゼロッテは、クエスト行ける?」
そう話しかけてきたのは炎のような髪と瞳で巫女服を身に着けている時雨です。相変わらず一部分が巫女服を押し上げていますね。ところで、どうしたのでしょうか。
「火力はないよ」
「大丈夫。街中のお使いクエストだから」
「それならいいけど、何のクエスト?」
「この後みんなで行く予定なんだけど、サウフィフでアクセサリの開放と通行証のクエストだよ」
ほうほう、アクセサリの開放ですか。つまり、もう一つ装備出来るようになるわけですね。ウェスフォーに続き2個目ですが、もしかしてノーサードやエスカンデにもあるんですかね。
「なるほど。必要なもの、ある?」
「ゴンドラ」
……目的はそれかと思いましたが、あれは漕ぎ手込みで三人乗りですし、時雨達も作っているので、放っておいたら絶対に探さない私を連れて行こうということですね。
「それじゃ、おやっさんのところ行かないとね」
「……また変な呼び方を。それじゃ、みんな揃ったら出発ね」
時雨パーティーでいないのはアイリスだけですね。
ちなみに、ハヅチは私の装備の修理中ですが、あちらも揃ったら同じクエストに行くようです。
「すまない、待たせた」
金髪で軽装の騎士風装備のアイリスがやってきました。まぁ、急ぎでもないのでお茶を出して一息ついてから出発することになりました。
サウフィフのポータルからゴンドラを預かってもらっている造船所へと向かいます。
「おやっさん、ゴンドラ使いに来たよ」
「何だ、嬢ちゃん達か。あそこにあるから、さっさと持ってけ」
そこには5艇のゴンドラがありました。ええ、5艇です、私が一つ、時雨パーティーが二つ、ハヅチパーティーが二つ。つまり、私達しかここでは作っていないようです。サウフィフには小さい造船所がいくつもあるそうなので、不思議ではありませんね。
私のゴンドラと時雨達のゴンドラを一つずつ水に浮かべます。ちなみに、私のゴンドラには時雨とモニカが乗っており、もう1艇のゴンドラにはアイリスとリッカ、そして漕ぎ手としてグリモアが乗っています。ゴンドラを動かすためには決まった場所で両手を使うので、魔法職が担当した方がいいという考えですね。
それでは所定の位置に立ち、各種ウィンドウを確認してからオールを握ります。
ちなみに、目的のクエストはゴンドラで行く場合、ゴンドラ単位でのクエストになるそうなので、パーティーを分け、従魔を召喚しています。つまり、私のゴンドラには私と時雨とモニカとヤタと信楽と尻尾の多い狐のクロスケが乗っています。グリモアの方も特徴的な笑顔をした猫のアートラータと、ファントムイーグルという種族のゲシュペンストを召喚しています。
前もって用意しておいたカゴに狸柄のクッションをしくと、信楽とクロスケが仲良く乗っかりました。うむ、いい眺めです。
「動かすから掴まってね」
「大丈夫だよ」
「いつでもいいよ」
さて、時雨とモニカの準備も出来たようなので出発です。流石に列になっての移動は操作に慣れていないため、少し間を空けて出発しました。時雨が自分のマップを可視化してナビをしてくれるので、道に迷うことはないでしょう。
最初の目的地は街の中央付近なので、ゴンドラに乗ってポータルへ戻るような形になりましたが、ゴンドラに乗って受けないといけないそうで、先にクエストを受けてからゴンドラを取りに行くわけにもいかなかったようです。
「あそこ?」
「そうそう。ちょっと狭いから気をつけてね」
今向かっているのは入り口専用となっているため、すれ違うことを考えておらず、少し狭くなっています。まぁ、私のオール捌きを持ってすれば、お茶の子さいさいですよ。……おっと、ぶつけてしまいました。少し耐久が減った気もしますが、気にしてはいけません。
「矢印の通りに進んでね」
中は停泊所のようになっており、ゴンドラを誘導するかのように矢印が浮かんでいます。フルダイブならではの道案内ですね。ゴンドラに乗ったまま受付に進むと、そこからは時雨がクエストを進めてくれるので、私は待つだけです。
「はい、わかりました。モニカ、その袋受け取って」
「あいよ」
モニカが大きな袋を受け取り、ゴンドラへと積み込みました。中身を確認する必要があるようですが、手紙や箱が入っていますね。
「それから、臨時職員としての帽子を被ってもらうよ」
赤い帽子のNPCが私達に帽子を手渡してきました。ふむ、赤い帽子に白いエンブレム、ここはそういうことですか。帽子を被ると、通知が来ました。
ピコン!
――――クエスト【手紙の配達】が開始されました――――
手紙を配達しよう【0/6】
――――――――――――――――――――――――
これで受注完了ということですね。マップに目的地が表示されていますが、随分とバラバラな場所ですねぇ。
「それじゃ、出発するけど、どこからいく?」
いつまでも受付を塞いでいるわけにも行かないので、とりあえず出発します。時雨は何かを考えていますが、出口の途中で順番を決めたようです。
「まずはここに向かうから、道順はこうだね」
おや、メニューのマップに線を引けるとは知りませんでしたね。マップを見ながら操作するのは危ないので声で道案内をしてもらいますが、前もって目的地までの道のりを確認しておくことで、道に迷う可能性を減らすことが出来ますから。
流石に自信を持って逆へ向かうようなことはしませんし。
「ところでさ、このクエストってゴンドラ必須なの?」
「そんなことはないよ。あの建物に地上から入ってクエスト受けることも出来るし」
「ただねー。徒歩だとこの袋担がないといけないんだよ。多分、リーゼロッテじゃ持てないよ。あたしでも危なかったし」
おや、危なげなく袋を受け取っていたように見えましたが、どうやらかなり重いようです。紙も数があれば重いですし、何かしらの荷物もあるようですから、確かに重そうです。
「それに、街の外れに行くんだけど、前にやった橋の修理クエストみたいに、前提のクエストが必要になるから、ゴンドラがあった方が楽なの」
「へー。なるほどね。歩かなくてもいいから楽だよね」
このゴンドラは実際に漕ぐ必要がないので、私も楽が出来ています。少しオールを捻ればスピードが出ますが、急ぐことでもありませんし、安全第一で向かいましょう。
マップを見ると、グリモア達の位置もわかりますが、私達とは違う方へ向かっているので、合流するのはクエストの最後でしょう。
一軒目の建物が見えてきました。ここは普通の家ですね。
「この光ってる手紙だね。それじゃ、あたしが行ってくるよ。郵便でーす」
光った手紙を手に取りモニカがNPCの家へ向かっていきました。すぐに受け渡しが終わったので、届け先で何かを頼まれることはないようです。
「次はここね」
「りょーかい」
「しゅっぱーつ」
さてさて二軒目は何でしょう。目的地が近付くと渡す荷物が光るので間違えることはありませんが、重い物を先にとかは出来ないようで、これも徒歩ではやりたくない要因の一つですね。
次はそこそこ幅のある水路を真っ直ぐ進むわけですが、途中でいくつか橋があり、屈まないといけない場所もありました。これ、時間帯によっては水が増えて通れなくなったりするのでしょうか。
「ねぇねぇリーゼロッテ、ゴンドラの操作上手いね」
「そう? チュートリアルやった後に少し街を回っただけだけど」
「あたしがやるとさ、たまに力んじゃって安定しないんだよ」
「なるほどね。私は人に教えられるほど仕様を理解してないけど、両手で持ってるだけでもある程度の推進力が出るから、それで進むって方法もあるよ」
「そっか。今度やってみるね」
モニカと話していると次の目的地が見えてきました。ここは……武器屋でしょうか。
「次はこの大きい箱みたい。重いから気を付けてね」
「大丈夫、大丈夫。それじゃ行ってくるよ」
とても重そうな箱をモニカは軽そうに担いで武器屋へと向かっていきました。あの箱……、取り出した瞬間に大きくなった気がします。とはいえ、無事にここまでこれたのですから、気の所為でしょう。後は手紙やら小包やらだけですし、簡単に終わりそうですね。
残りの4ヵ所でも特に問題は発生しませんでした。ええ、荷物を奪いに来る盗賊とかを期待していたのですが、本当に何も起きませんでした。クエストの方も郵便局に戻るという内容に変化したので、ただ水路を使ってあちらこちらに行っただけでしたね。
最後に帽子を返し、報酬として東西にある水門の通行証を貰い、アクセサリスロットを一つ開放しました。途中でハヅチから装備が届いたのですが、クエスト中で、帽子を被ったままにする必要があったので、まだ受け取っていませんでした。まぁ、クエストも終わったので装備をいつもの夏用に戻しましょう。
「アクセサリかー。グリモアが魔法書のスキルレベルを上げればアクセサリ扱いで装備出来るって言ってたし、このまま空けとこうかな」
「何か作っといて、アクセサリになったら魔法書と切り替えればいいんじゃないの?」
「まぁ、そうなんだけどね」
別の問題として、何を作ってもらうかという点もあるのですよ。ハヅチに任せておけばいいものを作ってくれるとは思いますが。
「それじゃあ、悪いけどあたしは落ちるね。今日は早く寝ないといけないし」
「おつかれー」
「お疲れ様、また今度ね」
そういってモニカはログアウトしていきました。てっきり合流してから何かすると思っていたのですが、夏休みも終わる直前なので、みんな忙しいようです。
「時雨はどうするの?」
「うーん、特に決めてないけど、解散なら、鍛冶のスキルレベル上げかな。イベントの報酬使って装備作ろうと思ってるし。リーゼロッテは?」
「何もないならユニコーン探し」
「あー、ザインさんから情報もらってたよね。でも、あの辺りってオーガ出るけど、大丈夫なの?」
「一応は倒せるよ。油断して木から落ちてる時にやられたけど」
「……木から落ちるって妙なことを」
まぁ、普通の魔法使いはまず木に登りませんよね。そんな話をしながらも、クランチャットで確認した結果、解散になったので私は一人でユニコーン探しに向かうことにしました。アクセサリはハヅチに任せたので、いいようにしてくれるでしょう。
やってきました湖のほとりです。ここはまだセイフティゾーンなので、信楽を送還してから、すぐに外へ出ます。
まぁ、木に登ってロックウォールを使いながらの移動には慣れてきているので、今更落ちることはありません。ええ、調子に乗って遠くの木へ跳び移ろうとしない限りは。
そんなわけで何度か落下ダメージを受けながら目的の場所に近付くことが出来ました。この辺りからはオーガをよく見かけるので、注意しないといけませんね。ヤタも警戒してくれていますが、どうにもオーガに対しては反応が鈍いんですよね。見た目からして脳筋なので、隠蔽系のスキルレベルが高いとは思えませんし。うーむ。
そうやって警戒しながら移動していると、一つ通知が来ました。
ピコン!
――――System Message・アーツを習得しました―――――――――
【ウォール・キャンセル】を習得しました。
―――――――――――――――――――――――――――――
おや、何でしょうか。名前からして効果は想像出来ますが。……ふむふむ、やはりですね。発動しているウォール系をキャンセル出来るようです。これはスキルレベルのない【魔術】のアーツという扱いのようで、即時発動・クールタイム・ディレイなしとのことです。これが魔法だったら強化解除系の魔法陣に利用出来ると思ったのですが、そうは上手くいかないようです。
これのおかげで移動速度が上がりました。何せ、今までは場合によってはロックウォールの消滅待ちをしていましたから。
途中、オーガと遭遇しましたが、倒し方がわかっていれば苦戦することはありません。それに、倒した後にすぐに移動すれば、何故かやられることもなくなるはずですから。
とうとうやってきました、目的の場所……のはずです。湖のほとりに一坪くらいの開けた場所がありました。ここまで不自然になにもないとはかなり怪しいですね。足を踏み入れる前に短刀がしまってあることを確認し、準備完了です。それではユニコーンとご対面といきましょう。
………………
…………
……
はて、どれだけ待ったのでしょうか。まったく出てきませんね。ザインさん曰く、何度か遭遇しているそうなので、ここではないということでしょうか。とりあえず、この場のスクリーンショットを取って、ザインさんに確認してみましょう。返事には時間がかかるそうなので、今日はログアウトです。
5章開始時の所持スキルです。
プレイヤー名:リーゼロッテ
基本スキル
【棒LV30MAX】【剣LV30MAX】【武器防御LV5】
【格闘LV30MAX】【銃LV30MAX】
【火魔法LV30MAX】【水魔法LV30MAX】【土魔法LV30MAX】【風魔法LV30MAX】
【光魔法LV30MAX】【闇魔法LV30MAX】
【魔法陣LV30MAX】【魔術書LV30MAX】【詠唱短縮LV30MAX】
【錬金LV30MAX】【調合LV30MAX】【料理LV30MAX】
【言語LV30MAX】【鑑定LV30MAX】
【気功操作LV20】【魔力操作LV30MAX】【再精LV30MAX】
【発見LV30MAX】【跳躍LV30LVMAX】
【索敵LV30MAX】【隠蔽LV30MAX】【気配察知LV20】
【毒耐性LV3】【麻痺耐性LV1】【沈黙耐性LV30MAX】
【睡眠耐性LV1】【幻覚耐性LV1】【病耐性LV10】
【知力上昇LV30MAX】【鷹の目LV30MAX】【梟の目LV30MAX】
【調教LV30MAX】
下級スキル
【杖LV50MAX】【体術LV1】【闘技LV1】【魔銃LV1】【片手剣LV1】
【治癒魔法LV46】【付与魔法LV50MAX】
【炎魔法LV48】【氷魔法LV48】【地魔法LV48】
【嵐魔法LV48】【雷魔法LV48】【鉄魔法LV48】
【無魔法LV48】【聖魔法LV50MAX】【冥魔法LV45】【空間魔法LV50MAX】
【魔力陣LV50MAX】【魔法書LV10】【魔力制御LV50MAX】【詠唱省略LV19】
【錬金術LV15】【調薬LV25】【料理人LV25】
【言語学LV29】【識別LV30】【魔力増加LV50MAX】
【看破LV30】【魔力視LV45】【軽業LV45】
【探索LV45】【隠密LV45】
【閃きLV48】【魔力貯蔵LV23】
【遠望視LV5】【魔眼LV3】【霊視LV1】【憑依眼LV6】
【召喚LV1】
中級スキル
【杖術LV45】
【強化付与LV7】【弱体付与LV5】
【時空魔法LV3】【神聖魔法LV1】【閃光魔法LV1】
【魔道陣LV45】【魔法操作LV45】
称号スキル
【探索魔法】【魔術】【魔法】【筆写】
【残りSP279】
Tips
称号系スキル【魔術】
スキルレベルのないスキル
基本的にステータス補正のみだが、複数のスキルに関係するアーツを覚えることがある
例【ウォール・キャンセル】 取得条件……ウォール系の魔法の使用回数累計100回
なお、ゲーム開始一週間以内に発見されている




