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Hidden Talent Online  作者: ナート
4章 夏イベ!
72/148

4-18その2

 Hidden Talent Offline Festivalでミニゲームコーナーでスタンプラリーのキーワードを入手したので、次の目的地を決める必要があります。私は絶対に寄りたい場所とかはないので、葵に任せますが。


「次は?」

「次に混むのは物販だけど、買うもんないだろ」

「ないよ」

「ないね」

「なら、プレイヤーの展示コーナー行こうぜ。面白いもんあるかも知れねーし」


 そんなわけでプレイヤーによる展示コーナーへと向かいました。何でも、簡単な設備を貸してくれるので、ゲーム内で撮った動画を流したり、自分の考えたオリジナルコンボや仕様を研究した解説本やらがあり、自分で作ったものなら有料で配布もできるそうです。

 スキルを使って戦闘シーンを演出している映画のような物や、ゲーム内で生産をメインでやっている人がゲーム内と同じ装備を身に着けていたりと、ゲームとして楽しむ以外の楽しみ方を見出している人も多いようですね。これはこれで楽しそうです。

 ちなみに、何ヵ所かは運営側の定めたルールに抵触しているとかで、出店停止になっていました。果たして何を作ったのやら。

 時間が経つに連れ人が増えてきましたね。まぁ、どんどん入場してくるのですから、当然のことですね。

 この辺りのスタンプラリーの看板にはエスカンデと書かれていました。

 次に見に行ったのは、例の3Dプリンタによるフィギュア製作コーナーです。実際にプリンタを持ち込んでその場で作っているようですが、大半は事前に作ってきたようです。まぁ、段々と出来上がっていく様子を見るのも楽しいのでいいですが、流石に時間がかかりますよね。

 運営が用意したサンプルは女神風のキャラだったので、これもティエラなのでしょう。

 ちなみに、ここのスタンプラリーはノーサードでした。


「次行くか」

「どこ行くんだっけ?」

「確か、フルダイブマシンの展示もしてるから、それ見たいって言ってたよね」

「ああ、確実に一般家庭の個人じゃ持てないのもあるけど、見るだけならタダだからな」


 高額な業務用とかも展示しているということですか。

 葵の案内でフルダイブマシンの展示コーナーへと到着しました。HTOと同時に発表された私達の使っている新型を含めた歴代のフルダイブマシンに、ゲームセンターやネカフェなどに導入されている業務用もありますね。


「おや、早速見学かな?」

「えっと、まぁ、見に来ただけですけど」

「それじゃあ説明しよう」


 白衣を着た開発者風の人が早口で捲し立て始めました。何かの数値がどうたらこうたら言っていますが、何のことやら。まぁ、フルダイブ中の感度やら通信速度の話らしいですね。


「そういえば君達、Hidden Talent Onlineをやっているなら、不思議に思わなかったかい? 最初に軽い運動をして自分の体をスキャンしたとはいえ、基本的に頭にかぶる機械だ。なのに、あそこまで正確に再現出来たことを」


 うーん、私は気にしていませんでしたね。あれはそういうものとしか認識していませんでしたから。その辺りは葵も伊織も同意見のようです。


「あはは。まぁ聞いてってよ。脳には自分の体の詳細なデータが有り、それを読み取って――」


 また語りだしましたね。よくわかりませんが、自分の体は自分が一番知っているということでしょうかね。

 ちなみに、HTOでアバターをいじるのに制限がある理由は、今の精度で自分と大きく違う体と本来の体を交互に認識した時の臨床データ不足だという理由らしいです。


「さて、小難しい話はこのくらいにしようか。次はフルダイブマシンの実機を紹介しよう」


 今度は現物がある話なので、楽しめそうですね。


「フルダイブマシンには大きく分けて3種類、業務用のチェアタイプとベッドタイプ、一般用のヘルメットタイプがあるんだけど、業務用にもいろいろと種類があるんだよ」


 外見の違いがわからないコクーンとエッグに、外装がないだけにしか見えないチェア、チェアタイプのチェアってネコ科ネコ目みたいな話ですかね。

 コクーンとエッグが密閉型で、チェアが開放型なのですが、専門的な話はちんぷんかんぷんですよ。けれど、葵は楽しそうに聞いています。男の子にとっては、楽しい話なのでしょう。


「伊織、わかる?」

「わかんないけど、葵が楽しそうだからいいんじゃない?」

「それもそっか」


 特にここと言う場所もありませんし、今回は葵の好きにさせています。


「ベッドタイプは開放型のベッドと密閉型のカプセルがあるんだ。そして、あそこにあるのが、密閉型専用追加パーツ、ルームだよ。フルダイブ時に専用の液体で密閉した内側を満たし、その排出を行う設備だ」


 よくわからない液体ですが、ぼそっとLとかCとか後何か言っていましたが、何でしょうね。とりあえず、フルダイブマシンとのやり取りを円滑にするためのものだそうです。


「ちなみに、あれは何ですか?」


 そう葵が聞いたのは、透明な箱に入れられているチップのようなものと、それが繋がった謎のコードです。人の頭の模型に埋め込まれているのですが、他の機械と比べて小さいので目立ちませんね。


「あれはインプラントチップと神経系接続端子だよ。フルダイブはまだ無理だけど、通信規格しだいでARやVRがこれだけで楽しめるんだ」


 ほう、結構前から噂だけは聞いたことがありますが、実物を見るのは初めてです。そもそも、付けている人がいても、見るのは無理ですから。

 ちなみに、私達がテストしていますという文字の下に老夫婦の写真が飾ってあります。まるで、スーパーで生産者の顔を飾っているみたいですね。


「ああ、この山田京志郎さんと山田かよさんは、機械化農業の先駆者でね。ここにある機械のテストを引き受けてくれている人達なんだよ。流石にインプラントチップは手術が必要だから埋め込んでるのは息子さんの方だけどね」


 本当に生産者でした。流石に予想外ですよ。

 葵が満足するまで説明を聞き、スタンプラリーでキーワードのウェスフォーを入手しました。残るは今コラボしているファミリーレストランのゲーム内でも食べられるメニューだけが売っているごはん処です。値上げはしていないようですが、ゲーム内に店を構えるタイプのコラボなので、ここで食べる必要もなさそうですね。

 そこで、キーワードがサウフィフということだけ確認し、メインステージへ向かうことにしました。今は対人イベントをやっていますが、午後からはトークショーもあるそうなので、見るための場所が取れればいいのですが。


「おーい、御手洗」


 はて、まったく聞き覚えのない声ですね。とりあえず、振り向いてみましたが、呼ばれたのは私ではありませんでした。


「おお、お前ら」

「よう、偶然だな」


 偶然であったこの二人は葵のクラスメイトのようですね。通りで聞き覚えのない声のはずです。まぁ、覚えている声なんてほぼいませんが。


「なあ御手洗、東波さんはわかるんだが、そっちは?」


 伊織は葵と登校していますから、顔を知っているのでしょう。さて、どうしましょうか。葵を困らせるにしても、同じことを続けていてはつまらないので、新しいのを考えなければいけませんし。


「ああ、前に話した気もするが、俺の双子の姉の茜だ」


 おっと、悩んでいる間に紹介されてしまいました。なら、いつものあれですね。


「どうも、双子の姉の御手洗茜です。いつも弟がお世話になっております」


 ここでしっかりとした姉ぶりを見せ付けるために丁寧にお辞儀をします。こういうことをされると、気恥ずかしくなるものですから。


「あ、えっと、ご丁寧にどうも」

「それじゃあ葵、私達は先に行ってようか?」


 メインステージを見に行くつもりでしたが、葵がクラスメイトと行動するのなら、好きにさせるつもりです。まぁ、伊織をほっとくわけには行かないと言っていたので、どうなるかはわかりませんが。


「御手洗は何処行くつもりなんだ? 後で他の奴らと合流するんだが、どうだ? お二人もぜひ」

「あー、どうする?」


 葵のやつ、私と伊織に話を振ってきましたよ。つまり、ここで私に悪者になれということですね。しかたありません、きっちりと断ってあげましょう。


「わ――」

「ちょっとくらいならいいよ」


 おっと、伊織に先を越されてしまいました。


「本当ですか! それじゃあ、行きましょう」


 どうやら私達の気が変わらないうちにほかのクラスメイトと合流してしまいたいようです。まぁ、伊織がいいのなら、いいことにしておきましょう。

 葵の両脇にいた私達ですが、葵のクラスメイトなので、三人で並ばせて後ろから付いて行く形にしました。合流するとのことでしたが、どこで合流するんですかね。


「あの二人、知ってるの?」

「顔を合わせたことくらいならあるよ。葵と登校時間が同じだから」


 葵と親しいのであれば、無碍にするのもよくないですね。私のことは気にせず合流すると言えばよかったものを。


「あ、ちなみに、あの二人は進藤君と高橋君だよ」

「そ」


 目的地は私達が素通りしたごはん処付近でした。どうやら、ここで遅めのお昼を食べるつもりだったようです。

 ……すごい混んでますね。別にゲーム内で使えるシリアルコードなどが貰えるわけではないようですが、食べてみたいものなのでしょうか。

「お待たせ。後、御手洗連れて来たぞ」


 葵のクラスメイトが後二人いました。全部で男子三人に女子一人ですね。これで全員なら、葵を入れて五人ですか。私達のクラスの方が少し多かった気もしますが、全員が来ているわけではないでしょう。

 お互いに自己紹介した後、葵のクラスメイトの女の子がすっと近付いてきました。


「あの、池……他のクラスメイトは来てないんですか?」

「知らない」

「今日の話はしてないから、わからないかな」


 まぁ、女子が一人というのも寂しいのでしょう。うちのクラスで何人がHTOをやっているかは知らないので力にはなれませんね。


「あ、さっき連絡来て、二人のクラスメイトも合流するって言ってましたよ」


 こちらの会話に気付いた葵のクラスメイトから求めていない情報がもたらされました。まぁ、そういうことらしいです。

 その後、簡単な受け答えをしていると。


「お待たせ、二人も終業式ぶりだね」


 話の流れから察するに私達のクラスメイトのようですが、はて、制服を着ていないとわかりませんね。いえ、着ていてもわからない自信があります。とりあえず、九人ってずいぶん大所帯ですね。何をするにも邪魔そうですよ。

 とりあえず人数が増えたので端っこによりましたが、どうしましょう。


「御手洗さん、ここで会えるなんて思ってなかったよ」

「……そ」


 はて、誰でしょう。何人かは顔と名前を一致させましたが、あれは制服も込みなので、私服では無理です、大人しく諦めましょう。


「ちょっと御手洗、久しぶりじゃん」


 いきなり抱きついてきたこの人は何ですかね。この明るい髪の縦ロール、見覚えがないともいい切れませんが、どこにでもいるといえばいますよね。


「えっと……、何?」

「あんたは……まったく。ちょっと来て」


 それだけ言うと私だけゆるふわ縦ロールの人に連行されてしまいました。


「まったく、7月に相談したの覚えてないの?」

「あー、なんかあったかも。それで?」

「いや、お礼を直接言っとこうと思って。あんたのお陰で晴人と一緒にゲーム出来るようになったから」

「そう。それはどういたしまして」


 相手がお礼を言いたいというのであれば、大人しく言われておきましょう。


「それと、あんたのキャラ名、誰にも言ってないから。こっちに加わらないってことは、その方がいいんでしょ」

「私はソロ気質だから」


 ゲームに関しては、たまにならパーティーもいいですが、行き先を誰かと相談するよりも、自分勝手に決めたいですから。


「御手洗さんに薫、どうしたんだ?」

「女同士の会話だから、晴人は加わっちゃだめ」

「そ、そう。いつの間にか仲良くなったんだね」


 いつの間に仲良くなったのかはしりませんが、こうして面倒事を防いでくれるのは助かりますね。新学期に制服姿で会ったら、ちゃんと名前と顔が一致しているか確認しましょう。


「ところでさ、御手洗さん達はこの後どうするの? 僕達はミニゲームに並ぶけど」

「そこはもう行った。後はメインステージの観覧?」

「なら、僕も――」

「晴人、さ、行こー」


 さて、私も伊織の元へ行きましょう。


「おかえり」

「ただいま。それで、どうする?」

「んー、メインステージの方は人でいっぱいらしいから、メイン館の外に行こうかって話してたの」

「外の飲食店エリアの街頭モニターで中継してるから、どこかで何か買って食べながら見ようと思ってな」

「それもいいね。別に中で見なきゃいけないわけじゃないし」


 そんなわけで、既にバラバラになりつつあるこの一団に別れを告げ、メイン館から外へ出る前にスタンプラリーの引き換えを行います。何が貰えるのかは知りませんが、列の終わりから引換所が見える内に並んでしまいましょう。


「何が貰えるんだろね」

「調べればわかると思うぞ」

「もう交換した人もいるからね」

「うーん、もう少しで見えそうなんだよね」


 交換所には貰えるものが描かれていますが、ちょっと遠いのと角度が悪いですね。


「茜、さっきのシリアル、ゲーム内でティエラのぬいぐるみが貰えるみたいだよ。何の効果もないインテリアだけど」


 おや、さっきのはそんなのでしたか。では、公式ホームページにログインしてシリアルコードを打ち込んでしまいましょう。これで、次のログイン時にアイテムが貰えるはずです。

 交換所が近付いてきたので、目を凝らしてみると見えてきました。どうやら。


「シリアルコードだね」

「貰えるのはランダムか」

「素材かポーションね。そこまでいいのじゃないから、完全におまけだよね」


 素材によってはどちらかに押し付けてしまいましょう。ポーションなら、自分で使えばいいですし。

 台紙と交換でシリアルコードが書いてあるカードを貰いました。めくる場所が2ヵ所あるので、景品の方だけめくってみましょう。


「ポーション素材の詰め合わせ」

「俺は鉱石だ」

「私は布だったよ」


 私はそのままシリアルコードを打ち込みましたが葵と伊織は交換してから打ち込んでいます。まぁ、中身的にそうなりますよね。

 この後、私達はメイン館から外へ出ました。このタウンサイトは街一つがその敷地です。つまり、かなり広いため、歩いて移動したらかなりの時間がかかります。けれど、ここにしかない移動方法があります。

 中央にはない中央制御塔という場所で一括管理している自動運転車です。タウンサイトはこの辺りの全てが敷地内なので、一見公道に見える道路も実は私道になっています。そのため、様々な実験にも使えるそうです。全ての車がAIによって制御されているので、乗っているだけでよく、何年も実験しているので、安全性もバッチリです。しかも、ここでやっているイベント参加者は無料で乗れるので、とても便利です。





 飲食店のエリアに移動し、いろいろと買い込んでから街頭モニターが見えるベンチを確保しました。モニター自体はあちらこちらにあるので、人も程よく分散していますね。それに、近くには飲み物を買える場所もあるので、水分補給の問題もありません。

 さて、街頭モニターでは、ついさっきまで対人イベントで盛り上がっていましたが、今はメインステージのセットを交換し、トークショーが始まりました。


『Hidden Talent Offline Festivalにお越しの皆さん、広報担当の椋枝(むくえだ)広斗(ひろと)です。今日はイベントを楽しんでくれましたか?』


 司会の人が手にしていたマイクを観客に向けると、バラバラな歓声が聞こえました。後、この映像、スマホからコメントを流せるようです。


『はい、ありがとうございます。それでは、挨拶が長引く前にもう一人紹介しましょう。前に生放送をした開発責任者の(にのまえ)太郎(たろう)です』


 大した特徴のないチャラい司会の人に紹介されて出てきたのは、白衣を纏った渋い叔父様です。この人は覚えていますよ。確かに前の生放送に出ていましたから。


『こんにちは。一太郎です。これからのトークショーの内容は一切公開していませんでしたが、主に二つあります』


 そう言うとステージ上のモニターが切り替わり、トークショーの予定が表示されました。まずひとつは夏イベに関して。次は、今後にプレイヤーが訪れるであろう街についてだそうです。


『まず、今やっているイベント、ナツエドの夏祭りですが、明日からは夏祭りの本番が始まります。それと同時に、いくつかのクエストが始まるので、是非参加してください』

『一さん、もう少し詳しくお願いしますよ』

『しかたないですね。では……、多くのプレイヤーはどこかの陣営に所属していると思いますが、陣営毎に異なる目的を持ってそのクエストに挑みます。詳しくは話せませんが、そのクエストの結果によっては、最終日に行われる最後のクエストが大きく変化します』


 確か、龍の復活がどうのこうのというイベントなので、その龍の強さが変わるんですかね。


『後はそうですね……。そのクエストの前に、とあるクエストを最初にクリアできた人は、全員参加が可能な最後のクエストで活躍出来ると思いますよ』


 おや? 一人しか手に入れられないアイテムやらスキルやらはないと聞いていたのですが、イベントにそんなものを実装してしまったんですかね?


「ユニーク系かな?」

「いや、違うとは思うが、なんだろうな」

『もしかして、上からの圧力でユニーク系でも追加したんですか?』

『いえ、圧力なんてありませんでしたよ。それに、クエストをプレイヤー有利にするための切っ掛けを手に入れることが出来るだけです』


 一応ボス戦だと思っているのでイベント限定の全体バフか、何かのギミックをいじる権利とかですかね? まぁ、目立ちそうなので、目立ちたい人達に任せましょう。

 この後はしばらくイベントに関する質疑応答がありましたが、誰が花粉症なのかという話題に対し、全員だと答えていました。どうやら、あのMOBは開発陣の総意だったようです。


『えー、イベントで入手できる大判は、明日から使えるようになります。ただ、終了後でないと交換出来ないものもあるので、注意してください』


 チャラい司会の人も真面目に質問に答えていますが、そのたびに渋い叔父様からの注釈が入っています。


『報酬の素材をメインに使った物に限り、必要大判数をある程度上乗せして、報酬リストに乗せることも出来ます。ただ、上乗せ量はこちらで決めさせてもらいます』


 なるほど。腕に自身のある生産者なら、いい装備を作って他のプレイヤーに大判で売ることが出来るんですね。イベント報酬に高ランク工房があって、大判が足らない人がいたら、力を入れて取り組みそうですね。


『さて、それでは次のお題ですね』

『ええ、まずはこちらをどうぞ』


 画面が切り替わり、何かのPVらしき物が流れ始めました。

 まずは緑溢れながらも開けた場所にある街が出てきました。街の中には杖を持ったNPCが多く、色とりどりの塔があります。どんどんと場面が切り替わっていきますが、一つ、共通している点がありました。

 最後に、魔法都市【マギスト】と表示されました。やはり、切り替わっていた場面の数々に登場していたのは魔法使いのようです。この街はエスカンデよりも東にあるそうですが、必ず訪れなければいけませんね。ええ、絶対にですよ。

 次は雪山にある洞窟から中に入り、巨大な空洞に作られた街が現れました。所々に明かりが焚かれ、ドロドロに溶かされた鉄を型に注いでいる映像が流れています。

 最後に街の全体像と共に、技術都市【テクザン】と表示されました。これはノーサードの北にある街のようですが、優先度はそこまで高くないですね。何か面白いものが思い付いたら入り浸るかもしれませんが、やはり、マギストが優先ですよ。

 三番目の映像は、砂漠ですね。砂漠を進み、どこから入るのかはわかりませんが、地面の下へと潜りました。そして、地上からの光が降り注ぐ穴のある巨大な空間に古びた街が現れました。全体的に砂漠の街であるウェスフォーに似ていますが、よくわからない街です。

 そして、天井の穴から照らされている街と共に、古代都市【エンスト】と表示されました。流石に別のことを連想させるせいでコメントが荒ぶっていますが、狙っているんですかね。

 次は最後の街のはずです。大きな川を下っていき、港町へとたどり着きました。巨大な船を作っている光景や、海へと出発する映像が流れ、船で行ける島があるかのように思わせます。ここにはおやっさんが言っていたゴンドラを持ち運ぶための技術もあると思っているのですが、すぐに見つかるでしょうか。

 今まで同様、街の全体映像と共に、港湾都市【ハーバス】と表示されました。

 そして、四個の街の映像と名前が映った後、ステージへと映像が戻りました。


『みなさん、これがそれぞれの街の先にある街です。この街には今まで出来なかったことを可能にする施設や、より専門的な知識を持ったNPCがいます。それぞれの街の力を借りることで、より多くのことが出来るようになるでしょう』

『いやー、楽しみですね。ちなみに、どうやって行くんですか?』

『基本的にはフィールドを進んでもらう必要があります。ただ、何らかの条件があったりするので、みなさんで探してみてください』

『そういえば、ノーサードが開放される前に西の中間ポータルが開放された時は焦ってましたね』

『あれは驚きましたよ。モンスターに襲われない道を知るためのクエストが途中だったので、ゆっくり調整してたんですが、まさか強引に突破されるなんて思いませんでしたから』


 何とも懐かしい話です。私は知りませんが、ちゃんと狙撃されない道があるので、今では安全に進むことが出来るそうです。


「茜は魔法都市だよな」

「もちろん」

「私は技術都市かな」


 伊織は鍛冶スキルを持っているので、関係のありそうな技術都市に興味があるようです。


「俺は港湾都市だ」

「なんで?」

「船で東に行けば今回のイベントみたいな和風の街があってもおかしくないだろ」


 なるほど。忍法スキルでも探す気なのでしょう。


「あれ? 葵って物理系の忍者だよね」

「魔法は牽制用だからな」

「言ってなかったけど、スクロールって作るときにキーワード変えられるよ」


 設定で使う魔法の名前にしていますが、作るときに変えられるようになっていましたね。


「何で黙ってた……」

「聞かれなかったし。後、忘れてた」


 葵が考えていますね。これはRPG特有の魔法型忍者が生まれるのでしょうか。


「まぁ、忍術スキルがあったらだな」


 そんなスキルがあれば、高確率で前提に魔法の基本スキルを要求しますよね。確か、闇魔法を持っているので、探せないことはありませんね。


「でもさ、マギストは東だから、あの狼のいる森を越えるんだよね」

「情報が出たらクラン単位での移動もありだろ」

「そうだよね。茜は一人で突破しそうだけど」

「純粋な後衛だけじゃ無理だよ」


 エドッグやらバクマツケンやらで犬系のMOBには慣れましたが、複数体を相手には出来ません。一人で行く場合、何か別の方法を考える必要があります。

 今は新しい街に関する映像とそれに対するコメントへの無難な受け答えも終わり、イベント会場でのイベンタビュー映像を流しています。私達は断りましたが、結構受ける人もいるんですね。


『そして、おまたせしました。9月にはフルダイブマシンの供給量が増えるそうなので、それに合わせて新規登録制限を解除します。これからはいつでもゲームを始められるようになるので、ぜひ、お友達を誘ってみてください』


 おお、とうとうですか。誘うような知り合いはいませんが、街が賑わうのはいいことなのでしょう。


『他には何かないんですか? もうちょっと教えてくださいよ』

『他ですか。今言えることですと、まだ調整をしていますが、希望の多かった痛覚制限の解除ですかね。今は痺れに変換していますが、設定をいじれば痛覚として感じることが出来ます。調節も可能ですし、動きに影響のないように調整するので、好きな方を選んでください』


 痛覚制限の解除ですか。項目が追加されても基本的にはOFFになっており、解除には年齢制限もあるそうです。まぁ、私が弄ることはありません。

 他にも、一部の取得者のいない武器スキルをイベントで取れるようにするらしいのですが、条件が厳しいようです。特定の条件を満たすか、極低確率で取れるかもしれないと口を滑らせていました。

 対象のスキルは、不人気で取得者がいないのではなく、条件が満たせなくて取得者がいないスキルのようです。


『それでは、HiddenTalentBattleOfflineの上位入賞者へのインタビューの時間です』


 ステージイベントを行っている舞台に何かが運ばれてきました。映像なので詳しくはわかりませんが、大きめのタイヤくらいの大きさですね。それが起動すると、おや、これは凄い。


『まずは、優勝者のザインさんです』


 機械一つに付き一人の立体映像が表示されました。しかも、ちゃんと動いていますよ。あ、喋った。

 他にも上位入賞者が現れましたが、どうやらトーナメント枠の参加者で占められているようです。流石に、主人公と呼ばれるような人は現れなかったようです。


「それじゃ、帰るか」

「そだね」

「後はインタビューだけみたいだね」


 私達は対人を主体にはしていないので、新情報がなければこのまま残る理由はありません。イベント自体は結構楽しめたので、この気分のまま帰りましょう。





 今日は昨日とは逆に伊織の家に泊まることになりました。たまには畳に布団を敷くのもいいものです。疲れていたせいもあり、ログインせずに寝ることにしました。

 何故か、起きた時には昨日の朝と同じ体勢でしたが、今回は揉みしだいたので、よしとしましょう

機械化農業

フルダイブ技術の応用で人型耕作機体【耕作君】や複合耕作機の操作をしている。

息子の山田辰夫はインプラントチップと神経系接続端子を埋め込んでおり、その実験も同時に行っている。

山田辰夫・紅葉夫妻は娘の独特の世界観に基いた言葉にはじめは苦労していたが、今では言葉に込められた意味すら理解している。

 娘「我は晩餐の宴を心待ちにしている」

 母(お腹空いた、今日の晩ごはん何?)

主人公(お腹空いた)


 とか考えたけど脇道どころの話じゃないことに気がついてフルダイブ制通信学校だけ考えてやめました。

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