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Hidden Talent Online  作者: ナート
4章 夏イベ!
57/148

4-7

 日曜日の夜、日課をこなした後、ハヅチからの事情聴取を受けました。何度でも答えますが、他の答えはないので、後は自分達で何とかしてもらいましょう。

 さて、一つやろうと思っていながらも手を付けていないことを思い出したので、センファストへ行こうとしたら、時雨が立ちふさがりました。


「はいこれ」

「ん? 何?」


 時雨が手にしているのはマル秘メモです。データのやり取りをするのに使うのですが、中身はなんでしょう。識別すればタイトルが見えるのですが、調合レシピと表示されました。


「ポーションの基本レシピ……、薬草を効果が高くなるようにすりつぶす方法だよ。普通の道具で1%効果が高くなるの」


 おや。


「レシピ売る人いたの?」

「生産クランで簡単なのは売ってるよ。まぁ、ちょっと値は張るけどね」

「何でわざわざ?」


 そんなものを渡される理由に心当たりがありませんし、簡単なのでも値は張るという以上、私の手持ちで払えるのかわかりません。


「いろいろと情報貰ってるから、情報料の一部ってことで貰ってよ。それに、リーゼロッテの作るポーションが良くなれば私達も助かるし」

「そう。じゃあ、遠慮なく。ありがとね」


 ただより高い物はないといいますし、情報料の一部だとしても、今の私からすればただで貰えるので、つまり、高い物です。

 まぁ、冗談は置いといて、ちょうどいいので素直に貰います。

 時雨からありがたく受け取ったマル秘メモを使うと、調薬のレシピ再現と工程短縮に新しく登録されました。おや、いつの間にかどういう工程なのか表示されるようになっていますね。ふむふむ、あー、こんな面倒なことをやって……、ふむ、私の予想が外れましたね。あ、システムの方が私の手で実際に再現してくれる機能まで追加されてますよ。長い間レシピ再現しかしていなかったので気付きませんでした。


「あ、明日出かけるでしょ。私も行くから、連絡するね」

「りょーかい」


 明日は月曜なので散歩をする日です。なら、シェリスさんとハヅチに連絡して装備の耐久を回復してもらいましょう。

 ハヅチには後でクランチャットで伝えるとして、シェリスさんには代金の確認もしなければいけないので、メッセージを送りました。後は返事を待つだけです。





 そんなわけで貰ったレシピを実際に試すためにセンファストへとやってきました。


「オババオババー」

「何じゃ小娘、騒がしいのう」

「調薬で試したいことあるから奥貸して」

「ふん、まぁ、人様のマネをするのも経験じゃ。好きにするんじゃな」


 穏便に奥を借りることが出来ましたが、前に少しくらい自分で調べろと言われたので、好感度が下がった可能性がありますね。まぁ、これは私の本職ではないので気にしないでおきましょう。

 まずは実際に一つ作ってみましょう。何が出来るかはわかっていますが、試してみたいですから。

 ゴリゴリゴリゴリ

 相変わらず謎のメーターがありましたが、レシピ再現のオートモードなので、動かしていないはずなのに勝手に手が動く奇妙な体験をしました。

 その結果。


――――――――――――――――

【初心者用ポーション】 

 初心者用のポーション

 HPを1分かけて11%回復

――――――――――――――――


 おお、やはり少し性能がよくなっています。それにしても、先端の色が薄い部分を取り除いて作るとは、思わぬ盲点です。それでは次です。オートモードで作りながらMPを注ぎ込めれば成功です。

 それでは実験開始です。

 ゴリゴリゴリゴリ

 流し込めー。流れ込めー。おや、案外いけますね。自分ですり潰しながら流すときよりも簡単な気がします。MPを流し込むのだけに意識を集中できるからでしょうか。

 その結果。


――――――――――――――――

【初心者用ポーション】 

 初心者用のポーション

 HPを1分かけて11%回復

 MPを1分かけて3%回復

――――――――――――――――


 おお、出来ました。ちなみに、私は中級スキルを持っているので、これを使ってもほんの少ししか回復しません。

 それではもう一つ、私が予想していたことも試してみましょう。

 薬草を一つ取り出し、葉と幹と根に分けます。そして、それぞれをすり潰しましょう。……量が少ない気がしますね。単純計算で三分の一なので、もう二つほど追加して同じようにしましょう。

 三つ分の薬草の葉だけ、茎だけ、根だけをすり潰したのをそれぞれ水で溶かします。すると。


――――――――――――――――

【回復剤用溶液】

 薬草類を溶かすことが出来る

――――――――――――――――


 茎だけを溶かしたのはこんなのになったのですが、葉と根のは溶けきる気配がしません。まいりましたね。……あ、そうです。茎だけのがこれになったということは、葉と根のに混ぜればいいんですよ。出来た溶液を半分ずつ葉だけと根だけのにいれて混ぜます。その結果。


――――――――――――――――

【初心者用ポーション】 

 初心者用のポーション

 HPを2分かけて20%回復

――――――――――――――――

【初心者用ポーション】 

 初心者用のポーション

 HPを30秒かけて5%回復

――――――――――――――――


 こんなんでました。状況によっては少量でよかったり、2本目を飲む時間が惜しいと思う時には使えそうですが、何と言うか、状況に左右されますね。まぁ、これはこれで使えそうなので、残しておきましょう。……あ、いえ、初心者用なので私には使えませんね。これはインベントリの肥やし決定です。


「ふむふむ、人様を頼っとっても、自分なりの探究は忘れんとは。それに、一応は自分のものにしたようじゃしのう」


 うわ、驚きました。


「オババ、いつの間に……」

「どれ、ワシの経験を教えちゃる。これを砕いてみんさい」


 そういってオババが取り出したのは胃石(小)です。ええ、ノーマルポーションやMPポーションに使うアレですよ。とりあえずいつものように砕いていると――。


「そうじゃない。やり直しじゃ」


 そういって新しい胃石(小)を取り出しました。もう少しヒントが欲しいのですが、しばらくはよく観察しながらやり続けましょう。

 ゴツンゴツンガツン

 ………………

 …………

 ……

 おや?


「オババオババ、何か違う欠片がある」

「ほう、ようやく気付いたか。それは胃石の核じゃ。それを念入りにすり潰すんじゃ」

「りょーかい」


 オババが指示を出してくれたのでそのとおりにやってみると。


――――――――――――――――

【MPポーション】

 MPを回復するポーション

 MPを1分かけて11%回復

――――――――――――――――


 おおー、見事に成功です。ちなみに、薬草以外の素材にはMPを注ぎ込めない設定なので、ノーマルポーションのMP回復量も3%のままです。ちなみに、素材はオババから提供されたので完成品は没収されてしまいました。

 次はイエローポーションの材料である黄色の鱗です。それではよく観察しながらすり潰しましょう。

 ガリガリゴリゴリ

 ………………

 …………

 ……

 うーん、何が違うのでしょうか。まぁ、違うと言えば全部違うので、決め手に欠けます。ちなみに、魔力視で見ても何もかわらないので、困っています。


「わからんかのう?」

「う……、ううー、わかりません」

「まだまだじゃのう。ほれほれ、探究心はどうしたんじゃ?」


 残念ながらそんなものは持っていないのですが、どうしましょうかねぇ。明かりで透かしてみましたが……何もありませんね。とりあえず、横から見ると何ヵ所か黒いものが付いているので落としてみましょう。


「ほう、見付けおったか」


 へ?


「何じゃ、わかっとらんのか。その黒いのは、言わばゴミじゃ。純度が下がるから、取り除くんじゃよ」


 なるほど、そうだったんですか。これはいいことを聞きました。では、黒いのを綺麗に取り除き、ゴリゴリしましょう。

 その結果はこちらです。


――――――――――――――――

【イエローポーション】

 黄色いポーション

 HPを1分かけて17%回復

――――――――――――――――


 イエローポーションの基本値15%に薬草の増加分1%と黄色の鱗の増加分1%、で合計17%ですか。そういえば、中級スキルを持っていると基本値が10%に落ちるのですが、増加分は残るそうなので、私が使うと12%ですね。まぁ、これも没収されるので、意味はありませんが。


「よく出来たのう。次はこれじゃ」


 ええ、次に渡された材料はもちろんサボテンの皮です。これでグリーンポーションを作れということですね。ただ作るだけではなく、良いものを作らなければいけないので、まずは観察しましょう。

 下ごしらえの候補としては、サボテンの刺を全部抜いたり、稜を丁寧にすり潰したりでしょうか。後は、あえてふやかすという方法は……ないですね。

 まぁ、どちらにしても作業量に違いが無い気がするので、稜を丁寧にすり潰す方から試してみましょう。

 その結果。


「何故、そんなことをしとるんじゃ?」


 大外れでした。では、刺を抜きましょう。


「小娘、遊んどるのか?」


 こちらも大外れでした。


「オババー」

「まったく、これを使わんかい」


 そういって渡されたのはナイフです。もしかして……。


「これで刺を切り落とす?」

「他にどうするんじゃ? ああ、別々にすり潰して、後から皮、刺の順で入れるんじゃぞ」


 オババの言う通りにやってみますが、これ、専用のピーラーとかあると楽そうですね。

 結果はもちろん。


――――――――――――――――

【グリーンポーション】

 緑色のポーション

 HPを1分かけて17%回復

――――――――――――――――


 こうなりました。もちろん、回復量が減るのは上級スキルを持っている場合なので、これは普通に使えます。まぁ、これも没収されましたけど。そういえば、後で薬草を乾燥させてからのも作らないといけませんね。材料の下ごしらえと道具とスキルを使って今出来る一番いいものをレシピに登録すれば、後はボタン一つで出来るので、とても楽になります。


「小娘の力量じゃとこれが限界じゃろ。後は自分で精進するんじゃな」


 そういってオババが部屋から出ていくと、システムの方から通知が来ました。これは調薬スキルがLV20になったという通知ですが、それだけではありませんでした。

 ええ、調薬がLV23になっていました。今のオババからの指導で一気に上がったようですが、経験値の入り方が、一回一回ではなく、最後にまとめてだったようです。とりあえず、LV20で効能抽出というアビリティを覚えました。これはLV10の時に覚えた効能追加と対になるアビリティですね。これは名前の通り、効果を取り出すようですが、あくまでも調合系スキルで作ることの出来るアイテムからだそうです。バフ系のアイテムを作って、まとめることが出来たり、複数の状態異常回復薬を一つにしたり出来るということですか。ただ、万能薬というアイテムもあるらしいので、使い道が微妙ですね。……いえ、複合毒を作る時には便利そうです。

 オババの指導を受けていたらいい時間になっていたので、今日はここまでですが、シェリスさんはいつものように【ハイヒール】のスクロール10枚がいいそうなので、ハヅチとシェリスさんに修理依頼を出してログアウトです。





 翌日月曜日、今日はお昼の後に出かけます。ずっと寝ていては運動不足になってしまうので、ある程度は動かなければいけません。伊織からの連絡も来たので、早速出かけましょう。


「葵も呼ぶ?」

「葵は葵で運動してるって言ってたから、二人でいいんじゃない?」


 まぁ、伊織がいいと言うのなら、二人で出かけましょう。そもそも目的地もなにもないので、行き当たりばったりですが。

 途中で、今日の夜にイベントダンジョンに挑む約束をしました。





 夜のログインの時間です。後で時雨達とイベントダンジョンに挑むので、日課をこなしながら待つことにしました。


 テロン!

 ――――修理アイテムが二件届きました。――――


 ハヅチとシェリスさんに依頼してあった耐久の回復も終わっているので装備してしまいましょう。ログインした時点で時雨とグリモアがいたので、ほぼ初期装備だったため、驚かれてしまいましたよ。

 日課をこなしていると、他のみんなも一人、また一人とログインしてきたので、今日の日課はここまでです。


「それじゃあ行くぞ」


 パーティーリーダーであるアイリスの号令で櫓広場へと移動しました。日曜日に20階までクリアしたので、次は21階です。

 今までよりも広くなりましたが、今度は恐らくエドッグが3体でしょう。

 調べていないのにわかる理由としては、始まるまでのカウント以外に、点線で丸が3つ表示されているからです。あきらかにここから出現しますよといった表示なので、ありがたく利用します。

 割り振りですが、私達のパーティーには前衛も後衛も3人ずついるので前後でペアになった結果、簡単に倒せました。

 次の22階では同じカウントが3ヵ所で行われています。これはつまり、エドーレムがその3ヵ所に出現するということです。まとまっていれば範囲魔法で楽にクリア出来たというのに。

 23階のエドレントも離れた位置に出現しました。葉を飛ばす攻撃の範囲が広いので、安全な場所が限られてしまいますが、相変わらずエドレント戦は楽ですね。

 24階はエドッグ3体同時出現が2回でした。3体倒してからの出現でしたが、基本的には21階と同じでいいので、楽にクリア出来ました。

 25階と26階はわざわざ言う必要もありませんね。エドーレムとエドレントは私からすればただの的ですから。

 そして、27階、ペアで戦う私達に問題はありませんでしたが、倒した瞬間に次が追加されるのには驚きました。ただ、1ヵ所につき3体までだったので、わかっていれば苦労はしません。

 28階と29階は楽勝です。

 そして30階、今までのパターンからすると、3体ずつの合計9体同時出現でしょうか。そう予測を立ててから30階へ移動すると、カウントが9ヵ所に表示されていました。カウントしている場所に表示されている円の大きさが3種類あるので、出現するMOBの予測は立ちますが、位置取りはどうしましょうかね。


「ペアはそのままに、倒しやすいのから倒してくれ」


 アイリスから臨機応変にという指示が出たので、モニカと相談することにしました。


「どする?」

「エドッグは最後でいいから、エドレントとエドーレムの順でお願い」

「りょーかい」


 モニカからすれば遠距離攻撃をしてくるエドレントは嫌でしょうし、動きは遅くても力が強いエドーレムも厄介なのでしょう。それらに比べて、エドッグの対処は防御力が高そうなので簡単なのでしょう。

 前衛が厄介なMOBを引き付けていてくれるのなら、射程外から一方的に攻撃できるMOBと動きの遅いMOBに苦労する理由はありません。私達のペアが一番最初に倒し終わったので、物理攻撃が主な手段の時雨・リッカペアに加勢しました。途中でアイリス・グリモアペアも参加したので、すぐに終わりましたけど。


「さて、次は31階か。どうする? このまま行くか?」

「ちょっと休憩挟んだ方がいいと思うよ。それに、そろそろネタバレ解禁してもいいと思うし」


 時雨の意見に対し、誰も異論を挟みませんでした。私は調べるのが面倒なだけで事前に情報を仕入れることを否定してはいません。そもそも、ダンジョンの出現パターンでネタバレなんて言う気もありませんし。

 そんなわけで外へ出て一度休むことにしました。


「いやー、モニカってヘイト管理上手いよね」

「そう?」


 本人には自覚がないのか、首を傾げています。それでは理由を述べて褒め殺しましょう。

「だって、後ろに流さないし、それぞれが受け持つ時は範囲技なしでちゃんと受け持つし……」

 ふっ、私にはこれくらいしか言えませんよ。何せ前衛は苦手ですから。ただ、これだけは言っておきましょう。


「後ろで安心して魔法使えるのは、ありがたいよ」

「そ、そう、かな」


 おやおや、少し顔を赤らめていますし、小さいポニーテールが嬉しそうに動いています。このゲーム、芸が細かいですね。


「うげぇ」


 時雨が乙女にあるまじき声を上げました。いったいどうしたのでしょう。


「……次、エドッグ6体の一斉出現」

「うわぁ……」


 みんな表現は違いますが、同じ様な反応でした。とてもやりたくない内容ですね。


「しかも、31・34・37階は同じ構成だってさ」


 つまり、エドーレム6体とエドレント6体も3回あるということでしょうか。同じ構成でもMOBが違うだけでこうも難易度が変わるとは……。


「出現場所はどうだ?」

「ある程度の距離を保って出現するってさ。正確な位置は入ってからのお楽しみ」

「リッカは近距離でもしのげるが……、二人は……」


 そんな目で見ないでください。私は無防備な状態で近付かれたら大人しくやられるしかないんですよ。


「バリアで対処は出来るけど、絶対とは言い切れないよ」

「我は……」

「それじゃあ、あたしがグリモアの分も受け持つから、後ろからお願い」

「感謝する」


 もう少し休憩してからイベントダンジョンへ再突入しました。


「準備が出来たら言ってくれ」


 みんなそれぞれの出現位置近くで準備しているので、私もバリアを発動し、準備が出来たことを告げました。


「行くぞ」


 アイリスが開始ボタンを押し、カウントが消え、エドッグが出現しました。それぞれが思い思いの対処法を実行する中、私は閃きを発動し、ライトニングランスの魔法陣を4つ描きます。もちろん、左腕を盾にしています。

 エドッグが私に向かってきたのですが、今は噛み付きを選んでくれることを期待して待つだけです。


『GAU』


 エドッグが口を大きく空けて飛び掛かってきました。私は上手く合わせて左腕に噛み付かせようかと思いましたが、そんな技量を持っていないのでしゃがんでかわしました。いや、だって、あんな無駄の多い行動はかわしてくれと言ってるようなものですよ。

 エドッグが空中で態勢を整えながら着地し、私へ向かって駆け出してきます。ただ、魔法陣が描き終わりました。


「【ライトニングランス】」


 今回は4発分なので、いつもの行動阻害も少し長くなっています。まぁ、それでもディレイが終わるまで待っててはくれないので、結局左腕は犠牲になりました。杖で殴れれば早いのですが、左腕がふさがっているため、両手杖で【マジックスィング】を使うことが出来ません。さて、ディレイが終わったので、バリアを修復しながら次の魔法陣を3つ描きましょう。


『GUUU』


 噛み付きながらも器用に唸り声を上げています。さて、とどめです。


「【マジックランス】」


 かなりのMPを使いましたが、私の担当分は倒しました。他のみんなの様子を見てみると、モニカ・グリモアペアが後1体で、後はもう少しというところでしょうか。

 集中しているところに声をかけて邪魔するのも悪いので、少し待っていると、みんなが倒し終わったので、31階をクリアしました。


「みんな、HP・MPはどうだ?」

「はいはーい、MPが大変です」


 クリアしたのでバリアは解除しましたが、主に修復にかなりのMPを持っていかれました。次はエドーレムだと思うので、消耗した状態で挑むのは勘弁して欲しいですね。

 他のみんなも大なり小なりHPを削られているようなので、一度戻って全回復してから続きをすることになりました。


「いやー、エドッグは純粋な後衛が戦うもんじゃないね」

「いやいや、リーゼロッテのあの戦い方は予想外だよ」

「魔法使いのソロは、ウォール系を上手く使って立ち回るのが基本だと思うんだが……。何だったか、縦置きとかいうやつがあるだろ」


 アイリスが記憶を掘り起こすように言葉を口にしました。縦置きですか……、大昔のゲームにはそんな技術があったらしいのですが、今はMOBのAIも進化しているので、炎の壁を直進したりしないと聞きますが、どうなんでしょう。後、もう一つ問題がありますね。


「ウォール系って向きの調節出来るの?」

「壁を生み出す魔法は、術者の意思により操ることが出来る。故に、汝のそれは杞憂だ」


 どうやら問題ないようです。そういえば、階段とか踏み台代わりにする時に向きを調節していましたね。


「基本的に魔法使いは逃げ撃ちだから、結構時間がかかるんだってさ。後、場所と相手を選ぶし」

「まぁ、2回で倒せない相手とは戦いたくないね」

「リーゼロッテの場合、2回って最大8発だから、行ける場所多いよね」

「んー、何となくとか、あそこ行こうとかで場所決めてたけど、オーガと遭遇した時は焦ったよ」


 おや? 何か静まり返りましたね。どうしたのでしょう。


「ねぇ、オーガって上手い壁役がいないと簡単に壊滅するんだけど……、もしかして倒した?」

「あー、あの攻撃力は凄いよね。倒した後に油断して寝転がってたら一撃でやられちゃったよ」


 あの時はホント油断していましたね。流石にまた挑む気はありませんが。


「本当に予想外ばかりだな。リーゼロッテといると、話題に事欠かないな」

「それでいて重要なものも見つけても知らずに黙ってるから、完全に放置しとくと大変なことになるんだよね」


 アイリスと時雨が正反対の表情をしています。私としては自由気ままなソロプレイをしているだけなので、気にしてはいけません。


「さて、そろそろ続きをするか」


 そんなわけで32階に挑戦することになりました。

 ここではバラバラな位置にエドーレムが全部で6体出現するので、私とグリモアが別々のMOBを1体ずつ倒していき、他の4人が全員で1体ずつ倒すそうです。この辺りは有効な攻撃手段の兼ね合いなのでしょう。

 ちなみに、楽勝でした。

 次のエドレント6体は、相手の射程が広いので始めの立ち位置に困りましたが、これも楽勝です。ええ、エドーレムもエドレントも困るような相手ではありませんから。

 34階のエドッグ6体ですが、一度同じ構成と戦ったので、苦労しながらも無事にクリアしました。エドッグ戦の後に休憩をし、エドーレムとエドレントをさくさく倒した結果、無事に39階までクリアすることが出来ました。

 次の40階に挑む前に一度外へ出て作戦会議です。


「えーと、次は……楽って言えば楽……なのかな?」


 検索担当の時雨が微妙な感想を口にしました。ええ、まったくもって何とも言えない感想です。


「どんな構成なんだ?」

「えーと、まずエドッグ6体、次にエドーレム6体、最後にエドレント6体だって。エドッグで消耗すると後が大変かな」


 時雨の視線が私へと向いています。確かに一番消耗するのは私ですから、しかたありませんね。いざとなったらポーションを飲んで何とかしましょう。


「私が全部引き付けてみる?」


 そういったのはモニカです。突然の乱戦の場合、みんながどんな動きをするかは知らないので、私は口を出せませんね。


「うーん、出来なくはないと思うけど、モニカ一人に負担をかけるわけにもいかないし、エドーレム戦のために温存してて欲しいかな」

「ああ、エドーレムからいいのをもらったらモニカでも危ないはずだ。エドッグでの消耗は避けてくれ」


 そんなわけでエドッグ6体の段階では先程と同じように戦うことになりました。エドーレム戦は魔法が主な攻撃手段になるので、消耗には注意しましょう。


「それじゃあ向かうぞ」


 それではイベントダンジョン再突入です。

 今回も初期配置はわかるので、時間内にそれぞれの位置を決めます。後は、バリアを使い、準備完了です。


「行くぞ」


 アイリスが開始ボタンを押し、エドッグが出現しました。

 今回はエドッグが大きくジャンプするということはなかったのでそのままバリアに覆われている左腕を盾にし、噛み付かれた状態で押さえ込みました。エドッグが暴れるせいでバリアが少しずつ剥がれていきますが、MPを注ぎ込んで修復しているので、私のHPが大きく減ることはありません。そして、エドッグを倒してからハイヒールを使って回復し、バリアを解除したらMPポーションを飲み、座ることでMPの回復を早めます。そういえば、瞑想とかそういった休憩中の回復速度を上げるスキルはないのでしょうか。私は基本的にソロなので、あるととても便利なのですが。

 他のみんなも倒し終わり、そのままエドーレムが出現しました。ここからの2連戦はボーナスタイムです。エドーレムは遅いですし、エドレントは動けないので、射程距離に入ることはありません。MPは心もとないですが、ポーションのお陰が、なんとか足りそうです。

 そして、苦戦せずに40階をクリアしました。


「おつかれー」


 みんなで労いあっていると。


 ピコン!

 ――――System Message・所持スキルがLVMAXになりました――――

 【空間魔法】がLV50MAXになったため、上位スキルが開放されました。

 【時空魔法】 SP5

 このスキルが取得出来ます。

 ――――――――――――――――――――――――――――――


 おお、ほぼほぼインベントリの刻印でスキルレベルを上げた空間魔法がカンストしました。上位スキルは時空魔法とのことですが、これはあれですね。前にダンジョンで見つけた魔法陣が時空魔法の魔法陣でした。これは、あれが使えるようになるのでしょうか。


「一度戻るぞ」

「はーい」


 流石にそのまま次へ行くきはないのでまた外へ出ました。


「空間魔法がカンストしたから、ちょっとスキルの取得するね」


 丸くなって座ったので、SPを5消費し、時空魔法を取得しました。

 最初に覚えた魔法は【テレポート】という魔法です。相変わらず攻撃手段のない魔法ですね。

 これは、任意のポータルやセイフティゾーンに飛ぶことが出来る魔法です。今の所見つけているセイフティゾーンは例の避暑地だけですね。まぁ、今後はセイフティゾーンの噂を聞いたら行くようにしましょう。ちなみに、蜃気楼の塔の時空封印や、ピラミッドの空間接続がリストに出ることはなかったので、使えないのか条件があるのか、どちらでしょう。


「よーし、テレポートゲット」

「名前からして、リターンと違ってどこにでも行けるやつ?」

「そだよ」


 隠すつもりはありませんし、その内グリモアも取得するはずなので、詳しく答えることにしました。すると、時雨達もセイフティゾーンを見付けたら教えてくれることになりました。これで自分から調べる手間が省けますね。


「さて、流石に次に行くのはやめておくか」


 時間をみるといい時間になっていました。夏休みなので明日起きれなくなることを心配する必要はありませんが、夜更かしはお肌の大敵らしいので、時雨辺りが気にしています。


「トレントの景観ポータルと避暑地だけでも案内しとこっか?」


 クールタイムも長くはないので2ヵ所を巡ることくらい簡単に出来ます。


「……避暑地、行って、みたい」


 私が勝手に呼んでいるだけですが、リッカは興味があるようです。まぁ、一人が言い出すと流れで行きたくなる人が出てくるのはよくあることです。まずはトレントマップにある景観ポータルへ行ってから、避暑地に行くことになりました。


「それじゃ、行くよ。……【テレポート】」


 かっこよく回してから杖の先を地面に刺しましたが、残念なことがありました。


「……目的地選ぶからちょっと待ってね」


 詠唱が終わるとマップが表示され、移動可能な場所が光りました。えーと、エスカンデの南東のー、景観ポータル……、あ、ありました。

 景観ポータル【風読みの塔】を選択すると、視界が暗転し、地球儀のようなオブジェの前に出現しました。


「ここが風読みの塔か」

「トレントマップなら、ゴンドラ造りの素材集めるのに便利そうだね」


 みんなが思い思いの感想を述べる中、短いクールタイムが終わったので、今度は魔法陣で発動します。


「次行くよー」


 えーと、発動時に行き先をイメージすると、選択の手間が省けるようです。これはかっこよく移動出来るので、ありがたいですね。

 では、例の避暑地をイメージし、テレポートの魔法陣を描きます。


「【テレポート】」


 ちょっとかっこいい振り付けと共に魔法を発動しました。すると、今度はすぐに発動し、湖の畔のセイフティゾーンへと移動しました。

 ここはNPC扱いの鹿や、その他の動物がいるので、ゆっくりするのに便利です。


「わー、鹿だー」

「この地は暑き日々を過ごすのに適している」

「……ここ、いい」


 みんなも避暑地を気に入ってくれたようで、夏装備の冷却機能を解除し、少し遊んでいくことになりました。ちなみに、全身鎧のモニカは装備を外して初期装備になっています。流石にあれで水に入ったら沈んでしまいますよね。

 アイリスと時雨も多少の金属装備があるので、外したようです。

 抑えるものがなくなった時雨は凄かったです。

 帰りはグリモアがリターンを使い、街に戻ってからログアウトしました。

プレイヤー名:リーゼロッテ

基本スキル

【棒LV30MAX】【剣LV15】【武器防御LV5】【格闘LV14】

【火魔法LV30MAX】【水魔法LV30MAX】【土魔法LV30MAX】【風魔法LV30MAX】

【光魔法LV30MAX】【闇魔法LV30MAX】

【魔法陣LV30MAX】【魔術書LV5】【詠唱短縮LV30MAX】

【錬金LV30MAX】【調合LV30MAX】【料理LV30MAX】

【言語LV30MAX】【鑑定LV30MAX】

【気功操作LV1】【魔力操作LV30MAX】【再精LV30MAX】

【発見LV30MAX】【跳躍LV30LVMAX】

【索敵LV30MAX】【隠蔽LV30MAX】【気配察知LV1】

【毒耐性LV3】【麻痺耐性LV1】【沈黙耐性LV1】

【睡眠耐性LV1】【幻覚耐性LV1】

【知力上昇LV30MAX】【調教LV29】

下級スキル

【杖LV50MAX】

【治癒魔法LV16】【付与魔法LV30】

【炎魔法LV27】【氷魔法LV25】【地魔法LV23】

【嵐魔法LV22】【雷魔法LV23】【鉄魔法LV23】

【無魔法LV24】【聖魔法LV22】【冥魔法LV23】【空間魔法LV50MAX】

【魔力陣LV50MAX】【魔力制御LV50MAX】【詠唱省略LV18】

【錬金術LV15】【調薬LV23】【料理人LV19】

【言語学LV8】【識別LV30】【魔力増加LV44】

【看破LV4】【魔力視LV29】【軽業LV11】

【探索LV31】【隠密LV31】

【閃きLV8】


中級スキル

【杖術LV18】【魔道陣LV18】【魔法操作LV18】

【時空魔法LV1】


称号スキル

【探索魔法】【魔術】【筆写】


【残りSP167】

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[一言] >そういえば、瞑想とかそういった休憩中の回復速度を上げるスキルはないのでしょうか。私は基本的にソロなので、あるととても便利なのですが。 瞑想スキルは条件も調べて知ってるはず
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