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紅月  作者: 倉岡玉由
2/9

最初の出会 〜First Contect〜

あれから何分経つのだろうか。

大輔が目覚めた時、風呂場の防水時計はすでに9時前を指していた。

どうやらあれから1時間以上も寝てしまったらしい。

まだ眠気の覚めないのを抑え浴槽から出ると、サッと体を洗う。

シャンプーとリンスを済ませ、風呂場から出る。


ふと喉が渇いたので、飲み物を取りに行こうとリビングに向かった。

リビングの扉から中を覗くと、両親が一緒にテレビを見ていた。

こういう時は子供ながらにもそっとしておきたいもので、飲み物を諦め部屋に戻ることにした。

そのまま階段を上がり、自分の部屋に入る。

このまま寝てしまおうかと思ったが、まだ早いとも考えベッドでマンガを読むことにする。

本棚から適当に一冊取りベッドに飛び乗る。

手に取ったマンガは最近人気の出てきた自転車のマンガ。

大輔はこのマンガが好きだった。

理由は簡単、主人公が自分と少し似ているから。

なんのとりえも無く普通に生きてきた主人公が、自転車や仲間と出会い少しずつ変わっていく姿を見ると、自分もこうなりたいと願ってしまう。

そんなマンガだった。


しばらく読み進めていうちにあることに気がついた。

肌寒い・・・。ふと部屋を見渡すと、ベランダの窓が開いていた。

風呂上りの体にとってはこの風は厄介なものなので窓を閉めようと立ち上がり、窓に近寄る。

窓を閉めようとしたその時がきっとそうだったのだろう。


以外にも最初の出会いは早くもやってきた。


ベランダの向こう側、隣の家のベランダに人がいた。

大輔はその姿に見とれてしまった。

風に揺られる白いワンピースと、長い髪。

そしてその人が自分と同じくらいの年頃で、あまりも綺麗だったから。

初めてだった。こんなにも美しい人を見たのは。

いつもはテレビや雑誌の向こう側で笑顔を振りまく美しい人はたくさん見ているが、それとは何か違う。

静かで繊細で、押したら壊れてしまいそうな美しさ。

スラリとした体に、長い髪、そして何よりもほかと違ったのがその目だった。

見つめると引き込まれそうな、どこまでも続く黒の世界。


大輔が見とれていると、彼女のほうから声をかけてきた。

『こんばんは』

綺麗な声だった。まるで透き通った水の流れのようななかにもしっかりと力がある声。

『こっ、こんばんは』

大輔はビックリしてその言葉をオウム返しにしか出来なかった。

その上、声が裏返ってしまった。

『よかったら、すこし話さない』

くすくす笑いながら彼女はそういった。

『えっ、あ、うん』

大輔は心の中で叫んだ。ここで断ったら一生後悔する。

しかし同時に疑問に思っていた。

―隣の家に娘さんなんていたか―

確かに大輔は今まで隣の朝日奈さんは大輔の両親ぐらいの夫婦が二人ですんでいると思っていたし、実際それ以外の人物を見たことはなかった。

すこし不思議に思いながらも、近くで話そうとベランダの先端に歩む。

大輔の家と、朝日奈家は工事業者のミスですごく近く、ベランダ間が1メートルほどしかない。

おそらくジャンプすれば渡れるほどの距離なのだ。

近づくにつれ彼女の顔がハッキリ見えてきた。

綺麗な顔立ちだがすこし細すぎる気がする、あごのラインがどことなくキュッとしすぎている。

ベランダの縁に手をかけると彼女が口を開いた。

『宮本大輔君だよね』

『うん、そっちは』

『朝日奈沙耶香。14歳だから大輔君と同じかな』

『じゃぁ同い年か、朝日奈さんの娘さん』

『うん』

『初めて会うよね。どこ中』

『学校は・・・行ってないんだ』

『えっなんで』

『ごめん・・・今は言えない』

その言葉ですこし重苦しい言葉が流れ始めるが、彼女が明るく口を開いた。

『よかったらこれからも話に来てくれない。夜九時ごろにここに居るからさ』

『うん、べつにいけど』

『ホント、ありがとう』

『うん』

下心がなかったといったらこれはきっと嘘なんだろう。

大輔は生まれてはじめて女子と毎日会う約束をした。

それから二人は一時間ほど話しをした。

大輔のこと、沙耶香のこと、最近のテレビのこと。

色々話したけれどほとんどが大輔への質問攻めだった。

旗から見ればつまらない会話は無いだろうが、沙耶香はずっと笑顔を絶やさなかった。

大輔もなぜかずっと笑顔だった。

『明日もここで待ってるから、お願い来てね』

『うん、来るよ』

二人はしっかりと明日の約束をし、話を終えた。

話が終わった後、大輔はベッドに入ってその余韻に浸っていた。

こんな楽しい思いをしたのは、大輔自身初めてだった。


大輔は知らない、これから起こることも、何もかも。

しかし運命の歯車は回り始めてしまった。

二人が出会ってしまったから。


大輔は明日のことを考えながらそのまま深い眠りについた。


二人の最初の出会いは、紅い月が輝いていた――。

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