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水晶物語  作者: 寿々
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エピローグ・それは終わらない歌のように

家に帰ってきた柊はまず母にその服装を驚かれ、

外泊したことに父にぶつぶつと文句を言われ、

最後に姉になんか薄汚れている格好を見てけらけらと笑われた。


「おっはよー!」

遠くで手を振っている。

くせ毛でわかった。あれはきっと麻貴だ。

そしてその横にいる長いみつあみの少女は・・・

「柊おそーい」

文庫本を手に溜息をつく咲だった。

きっちり編まれているその髪は、とても戦いで武器になったとは思えない。

「おっす、柊ッ!」

上から声が聞こえる。

八神神社の鳥居の下に立っていたのは、音魁。

巫女のようななんかよく分からない服を着て、手にはお払い用の

なにかしゃらしゃらした物を持っている。

「柏手、打っていけよ」

悪戯っぽく笑った。

こくんと頷き、柊は駆け出した。

それに続いて麻貴が走り出す。咲は呆れたように笑って、自分も石段に足をかけた。


そこは何も変わらなかった。

いつか、千代がふてぶてしくすわっていた境内の一部が

ぽかんと穴が開いたように寂しい。

「帰ってきたんだねー」

麻貴が高い高い空をうっとりとした眼差しで見上げる。

何も見えないけど、何かがいる、そんな感じがした。

「大変だったね」

咲が薄い半そでのカッターシャツの袖を捲る。

大きく裂けた傷跡。長めのスカートを捲ると、そこには縦に肉が抉れたあとが。

麻貴がひっと短く悲鳴を上げた。

「い・・・痛そうだね。咲ちゃん・・・・」

「これくらいなら大丈夫よ。心配ないわ」

ぽん、と麻貴のくせ毛に手を置いた。

安心したように、麻貴がにっこりと、それはまるで一足早い夏の向日葵のような顔で笑った。

咲の顔がぽっと赤くなる。

「また、逢えるかな」

「迎えに来るって、言ってたぞ」

「そのうち来るんじゃないかしら?」

「そーだね!また逢いたいねッ!」

「そーかそーか、それはよかった」


聞き覚えがあるが、きっと多分絶対此処では耳にするはずのない声。

ソプラノかアルトかって言えばアルトの、低いけど特長のある

澄み切った素敵な声。

振り返ると

「千代!」

「しかも何!その格好は!」

千代は、咲ととてもよく似ている格好をしていた。

背が伸びたので、違和感はない。

そして千代の後ろには

「今日はデス。みなサン!」

またもや咲とよく似ている姿をした、リーメイがいた。

お団子頭と、日本刀は顕在していたが、

こんな田舎町でそんな物騒なものを持ち歩いていたら即逮捕されるはずだ。

「リーメイも?どうしたの?」

「いや、ちょっと散歩がてら様子を見に来た」

「昨日の今日で?凛はちゃんと仕事してんのかよ」

「蔭に見張らせてある。きっと大丈夫だ」

ふんと鼻を鳴らした。ふてぶてしい態度は変わっていない。


「そうじゃ、散歩がてら来たついでにこれを預かってきたんじゃ」

かさかさと紙が擦れる音がして、一つの紙切れが手渡された。

習字紙に墨でテキトーにかいてあるかなりのアバウトさ。

それはぽんと煙を上げて、電話にはや代わりした。

耳をあててみる。

『あーもしもし柊ィ?あのさぁ、一段落ついたとこ悪いんだけどぉー

ちょっとさー、氏神サン虐殺事件が相次いでんのねぇー。

犯人も検討ついてるし、あたしも忙しいし、(ってゆーかあたしに来た仕事なんだけど)

ちょちょいのちょいっと始末つけといてくんない?』

堪忍袋の緒が切れたのははじめてだ。

「ふっざけんじゃねぇええーーー!俺らはオメーの道具じゃねーんだ!」

『守護じゃん。道具でもなんでもいいから早く来なさいよ」

「ヤダ!あんな自殺行為みすみすやれるかーーー!」

『やるやらないは勝手だけど、あんまり騒ぐと・・・・』

しゃきん。

柊の首に冷たい鉄が当てられた。

「つべこべ言わずにさっさとやってくだサイね」

にっこりと笑うリーメイの日本刀だった。

思わず冷や汗が出る。これは断るに断れない。

「は・・・はい・・・やります・・。やらせていただきます・・・」

「ハイ、最初から言えばいいんデスよ。柊サン」




五月の風にのって、

柊たちの戦いは終わることを知らない歌のように





どこまでもどこまでも、続いていくのだ。






「水晶物語」シリーズ完結です!

長かったー。

終わってしまったけれど、感想・評価などはいつでも

送ってください!とっても嬉しいですッ。

また次も懲りずにファンタジーを書こうと思います。

ファンフィクションもまだまだ続ける気でいます。

ではでは、こんなつたない文章を読んでくださった読者の皆様、いままでどうもありがとうございました!

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