表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水晶物語  作者: 寿々
50/51

第四十九話・さよなら!

風はさらさらと流れた。

雲はゆらゆらと流れた。

僕らの旅は、炎が消えるように終わった。

さよなら



雷雲布は意外に心地よかった。

蔭と咲に怪我の手当てをしてもらったあと、咲に散々怒られた。

お前は後先を考えなさすぎだとか、私がどれだけ心配したか分かっているのかだとか。

でもそれは、本当の本当に心の奥底から咲が自分を心配していてくれたのだから

なにも文句は言えず、俺は苦笑いするしかなかった。

麻貴は凄い剣幕で俺をしかってくれた。

今でも感謝してる。ありがとうっていったら、どうしたの?頭打った?なんて言ってきた。

音魁は何も言わなかった。そのかわり笑った。

顔についた傷。あいつは隠さずに曝け出していた。やっぱりあいつは強い。


ころりと寝転がった時、庵が何かを持っているのに気がついた。

「庵、なんだそれ?」

緑色の液体に、瓶。見覚えがある。

そしてその中には・・・・・目玉がひとつ。

「ななななな何でそんなもん持ってんだよぉ!?」

「これか・・。これはあいつの左目だ。あの部分だけ髪で覆っていただろう。

この目玉に禁術が押し込まれていたんだ。だから俺が持って帰って成仏させる」

柊は、この人は心底おかしな人だ、と思った。

ふっと見上げた庵の顔は、悲しそうな、安堵のような顔だった。

「俺らが見捨てたんだ。あいつを。助けられなかった」




「上手くいかないもんだな・・・・・・」


柊は、千代を一瞥して頷いた。


その後千代はいっこうに目を覚まさなかった。

「なぁ、どうしてだよ?」

「黙っててよ。今あたしが治療してんだから。リーメイ。二番目の棚の錠剤取って!」

此処に来てから、リーメイは忙しく働いた。

「ハイ!」

心なしか笑顔でいるときが多くなった。

今は治療中なので笑顔でいるときっと凛に怒られるだろうけど。

「千代サン、目覚めませんネ・・・・」

「大丈夫!あたしがいるんだもん!目を覚まさしてあげるわ」

寝具の上に寝かされた千代は、大きかった。

もう立派な少女だ。背丈で言えば、蔭と同じくらい。

綺麗で長く伸びているマツゲは、濡れているようにみえた。

その時に


「んぅ・・・・・・?」


ふわりと、目が開いた。

大きくて紅い目が、顔を覗かせる。

「千代!」

「なんじゃ・・・柊か・・・。あれ、凛様?・・・お前は誰じゃ・・?あれ?わし・・」

「助かったんだよ千代ッ!」

しきりに腹の辺りを撫でる千代に、現状を教えてやる。

ぽかんと呆けていたが、赤い目に透明の涙が溢れ出した。

ぽたぽたと白いシーツに染みを作った。

顔をくしゃくしゃにして、それを見られたくないのでシーツで隠す。

嗚咽を漏らしながら、千代は泣いた。


「さて、柊たちも元の世界に帰んなきゃね」

ぱんぱんと凛が手を叩く。するりと具象化した漣が現れた。

無駄に長い髪は何処までも何処までも続いているようだったが

顔は言葉では言い表せないくらいに美人だった。

『久しぶりね。可愛い子猫ちゃん』

寒気が走るような喋り方は相変わらずだった。

「この子達を、元の世界まで連れて行って」

「ちょっと待って!私たち・・・帰っていいの?」

「もちろん」

凛の答えは意外にあっさりとしていた。

なんかあっさり捨てられた気分だ。

「ただし、用があるときはまた呼びに行くから、覚悟しといてっ!」

がたん・・・と、窓を開けた。

涼しい五月の風が、遠く海原から吹き抜ける。

「蒼く輝く漣よ!今風を我が身に宛がい風魔を呼び寄せろ!」




空中に体が舞い上がり、そのまま地へと急降下していった。

「ばいばーーーい!」

凛が大きく手を振る。続いて湾と満と蘭と煩も。

当然の如くか、斬と庵と蔭と秦は手を振らなかった。

リーメイが笑ってるのが見える。

そして、千代も・・・・・・。


「わがっ!?」

どすん。

何処かに落ちた。

見たことのある風景、八神神社。

「帰ってきたんだ!ホントに!」

咲があたりを見回す。自分のデジタル時計を見て、首をかしげた。

「どーしたんだ?」

「私たちが天界へ行った日の次の日になってる。日付が」

『ふふふ。天界は此処より時間が流れるのが早いのよ。気にしなくていいわ。

でも、私たちは実在しているの。いつかあなたたちに会いに来るからね。

その時はヨロシク!可愛い子猫ちゃんたちっ!』

「頼むからその呼び方やめろ!」

音魁が怒鳴った。

漣はくすくす笑って、具象化のまま空へと上がっていった。



「ってゆーか、どーするよ。この衣装・・・・・」




柊たちは、なんかおかしな民族衣装っぽいののままだった。

べつにそんなに大したことはないのだが、やっぱりコスプレに見えるのだった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ