第四十三話・ショータイム
「そ・・んな・・・」
深々と胸を刺された小夜は、その場に崩れ落ちるように倒れた。
引き抜いた日本刀には、べったりと赤い血が絡み付いていた。
笛のような、ひゅうひゅうという音が、小夜の喉から出される。
「勝負あったナ」
「ふ・・・ふざけたこと言ってんじゃないわよ・・」
まだ指は動く。傀儡の代わりだって何体もある。
この命と引き換えに、この女を殺すことだって・・・
「!?」
突然胸が苦しくなった。
何かが染み渡ってくる。これは・・・・
「そう、毒ダ」
冷たく言い放ったリーメイを、小夜は睨みつける。
「迂闊だったナ。あたいはイツモ、この刀ニ多量の毒ヲぬってアル」
悠々と話しているリーメイの隙を窺い、小夜はぱっと指を動かした。
後ろで待機していた人間傀儡が、音も立てずに忍び寄る。
が、それはただの悪あがきにしかならなかった。
目にも止まらぬ速さで、リーメイは傀儡を壊したからだ。
「な・・!?」
「あたいの生前をお忘れカイ?人身売買のマフィアを一度に殺した狩猟サ!」
もうきっと助かるすべは無い。
なら、最後の悪あがきでもいい。きっとあなたは助けてくれるはず。
「みょ・・ど・・さま・・・」
震える手で、小夜は冥堂に向かって手を伸ばした。
「ごめ・・なさぃ・・・お役に・・たてな・・て・・・」
冥堂は静かにそれを見下ろした。
自分のために傷ついた少女。
それでも、
助ける気は
無い。
「キミはもう要らない」
「え・・・・・」
小夜の最後の言葉は、それだった。
その場にがくりと倒れ込み、息を引き取った。
「キミはやっぱり、籠の中にいるほうが、お似合いだ・・・」
「てめぇえええええーーーーーーーッ!!」
その瞬間、柊の怒りが爆発した。
もの凄いスピードで、冥堂に襲い掛かる。
「ふざけんな!仲間じゃねぇのかよ!?」
凄い剣幕で怒鳴りつける。
それでも冥堂はびくともしない。
しないどころか、冷たい視線を柊に向ける。
「キミのこと結構楽しみにしてたのに、結局それか・・・。
ヒーロー気取るのはやめてくれないかな。いつもそんな言葉ばっかり。人間って無能だね。
あの子は仲間と思っていただろうけど、僕はなんとも思っていない。
死にぞこないは、ただのゴミ。助ける必要があるかい?それに、
キミ達からしても、あの子は敵だった。何故助けろなんていえるのか、僕には分からないよ」
冥堂の心無い言葉が柊に降りかかる。
そして
気づかぬうちに、柊は風圧かなにかで飛ばされていた。
「あぐ!」
壁にぶつかる。
「柊!!」
「キミと僕のショータイムの始まりだ。観客が少ないのが、残念だね・・・」