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水晶物語  作者: 寿々
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第四十二話・対決

ここはどこだろう

真っ暗だ

何も無い

怖い

自分はどうなってしまうのだろう


ごぼ・・ごぼ・・・

水の中で息をするような音だけが、広い空間に響く。

ホルマリン漬けにされている、まだ死んではいない少女。

ぽちゃぽちゃ音を立てて落ちるホルマリン液に、深く漬けられていた。

その様子を見て、喉の奥から低い声を出して笑う男。

男の傍にいる少女も、小さな口をにたりと吊り上げた。

部屋には、赤い点がたくさんついていた。

そして、少女と男にも。

屍が数多く転がり、腐敗臭を放つ中

少女と男は、ホルマリン液の中にいる少女だけを、静かに見ていた。



がたん。


静寂が、打ち破られた。

少女が五月蠅そうに目を向ける。

椅子が傾き、地に転がっている先に、白い服を着た男がいた。

腹からはどくどくと赤黒い血が流れる。

「お・・・まぇら・・ッ・・・」

何かを言おうと必死で口を開ける。

しかしその口から出てきたのは言葉ではなく、多量の血だった。

「がはぁああ・・・・」

「五月蠅いわね。死に損ないのくせに」

くいくいと、少女が指を動かす。

何時の間にか、男の後ろには少女の愛用の傀儡がずらりと肩をそろえて並んでいた。

しゅ。何かを示すように指を動かした。

瞬間、男は切り裂きジャックに裂かれたように、死んだ。


「そこまでだ!!!!」


ばたん!!

大きな音がして、鉄扉が開く。

そこに立っていたのは、五人の人間。

「・・次から次へと、鬱陶しいわね」

部屋の真ん中に立っていた少女−小夜−が、目を細めた。

視線の先にあるのは、リーメイ。

「あんた、そっち側についたんだ?」

「もともとアンタの所にいる気はないネ」

リーメイは日本刀を手に取る。傀儡用に縫い付けられていた針の痕がずきりと痛む。

バックアップするように、咲と麻貴が、リーメイに付いた。

柊と音魁は黙ったまま、小夜を睨む。

「死んで頂戴!」

「こっちの台詞だ!」

二人は同時に手を伸ばし、互いを捕らえた。

ぐぐぐ・・と、わなわな震えながら攻撃を繰り出そうとする。

先に手を出したのは、小夜だった。

傀儡は指が空いていれば使える。

右手の親指と、左手の薬指を、同時に裂くようにひいた。

がしゃがしゃと傀儡音がしてリーメイの背後に傀儡が回る。

とたんに、背中が裂かれた。

「あぐぅ・・!」

「リーメイさん!」

急いで傀儡を壊すが、リーメイに付いた傷は深かった。

「バカね。その辺の奴らと一緒にしないで」

「バカはお前ダ!堕ちた姫!」

リーメイが、自分の刀を抜刀した。

小夜と距離をとる。

そして

「集まれ集まれ、雲の如く。離れ離れ、雨の如く」

その日本刀を、天に突き上げた。

日本刀の周りに、白い気が集まり、離れるように解けた。

「覚悟しロ!」




リーメイの日本刀が、小夜の胸を貫いた。





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