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水晶物語  作者: 寿々
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第三十八話・傀儡

これが夢だったらいいのに。

幻だったらよかったのに。

そう思うのは、いけないことなのですか・・・・・?



「千代ぉおおーッ!」

大量の血が滴り、肉がエグられた。

千代はぴくりとも動かない。

「うふふ・・・あははははは!」

千代の体に深々と自分の腕を刺したまま、小夜は高らかに笑った。

「てめぇ・・・!」

「まったく・・・簡単に騙されちゃって!私はね、もう立派な冥堂様の部下なのよ!

あの方のおかげで素敵な力も手に入れたわ!まぁ最初は嫌だったんだけど

なんであんなに文句ばかり言ってたのか・・。私もバカだったわね。あの頃は」

ずぶりと千代の体から腕を抜いた。

動く事も無い小さな体は、地にぶつかる前に音魁によって受け止められる。

「・・・取引しない?」

「え?」

小夜は其処から動くことなく、千代の小さな体を尻目に高々と言い放った。

「その子をこっちに渡して。そしたらあなたたちは無傷で帰してあげる」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ヤダね」

柊が応えた。

小夜の眉がぴくりと動く。眉間にしわが刻まれた。

そして、その細い手が何かを操るようにくいくいと動く。

瞬間、小夜の後ろにはすでに死んでいる人間が並べられていた。

「なっ・・!?」

咲がその人間を睨みつける。

人間傀儡ニンゲンクグツ。私の力よ」

「酷い・・・・・・・・」

確かにそれは酷かった。生身の人間に無理やり針を突き刺しているようだった。

「あらどうして?こいつらは死んだ人間よ。生きてるわけじゃないわ」

くすりと怪しく笑うと、右手を振り上げ薬指と親指を上下に振った。

最前列にいたおだんご頭の中国人の少女が大きな日本刀を振り回しながら

柊たちに迫ってきた。

「この子はね、人身売買の取引に使われそうになったの。

でもそれは行われなかった。なぜか?それはこの子が取引の人間を全て殺しちゃったからよ!」

その少女は小夜に操られるがまま、柊たちに闇雲に突っ込み

切り傷を負わせていく。

「そのあとこの子は考えたわ。あぁ、私は何故生きているのか。

ケガれない無垢ムクな少女でいたかったのに。

そしてその子はどうしたと思う?・・・・・・・自害したのよ!自分の喉笛を切り裂いて!」

柊は小夜の笑い声に耳を貸さず、その少女を止めようと手を翳した。

麻貴がチェーンを握る。リウの眼が真紅になった。

咲の髪は先ほどから大きく乱れ、怒りで我を忘れそうになるのを必死に止めていた。

音魁は千代の腹にできた穴を自分の造った治癒の技でどうにか直そうと

止血をしていた。

「・・・・・・・・私の話、聞いてた?」

小夜の機嫌が悪くなる。

それは、柊がばりばり無視していたからだ。

「聞きなさいよぉ!!!」



きゅん。

風を切る音が聞こえた。

小夜の表情が固まる。

「俺、人の話聞くの、苦手なんだよねぇ」


「で、なんだって?」







小夜の顔が、醜くゆがんだ。






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