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水晶物語  作者: 寿々
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第三十七話・堕ちた姫

真っ直ぐに歩くと行き止まり。


「どーするよ」

「真っ直ぐ行くしかないでしょ」

「しかし行き止まりだ」

「でも他に方法ないよ」

「真っ直ぐでいいじゃろ」

五人は行き止まりの壁を見つめて話し合っていた。

一見何もなさそうなただの壁。

と、五人とも思っていた。

「ったくよー。俺こーゆー迷路とか苦手なんだよなぁ」

ぶつぶつとなにか言いながら、柊が壁にもたれかかる。

もたれかかったと思った瞬間、くるりと反転し、後ろへ倒れた。

「スイッチがあったんじゃな」

「ま・・・マジでか・・」

ごてんと倒れた柊が、頭を抑えてきょろきょろとあたりを見回す。

すると

「あ・・・・あれって」

咲の驚きの声が頭の上から降ってきた。



「小夜・・・姫・・?」



セミロングで、ブリーチされた栗色の髪。

フリルがついた、ピンク色の素敵なドレス。

「だ・・・れ・・?」

とても日本の姫には見えないが、この子を見たことがある。

小夜だ。

「小夜様・・ッ」

顔はやつれて、手もボロボロ。

髪はぐしゃぐしゃと乱れ、もう何ヶ月もお風呂に入っていないみたいだ。

「あなた・・・・千代・・?」

「ええ!私めは千代にございます!」

千代は小夜が監禁されている牢をがしゃがしゃと鳴らした。

「わ・・・私っ・・。貴方の・・・姉なの・・・」

唐突に小夜が、千代の姉であることを暴露した。

これには柊たちも驚いた。

しかし一番驚いたのは、やはり千代であって

「え・・・?」

「ゴメンなさい。私なんかより、貴方のほうが王家に相応フサワしいわ」

ぽろぽろと涙を零しながら、小夜は泣き崩れる。

「私・・・あの生活がイヤでイヤで・・だから・・冥堂の甘言に乗せられちゃって・・」

これはアレだ。よく姫様にある豪邸の暮らしがイヤってやつだ。

その気持ちは、柊たちには到底わからない。

「だから・・・だから・・・」

「もういいですよ、姫様。悪いのは奴です。さ、もう帰りましょ」

千代の優しい言葉に、はっと顔を上げた小夜の顔が

歓喜の表情に変わる。

「ありがとう・・・千代・・ッ・・。わたし・・・わたし・・・」

その時、一瞬怪しげな笑みを浮べたのを、柊は見逃さなかった。

「逃げろ!千代ーーーーっ!」



腹部に重い痛みが走った。

なんだこれは

熱い液体が、腹部から赤黒く落ちていく。

え?

これは何?

痛い。それに何か腹に突き刺さっている?

それは・・・・・



「私これで、迷い無く貴方を殺せるわ」


柊たちの目に映ったのは



小夜の細い腕が、千代の腹部を深々と貫いている



まさに裏切りに近い形だった。




「千代ぉぉおおおおおおーーーーーーッ!!!!!!!!!!!」


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