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水晶物語  作者: 寿々
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第三十四話・鬼退治

「でも、行く前に居場所を特定しなくっちゃ!」

凛は、思い出したように立ち上がった。

赤く淡く、薄い羽衣ハゴロモがユラユラと揺れる。

そして、乱暴に大きな箱を持ち出し、中をごそごそとあさり出した。

「おい・・・なにしてんだ?」

「ん?だから、居場所を特定しようと思ってッ」

大きな板に、薄い薄い墨で地図が書かれてある。

これに、凛は自分の手をカザした。

ほかの五大神や守護たちが、引き寄せられるように集まってくる。

「我に力を与えよ、聖域の土地男。我らが敵、冥堂の真の居場所を

全てをコトゴトく砕く光で示せ」

静かに重い声で、詠唱する。

すると、その手に一本の光が差し、照らすように輝いた。

「土地男・・・・?」

「聖域に住んでいると言われる大男だ。

居場所を特定する術を持っている」

麻貴の疑問に、秦が小声で答えた。

「・・・・ヤバイ・・・ヤバイヤバイヤバイ」

凛の顔が一気に青ざめた。

翳していた手をぱっと離す。

「おい・・・どこだ」

斬がもったいぶった凛の態度にイラついて机を叩く。

「・・・・・ぁのね・・・輪廻の森・・・」




輪廻の森

そこは入ることの許されないただただ深い森。

其処に入ってしまえば、神だろうがなんだろうが、二度と出てこられない。

しかも、死んで楽になる事すら許されない。

そんなところから、冥堂はこの地に飛んできたというのか。

「あいつは昔っから地理に強かったもんなぁ」

「住めるのも頷けるが、俺らが其処に行くのは到底不可能だろう?」

湾と満がなにやらしきりに頷いている。

「じゃーさ!柊たちに行かせりゃ済むことじゃん?」

「お前ふざけてるのか?ふざけてんだな?この一大事に?あ?何とか言えコノヤロー」

「はい・・・すいません・・。ふざけてました」

どうやら凛を本気で制する事が出来るのは、満のようだ。

・・・・・・・怖いが。

「もたもたしてんじゃねーよ。俺はもう行くからな」

なかなかまとまらない話し合いに、斬は苛立ちを覚えた。

早く行って

敵を切って

斬って斬って斬って斬って

それが自分の唯一の快楽。

「もーッ!斬が急かすからあたしまで行く羽目になったじゃーん!」

自分は危険地帯に乗り込まないつもりだったらしい。

凛が腰に手をあてて、頬を膨らませた。

もう分かっていると思うが、あまり可愛くは無い。


五大神は、話が付いたので

眠っていた守護の煩に雷雲を用意させた。

「もう行くのか?」

改めて戦闘衣装に身を包んだ柊が、煩に聞く。

「多分。凛様が用意しろと言ったので」

今まで寝ていた煩の頭には、寝癖が付いていた。

白い髪の上のほうに、ちょんと立った髪の毛。

それはまるで、猫耳のようだった。

「おい・・・お前寝癖が・・」

「ふぇぃ?あ、ほんとーだ」

何度も手で直そうとするが直らなかった。

「もういいや。これで」

そのうち、煩はあきらめてしまった。

そして、寝癖の事なんかもう忘れたというように

煩の体が南へすっと向いた。

「来い」

大きくて丸い目を細くして、水晶玉がロザリオと共に手甲に付いているほうの

手を、北へ向けた。

遠くで疾風シップウが巻き起こるのが見える。

と、疾風が見えた瞬間、大きな広間の中に、一匹の巨大な猫が現れた。

毛並みは黄色と薄く白が混ざっている。

足の四本には全て、雷雲が巻きついたようにある。

『我を呼んだか・・・何百年ぶりだろうかな、煩』

「えへへッ。だってこの百年間くらい穏やかだったけど

凛様の力の持ち主も発見されたし、冥堂にもあったし。

この頃色々大変なんだー。だからさ、銘銘メイメイ雷雲布ライウンフ頼むよ」

銘銘と呼ばれた猫ははぁと溜息をついた。

『これだから我の主は・・・・・・・』

「こんな僕がいて、銘銘がいて、丁度いいの!」

ね?と笑って、煩はウインクして見せた。

『仕方あるまい』

渋々承知した銘銘は、ふっとテレポートのように外に出て

天高くを見上げた。

青い空が見る見るうちに、黒雲に変わっていく。

そして雷がバリバリと降ってきた。

「きゃあ!」

咲は驚いて、隣にいた柊にしがみ付いた。

二回目の事だから慣れたし、なにより猫に見入っていた。

「ありがとー。銘銘ッ!」

煩がぺこりと頭を下げる。

『簡単な事だ。礼などいらん』

自分より遥かに大きな化け猫に抱きつくと、

煩は銘銘に飛び乗った。

「俺らはこっちか・・?」

柊が大きな黒雲をみる。

「銘銘は煩以外を背中に乗せるのを嫌うのじゃ。

カタクなに拒まれるぞ」




「これは守護の中で煩にしか使えない技よ。

この点だけで見れば、煩はずば抜けてエリートね」

凛がちょっと補足した。




「じゃ、行こうか!鬼の首を取りに!」




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