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水晶物語  作者: 寿々
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第二十九話・煉獄凶・柊組編其弐

その扉を開けてはいけなかったのかもしれない。


「きったなーい。蜘蛛の巣とかあるし」

確かに其処は汚かった。

ホコリにまみれた、赤い絨毯ジュウタン

不釣り合いなほどに光って見えた。

「じゃぁ、此処から真っ直ぐ進むぞ。

一階を全部みたら二階な」

千代が、先立って歩き出した。


中は、広いのに無に等しかった。

食堂には、食器棚はおろかテーブルすら無く

それぞれの部屋にも、小さなベットがあるだけだった。

敵も、いない。

「こーゆのってなんかヤダ・・。どうせなら敵とか出てきて

ぶっ飛ばすほうがいいんだけどな」

何もないような場所では

不安という感情がより掻き立てられて

お腹のあたりがむずがゆくなって

心臓がばくばくと音をたてる。

「そう?安心じゃん!こういうほうが」

麻貴の辞書にはそういう感情が載ってないのか?

「不安とか感じねーの?すげーな。超人だ」

「ちっ・・違うもん!静かな所が好きなだけだもん!」

一生懸命反論してくる麻貴が可愛くて

思わず、髪をくしゃりと撫でた。

「わわっ・・・!」

「あ!分かった。柊・・・麻貴のことがす・・「んなわけあるかバカ」

咲の言った言葉をさらりとながす。

流されたのがちょっと悲しくて、咲は柊を一発、(軽く)叩いた。


一階の最後の部屋。

そこは特別扉が重くて、幼女体型の千代には開けられなかった。

「此処は水晶があるかもしれんな」

その言葉につられて、全員が(麻貴を除く)扉を開けようとする。

「みんな単純だなぁー。あはは」

「麻貴・・。おまえ意外に賢いんじゃな」

しかし、やっぱりその扉は重く

渋々麻貴が手伝って、やっと開いた。

「やった!水晶ゲットだ・・・・・」

飛び出した柊の体が、くんっと下に落ちるように動いた。

それは、見間違いではなかった。

この部屋には、一定の場所にしか床がなかったのだ。

しかも入った瞬間に、扉は閉じられ、開かなくなった。

「くそっ・・・・!トラップか!」

唯一浮いていられる千代が、一番軽い麻貴を抱きかかえて

面積の狭い床に下ろす。

その他は、まぁなんとかそれぞれの床に降り立てた。

「千代!てめー嘘つきやがったな!」

「わしは嘘はついておらん。かもしれない、といったんじゃ。

しかもその証に麻貴は扉を開けようとしなかったじゃろ。

この中で麻貴は一番賢いんじゃな」

「ぐ・・・・っ」

やれやれと呆れるように溜息をつく千代に

柊は言い返す言葉もなかった。

「なぁ・・千代。此処からどうしたらでられるんだ?」

ちょっとかっこよく着地した音魁が

冷静に物事を判断しようと、思考をめぐらす。

「・・・・・・・選択肢は三つだ。

壱・此処から真っ逆さまに落ちる。

弐・あの扉をブチ破る。多分無理。

参・このまま餓死か過労死じゃな」

「おい・・・それ選択肢っていうのか!?」

なにがなんでも酷すぎる。

もう少し言い返そうと思って口を開けた柊の視界に

紫色の煙が入った。

「!?」

その煙の中からあらわれたのは、青年男子と女子高生っぽい女。

格好は、ありそうでない民族衣装に似ている。

金髪でオールバックの髪型。赤くて腰まで伸びているロングヘア。

「ふぅーっ。久々のお客様だぜ・・・。丁重におもてなししねぇとなぁ・・?」

「ばぁーか。とっととやっちまうよ。あたい面倒なの嫌いだし。

凛さん。トロトロしてっと文句言ってくっからよ」

二人は適当な話をちゃっちゃとすませて、

柊のほうをみた。

「あんたが柊?ふーん。意外と好みかもっ」

「お前ら・・・誰だよ」

柊の言葉に、二人は顔を見合わせ、向き直った。

「俺は凛さんの式狐の一匹。トーチ」

「あたしは同じく式狐のエマ」


呆然としている柊の前で

戦いの火蓋は切って落とされた。


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