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水晶物語  作者: 寿々
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第十八話・魔性の男

五大神たちの顔が青ざめているのが分かった。

「ど・・どうしたんだろう?」

腕に巻きついているチェーンを握り締めて麻貴が呟いた。

何を話しているのかまでは分からないが。

その時、柊の五感が唐突に何かを叫んだ。

危ない。

危険なものが向かってきている。

「・・危ない」

「え?」

聞き取れなかったよ?

咲が聞き返した。

「危ないっっ!!!!」

空がごうっと翳った。

黒い雲が青かった空を包む。

それに気づいた柊は真っ先に空へと飛び出した。

「柊ッ!」

音魁が止めようと手を伸ばすが

あと数センチ、届かなかった。

「くそっ!咲!湾たちを呼んで来い!」

「わかった!」

指示に従って、咲は部屋の中へ飛び込んだ。

柊はどんどん黒い雲に向かってクウを走る。

「柊くん・・・」

体が衝動に駆られたように

麻貴も手すりに足をかけ、走り出した。

危ないところで、音魁に右腕を掴まれる。

「おい!麻貴!馬鹿!何してんだ!?」

「だって・・だって柊くんがあのままだと死んじゃうよ!」

掴まれた右腕を振りほどこうと暴れる。

音魁はなんとかこっちに引きずり込もうと、麻貴を引っ張る。

「放してっ!柊くんが・・柊くんが・・・」

そう口にしたとたん、麻貴ははっとある事に気づいた。

「なんで柊くん・・・空中を走れてるの?」


夢中で空を蹴って走っている柊は

途中であることに気づき、止まった。

「あれ?なんで俺走れてんの?こんな所・・」

不思議になって体の箇所を見てみる。

が、異変は無い。

「おっかしいなぁ・・?」

ひゅ。

無防備になって隙を見せた柊の横を、何かが通った。

「?」

頬に赤い線が入って、赤い血が顔をのぞかせた。

手にも、足にも、少しずつ線が入っている。

「なん・・「柊くん!後ろーーーーーーーっ!」

耳に押し込まれたように響いた麻貴の声で

柊ははっと後ろに振り返った。

おかしな化け物が一匹、

今にも柊を食い殺そうと口をあけて襲ってきた。

「わっ・・・」

無意識に手を体の前にカザす。

食われるっ・・・。

しかし、体に襲ってきたのは、咬まれた様な痛みではなく

びしゃびしゃという水音と、生臭い鉄の匂い。

目を開けると、化け物は死んでいた。

「え?」

まわりには柊以外味方は誰もいない。

なのに化け物は死んでいる。

「もしかして・・・」

腕を見ると、今朝はめた手甲が鈍く光っている。

その周りに、ひゅうひゅうと薄い風ができている。

「俺の力かな?」

のん気に手甲を観ていると

後ろから裂くような風音が聞こえた。

がしゃんっ!

危機一髪で振り返った柊の手甲が

さっきより大きな化け物の力を相殺した。

化け物を睨んでいた柊がふっと化け物の後ろを見ると

左の眼を、長い茶色の髪で隠している

青年が見えた。

「・・・・?」

牛車に乗っている。

妖たちが牛車の周りに集まって、きいきい騒いでいる。

青年は柊に笑いかけた。

首が揺れたので、癖の無い髪も一緒に揺れて

隠していた左眼が見えそうになった。

「その男が、冥堂だ」

いつのまにか後ろにいた庵が柊に語りかけた。

庵のピアスの水晶が光る。

眼も鋭く光った。



「姫をさらい、この世界を壊そうとする魔性の男だ」






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