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水晶物語  作者: 寿々
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第十四話・狐のお面

今日はすべての始まり

そしてすべての終わり


「あ、千代。私の漣、返してよ」

慌てふためいたように、千代の顔が青ざめる。

「ももも申し訳ございません!昨日お返ししようと思っていたのにっ」

「いいわよ別にぃ」

両手を床に着き、必死で謝る千代を横目に

凛は空中に手を伸ばした。

「もどっておいでぇー」

すると、ひゅるるるるっと音がして、凛の手に

風が巻きついた。

どうやら、昨日千代が使っていたあの風は

凛のものだったらしい。

『え〜。もう終わりぃ?もっと千代といたかったなーぁ』

「あっちは嫌がってたけどね」

けっと息を吐きながら、凛は自分の唇に

紅を差した。

薄い唇がほんのり紅くなった。

そしてそのまま狐の面を被る。

狐の面はがりがりと不思議な音を立てて

凛の顔に密着した。

あれで息が出来るのだろうか。

「じゃ、儀式を始めようか」 

声が重く変わった。

いつものちゃらちゃらしている凛とは違う

大人びた声。

咲や麻貴の時はこんなんじゃなかったのに。

「あんた達二人の力は計り知れないからね。一応こっちも本気でいくから」

そう微笑すると、傍にあった金箱から

扇子を取り出した。

模様は鶴、そして四季折々の花々。

「我稲荷之神也。風よ。木霊せよ。力を授けよ・・・」

ぶつぶつと天空に向かって呟く。

すると、部屋の隅から天井から、揺らめいた狐が

するすると現れた。

その数およそ数千。

四人はしばらくそれに見入ったが、千代だけはデスクワークをしていた。

そして、狐は舞い始めた。

お酒を飲んでどんちゃん、とかいう洒落たものではなく

ただ、ひたすら、幻想に見入るように

狐達は天に向かって舞い始めた。

「この者に力を分け与えよ!」

狐の舞にあわせ、凛は手を空に差し出し詠唱した。

この詠唱は、神が上の者への敬意を示すために

省かずに言うらしい。

ふぁっと風が舞った。

扇子が凛の手元を離れ、音魁へぶつけられた。

相当痛かったのか、声にならない声を押し殺している。

「・・・っ!!」


部屋の中は穏やかになった。

「それがあんたの力よ。音魁」

音魁が黙ったまま頷く。

黒い髪が顔にかかったが

払おうともせずに扇子を見ている。

「なぁ、凛」

「なに?音魁」

「これ、どうやって使うんだ」

凛の肩ががくりと落ちた。

目線を逸らさないまま、音魁は聞いた。

「いま、頭の中に変な言葉流れてない?

ほら・・え〜と・・・なんつーのかな・・・

聞いた事の無いってゆーか、ちょっとカッコイイ感じってゆーか・・」

説明がめちゃくちゃだ。

「なんか聴こえる。遠くから、何かが・・・・」

「でしょでしょ。それよ!そのうち覚えるから

それを言いながら扇子を閉じたりー開いたりーそれで叩いたりー。

実を言うとあたしも知らないんだよねぇー。

そんな道具はじめて見たしさぁー。

ま、そのうち分かるよ」

なんとも頼りない神様である。

千代が頬杖を付いて溜息をしているのが見えた。

「なによ千代。分からないものは仕方ないでしょ」

矛先が自分に突きつけられた事に驚き

「いいいいいえ私はなにも言っておりませんよっ」

千代はパニくって焦っていた。


「じゃぁ、次。本題+ダークホース!行きますか」

言葉はおかしいのに、不思議な空気が漂う。


柊の番が、来た。

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