第十話・物好きな炎神様
凛が庵にむかって散々わいめいた後、
やっと自己紹介が始まった。
そのころには凛は完全に酔いつぶれて
ばたんきゅー、と倒れたかと思うと
「気持悪いぃ〜」と叫んで
厠に逃げ込んでしまった。
「じゃ、仕方ないので自己紹介でもしてやってください」
めっちゃ偉そうな態度で、千代が皆に言った。
「はいはい。俺からやるよ」
赤髪の男が立ち上がった。
隣にいた少女が一緒に立ち上がる。
少女のような人はみんな、肩が出ている薄い服と
肩と手を除いた腕をかくす布をはめ、
手には手甲をつけている。
ズボンらしきもので下半身を覆い、
足の指が出ているサンダルっぽい靴を履いている。
ちなみに、秦もそうだった。
「俺は炎神の湾。こっちが蘭」
にかっと、湾は笑った、フレンドリーである。
「俺は蘭だ。よろしく」
「よろしく。女の子が俺だなんて、珍しいねっ」
麻貴がにこっと笑って手を差し伸べた。
その瞬間、蘭は麻貴の手をばしっとはたいた。
「!?」
「俺は男だ!女じゃない!」
いやいや、どう見ても女じゃん!
ポニーテルだし、目はくりっとしてて完全に女だし。
「どう考えたって女だろ・・・?」
柊が呟くと蘭は泣きそうな顔になって、うつむいた。
その瞬間。
「う・・・う・・・うわぁぁぁああああーーん!!」
大声を上げて、蘭はびえびえと泣き出した。
顔に手を当てて、目を擦っているところを見ると
やっぱ女だ。
「ふぇぇえええーっ。お・・っ俺は、男だもんっ」
この期に及んでまだ言うか。
「はいはい、泣くな泣くな」
ぽんぽんと、優しく湾が蘭の頭を撫でる。
ひぇっくひぇっくとしゃくり上げながら、蘭は頷く。
「許してやってくれな。こいつ、性同一障害ってやつなんだ」
四人の耳元で、小声で呟く。
性同一障害とは、
体は男なのに心は女
体は女なのに心は男
みたいなやつだ。多分。
「でも、炎神様も物好きだな。こんなめんどげなやつを・・ほげが!」
音魁が失礼な事を悪気なく言い出したので
柊が音魁を拳で殴った。
こいつ、見た目と違ってすっごく失礼な奴である。
しかし、湾ははははっと笑った。
「こういう奴のほうが面白いじゃんか」
抜けてるんだか、天然なんだか、ちゃんと考えてるんだか・・・