再婚夫婦 家を買う
桜の花びらがチラチラと舞う。 春。4月。
朝6時、 パパは玄関で、 私を見上げて「ん。」と細い唇を突き出す。
お決まりになったチューをして、私はククル にリードをつける。
パパは玄関を出て、 黒い パークアベニューの横をすり抜けて 歩き始める。
通勤用の車がある駐車場まで2分、ククルと一緒にあとを追う。
そして「いってらっしゃい 」ククルと手を振って見送る。
いい天気になりそうだ。 さて 洗濯でも始めよう。
私とパパは50歳。 2人ともバツ持ちだけど 、神が降臨して2人で暮らし始めた。 詳しくは 1冊目 「ん。」ー神様は遅れてやってくるーを見て欲しい。 長すぎて ここでは書けない。
で、ここには今、私と無口な強面 イケメンのパパ 、ミニチュアダックスのスーパー オバカ犬ククルくんがいる。
駅から15分、 坂を登ったところにあるこの家は、借家である。
5 DK、 駐車場 1台 、庭付き、6万円。 神に助けられた 一軒家である 。
隣の空き地には鹿が出る。 カブトムシもいる。田舎ではないけれど ちょうどいい自然の残った 優良物件だ。
そんな家で 、私はハローワークに通いながら、ゆるゆるとした日常をスタートさせた。
休日には、ククルを連れてドライブだ。ただし 犬連れの時は パークアベニュー は封印して通勤車だ 。
ちょっと遠出して、 天橋立へ。
はしゃぐ ククル は、車の中で動き回って落ち着きは全くない。すっ転んでも全くめげない。 さすがだ。
駐車場から橋立までは 抱っこ 。アスファルトは短足 ククル く ん に は 暑すぎる。土のところで降ろしてやると、ククルは歩き出して、〝ちっこ〝した。
危なかったー。車じゃなくてよかったー。
2人と1匹 、ゆっくり散策。お弁当を広げると 、くれくれ ククル発動 だけど 、水とおやつでごまかす。
いいね ー。静かな水面を見ながら呟くと、隣でパパも、笑ってる。
やがて 、この家に、私の娘 1号 2号 が住み着く。
娘が帰ってこれるように、と、この家を選んだのだ。お年頃娘 、どうせそんなに長くは居着かない。
母はもちろん OK。 でもパパは、一挙に家族が増えて、めちゃくちゃうるさかったに違いないが、無視だ。
たまに娘が「パパって、 今 機嫌悪い?」って聞く。
いえいえ 、あれが平常運転です。決して仏頂面ではないから、全然気にしなくていいよー。
私がパートに行き始め 、ククルは 昼間 1人 お留守番 。ちょっと寂しいかも、と パートナーを買うことにした 。
ミニチュアダックスフント スムース レッド のココロちゃん。
切れ長 パッチリお目々、ディズニーのお姫様 顔の美形である。
もちろん ククルは大喜びで、一目惚れしている。が、ココロは究極のツンデレ犬だった。
ククルが後ろから迫ると、ススッと逃げて、背後を取らせない。
ククルが追いかけっこに誘うと、結局 立場が逆転して、ココロがククル を追い回す。
でも 寝ている時に、ククルがココロに顎を乗っけても平気 。
きっとココロもククルが大好きなんだ。
大家族になったから、 クリスマスにはチキンを焼こう。
丸鶏 1匹に詰め物をして焼き上げる、ママの定番。
パリパリ 香ばしい皮、ふっくらジューシーな身。鶏のおだしがしゅんだもち米。
ほれ 、よだれ出たでしょ 。絶対食べたいやつでしょ。
出来上がってテーブルに乗せると、やっぱり ククル がテーブルの周りを 駆け出して 、おこぼれを狙っている 。
ザクザク 切り分けて、 みんなで むしゃむしゃ食う。
うんまー♪
あっ!ククル!よだれ!!
ママは、パートに行っている 。引っ越しで、それまでの仕事は行けなくなったからだ 。
過去に、かなりいろんな仕事をやってきた 私は、正直 何でもできちゃう スーパーマルチ人間なのだが、 ハローワークに通って選んだ 仕事は、銀行のランチを作る 調理人である。
選んだ理由は2つ。 まずパパが仕事から帰るまでに、確実に帰宅でき、 平日のみの勤務であること。 そして 40人のランチは、私にとっては楽勝ライン だったこと 。
予想通り 、仕事自体は何一つ 困ることはなかった。問題は、たまにある責任者研修。 勤務後に電車で向かう。 帰りは遅くなる 。
で、たまたま 研修場所が、 パパの会社の近くと分かって、仕事帰りに迎えに寄ってもらうようになった。
だが パパは 、ちょいちょい 忘れる。
最初 、私が朝にちゃんと言わないからだ、と私のせいにする 。
でも、言ってもまた忘れる 。
そして、 ちょっと暗くなった研修所の前でメールする私。
「電車で帰る 。」
私の短いメールを家で見て、私の怒りを察知するパパ。
自宅 最寄り駅前のコンビニ駐車場に車を止めて、 私を待っている 。
さらに、ちょっと にっこりして、ごまかしを図る。
こいつ!絶対忘れない。根に持ってやる!!
そんなママは、パートしながら考える 。
このままでは、私の目指す 持続可能 生活は、どこかで破綻する。
多分、私もパパも年金は少ない。 働けている 今はいいけど、 ずーっと借家暮らしは維持できなくなる。
私は決めた。
ともかく貯金する。
そして 60歳までに、家を手に入れる。
最初、すっからかん で始まった結婚生活だ。
私は、 自分のパート代はできる限り 手をつけずに、コツコツ貯金した。
パパには黙って 。
ちなみに私は、かまぼこ 貧乏 (板についている)歴50年のベテラン。 4年も経つと、少しまとまってきた。
田舎の中古ならあるかもしれない 。
田舎に行きたい。は、私の昔からの夢で、そのうち パパも一緒に憧れ始めていた。
ターゲットは田舎の中古。未リフォームの物件 。パパは 建築系で、リフォームはどうにでもなるからだ 。
パソコンでポチポチ と検索する。パパも、横でポチポチ やっている。
ちょっといいのを見つけると、2人で見て、あーだこうだと意見する。
気になる物件は 、ドライブがてら、 場所と 家の雰囲気を確認する 。
大概は、あーここまで来たら通勤が厳しすぎる。とか、家の周囲がゴミだらけで、きっと 中もあかんやろな。 とか。 外から見ているだけで 問題点が見つかる 。
流行りの古民家 はまず無理。未リフォームは 、水回りの補修 だけでも 費用がかかりすぎる。
あと、ちょっといい物件は、やっぱり高い。
田舎やのに誰が こんな高いの買うんや!と不思議なくらい 、現実がわかっていないのだ。
そのうち、 見つけた。
私は、これや!と思った 。
ちゃんと それなりに広い庭のある一軒家は平屋。
平屋 は滅多に出ない 。パパは「ちょっと 部屋数が少なくないか」って言うけれど 、掃除するのは私だ。 歳とったら 、狭い くらいでちょうど良くなるはず 。
しかし 、ちょっと手元資金では カツカツで、やっぱり 厳しい。 滅多に出ない 平屋。 悔しいけど断念。
帰り道 、車の中で 悔しがる 私に、パパが言った 。
「もう少し待とう。 3年ぐらい頑張れば、きっとまだ出てくる。 俺も 貯めるから 。」
その後 、その家は綺麗にリフォームされて、再売り出し されていた。 値段は3倍になっていた 。
平屋から半年後ー
その家は突然降りてきた。
仕事から帰ってきたパパが、ちょっと興奮気味に指し示したその家は、おそらく、今日アップされたばかりだ 。そして、目が肥えてきた私たちにはわかる。これ結構いい 。
2日後のパパのお休みに、朝から2人 下見に行く。ついでに、 周囲の中古物件も、さらっと見ておく 。
そしてその家の前を通りながら 観察。
私「いいかも 」
パパ「これ屋根 変えてる。 壁も塗り替えしてる。すごくいい 。」
すぐに内見の予約を取った。
翌日、早速 内見 だ 。
「実は、 朝一の内見が、なくなったんですよ 。」と担当者 。
ラッキーにも一番乗りになった。
パパは、 家具もすっかり 処分されている家の中を、ゆっくりと見回す 。
少しの手直しで行けるぞ これは。
私は、玄関や庭も見る。
あー 十分だ。 畑 作れる。ワンコも走れる。
4 LDK 2階建て、駐車場は縦列で3台 。
何より 値段がいい 。周りの 同程度の中古物件の半分くらい。
ちょっと気になって、聞いてみる。
ここ、何かあったとか?
どうやら 、定年後の老夫婦の移住物件だったようだ。 夫亡きあと妻は施設へ行って、娘が売りに出した。 早く処分したかったのだろう。 だから家が荒れていない。こんな状態は、めったに出ない。
ーー速攻、 手付を打った。
350万をさらに320万に値切って、私たちは、 憧れの一軒家を手に入れた。
支払いが終わった。
パパが初めて買った家。 自分の家。 入れ込む 気迫が、エグい。
半年くらいかけて、ゆっくりリフォームしよう 。その間に、 パート代も少したまるやろうし な。そんな 私の計画など全く無視して、せっかちパパは動き出す。
毎週のように通ってリフォームだ。
2階は、ほぼ手つかずでいける 。
リビングダイニングの天井や床は、パパの知り合いに安くやってもらう。
キッチンも入れ替え 、これも パパの知り合い。 どうやら ただにさせたらしい。
トイレもプロにお願いして、 洗面台は、ホームセンターで買ってきて、パパが 付け替えた。
障子や襖の張替え。
少しずつ綺麗になっていく、家。
私は、パパを手伝いながら掃除していく。
リビングの隅の壁に穴を開けて、隣の部屋とつないで、ククルとココロの部屋も作った。
扉を開ければ ワンコ 飛び出す!いい! 絶対にいい!
空っぽのリビングの、張り替えたばかりの床に
パパがゴロンと大の字になる。
窓を開け放した。
幸せそうなパパの横に座る。
パパの横顔が、無言で言っている 。
ありがとう 。
ママと一緒になって良かった。
そうでしょ。
神さまありがと。
うふふっ♪
おまけ
ーレシピ クリスマスチキンー
我が家のクリスマスの定番は鶏の丸焼きです。
すごく 豪華 だけど 、オーブン さえあれば 意外と簡単なので、ちょっとご紹介 しますね。
ー材料ー
丸鶏 一羽 (スーパーにあるよ)
もち米 (1〜2合)
具材 適当に
もち米は洗米して1時間位置いてね。
人参、干し椎茸、豚肉 、生姜などを入れてざっと炒めたら、
水は普通のご飯の8割ぐらい、塩醤油で薄く 味付けをして炊く。
(干しエビとか入れるとめっちゃうまい。中華ちまきのイメージ)
丸鶏は皮にブスブスっと フォークで刺して、塩を揉み込む 。
腹はキッチンペーパーで綺麗に拭き取って、
さっきのもち米の炊いたやつを詰め込んで、爪楊枝で皮を閉じる 。
足と手羽は、タコ糸で結わえて形を整える。
上からサラダオイルを塗る。
で、オーブンにドーン ♪
鶏の大きさで変わるけど 、1時間半位。
200度くらいで焼く。焦げたらアルミホイルかぶせてね。
モモを竹串で刺して、透明な汁が出たらOK♪
まあなんということでしょう〜♥
皮はパリパリ。そこは毎回取り合いになる(笑)
もちろん、もち米なしでも全然 OK
一緒に じゃがいもとか焼いても、これまた旨いのよ〜。
しっかり 我が家の娘たちにも受け継がれてました。よしよし♥




