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ヤンデレ幼馴染に監禁されたけど、快適すぎた。  作者: ChaCha


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8/23

幼馴染の危機。

今のリナは、僕の知る「彼女」ではない。


かつてのリナからは想像もつかないような騒動を、彼女はまるで呼吸するように引き起こしていく。


あの日、神殿。


祝福の光が天から降り注ぎ、白い石床に光の粒子が舞い踊っていた。


その中心に佇む彼女は、残酷なまでに美しかった。


光が真珠のような肌に溶け込むたび、彼女の魔力が甘く、濃密に膨れ上がる。


淡い香りが大気を揺らし、僕の鼻腔をくすぐった。


その瞬間、僕の胸は物理的な衝撃を伴って、どくんと跳ねた。


君が笑うたび。


君が瞬きをするたび。


僕の網膜は、君という存在を焼き付けるために、他のすべてを拒絶する。


あの日を境に、彼女の周囲は目に見えて「害虫」が増えた。


だから僕は、本来なら興味のない茶会の日程をすべて把握し、欠かさず出席するようになった。


理由は、極めて単純かつ論理的だ。


「君を守りたい」


どこぞの騎士が、鉄面皮な顔で愛の告白にも似た誓いを立てる。


「お嬢様、こちらへ」


侍従が、不躾な距離まで踏み込み、その細い指先を差し出す。


……お前たちは、リナの家系に忠誠を誓っているわけではないだろう。


リナは困惑しながらも、器用にそれらをいなしていく。


その仕草は手慣れているようでいて、僕の目には薄氷を踏むような危うさに映った。


慣れているからこそ、いつか足元から崩れるのではないかという恐怖。


そして、事件は僕の目の前で起きた。


「髪に花びらが……」


軟派な青年が、甘ったるい声を出す。


どこにそんなものがある。


透けて見えるような嘘。


口実を並べ、彼女の髪に、肌に触れようとするその指先。


少し目を離せば、これだ。


「リナ! ここにいたのか。ほら、行くぞ。こっちだ」


僕は迷わず彼女の手を引いた。


彼女は僕の顔を見るなり、凍りついた表情を溶かし、心底ほっとした顔を見せた。


その素直さが、僕の独占欲を加速させる。


……可愛い。


半ば強引に、彼女を人気のいない休憩室へと連れ込み、重厚な扉を閉ざした。


ここなら、下俗な邪魔者は入らない。


世界から切り離された、僕らだけの二人の空間。


だが、閉ざされた部屋で二人きりになると、さっきの光景が毒のように脳裏を侵食する。


あの男の指。


リナの髪に、肩に、手に。


触れようとした、あの不浄な指先。


黒い霧のような感情が、肺の奥からせり上がってくる。


「これからは僕の目の届くところにいろ。いいな? 二度と、あんな男に触れさせるな」


自覚があるほど、声が険しく尖った。


けれどリナは、怯えるどころか、僕の言葉を優しく受け入れる。


「うん。本当に助かったわ。ありがとう、ルシアンくん」


……ああ、駄目だ。


こいつは、僕がいないと一瞬で誰かに奪われてしまう。


僕が守らなければ。


僕が「管理」しなければ。


高揚する感情を隠すように視線を逸らし、短く咳払いをする。


「……声を荒らげて悪かった」


沈黙が部屋を支配した、その瞬間。


――ぐうぅぅぅ。


最高にシリアスで、最高に甘美だったはずの室内に、盛大な腹の音が鳴り響いた。


「……」


張り詰めていた僕の肩から、一気に力が抜ける。


よりによって、このタイミングで。


「……ちょっと待ってろ」

 

込み上げる笑いを必死に押し殺し、僕は部屋を出た。


戻ってきた僕のトレイには、山盛りの軽食が乗っている。


前のリナなら見向きもしなかったであろう高カロリーで、

けれど“今のリナ”が何よりも愛してやまないジャンクな食べ物。


彼女は、宝石を見つけた子供のように目を輝かせた。


「ルシアンくん、できる男子だわ!」


無邪気に拍手をする彼女。


僕が選び、僕が用意し、僕が運び込んだものを、彼女は幸せそうに嚥下していく。


僕の管理下で、僕の色に染まっていく。


その光景は、リナを安心させただけでなく、僕の歪んだ心をも深く満たしていった。


だが。


幸福な時間は、あまりにも脆い。


帰路。


馬車乗り場で目にしたのは、半狂乱になったリナの母親の姿だった。


「リナが……リナが攫われたのよ!」


地面には、魔術で拘束された御者が転がっている。


「お嬢様が……危ない……」


血の気が引く。


心臓が、氷を飲み込んだように冷え切っていく。


騎士たちと共に、馬車が消えた方角へ全力で駆ける。


あの花びら男か。


それとも、彼女の輝きに当てられた別の有象無象か。


無事でいてくれ。


頼む。


祈るような思いの中で、胸の奥のどろどろとした感情が、はっきりとした「核」を持った。


守りたい、なんて生温いものではない。


失いたくない。


彼女は、僕の隣に、僕の視界の中に、僕の腕の中に固定されているべき存在だ。


誰にも、触れさせない。


僕の「リナ」に、その汚れた手を出すな。


この瞬間。


僕の中で、淑やかだった「幼馴染のリナ」の残像は、完全に消滅した。


今、僕のすべてを支配しているのは。


笑って、食べて、僕を頼る――今の彼女だけだ。



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