神殿で祝福された。
両親は、朝からどこか様子がおかしかった。
妙に静かで。
妙に優しい。
そして、妙に覚悟を決めた顔をしている。
「リナ。今日、神殿で行われる儀式は……避けては通れない」
父の声は低く、重い。
母は、私の手を強く握った。
ゴクリ。
あれだ。
こういう流れ、だいたい悪い方に転ぶ。
(これ、もしかして“中身チェック”とか?)
私の脳裏をよぎる最悪のシナリオ。
悪霊認定。
異物排除。
浄化。
強制退場。
「……浄化されて、私は消えてしまいますか?」
一瞬。
空気が凍った。
両親の目が、見開かれる。
次の瞬間。
ぎゅうっと抱きしめられた。
「やっぱり、今から逃げましょう?」
「……それは、領民や神殿との関係が……」
あ、まずい質問だった。
「だ、大丈夫ですよ!その時はその時です!」
無理やり明るく笑う。
「もし私がいなくなったら、たまには思い出してもらえると嬉しいです!」
両親の抱きしめる力が、強くなる。
(あ、これ完全にフラグじゃない?)
その日。
私たちは、まるで断頭台へ向かう罪人のような気持ちで、神殿へ向かった。
――が。
神殿、想像以上にすごい。
白い大理石の柱。
高く伸びる天井。
色とりどりのステンドグラスから差し込む光。
空気は澄み、静謐で、荘厳。
(え、観光地?)
同年代の男女が集っている。
どうやら通過儀礼のようだ。
少し安心する。
私だけの公開処刑ではなさそう。
「ここにいたのか」
振り向くと、ルシアン。
彼も両親と共に来ていた。
視線が、私を確かめるように走る。
我が家とルシアン家が合流。
茶会で顔を合わせた令嬢たちも、緊張した面持ちで並んでいる。
澄んだ空気の中。
神官が祈りの言葉を唱え始めた。
低く、厳かな詠唱。
次の瞬間。
きらり、と光が落ちた。
細かな粒子。
祝福の光。
……。
ふって。
ふって。
……ふりすぎじゃない?
しかも。
私の周り、明らかに光量多くない?
ざわざわと、神殿内が揺れる。
神官たちの視線が、一斉にこちらへ向いた。
やばい。
これはやばい。
両親を見る。
真っ青。
ルシアンを見る。
固まっている。
完全に想定外。
神官が、ゆっくりと近づいてくる。
息を止める。
ついに来たか。
排除ルート。
しかし。
目を見開いた神官が、震える声で告げた。
「これは……二柱の祝福を受けし愛子さまだ」
一瞬、理解が追いつかない。
ざわめきが歓声へと変わる。
別の神官が興奮を抑えきれない様子で続ける。
「神々が等しく光を与えるとは……極めて稀なこと」
周囲の視線が、畏敬へと変わっていく。
両親は、ぽかん。
ルシアンは、私から目を離せない。
私は、心の中でそっと呟く。
(……二柱までホイホイしたの?)
異世界、スケールが違う。
消えるどころか。
神殿公認の特別枠になってしまったらしい。
……え。
これ、逆にまずくない?




