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ヤンデレ幼馴染に監禁されたけど、快適すぎた。  作者: ChaCha


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3/27

初めてのお茶会と幼馴染。

季節は春。


庭園は、花でできた絨毯のようだった。


淡い桃色、透き通る白、若葉のやわらかな緑。

陽射しは柔らかく、甘い香りを含んだ風が頬を撫でていく。


ここが“社交界”。


言葉は優雅でも、視線は鋭い。


あの日、絶望の淵から掬い上げられた私は。


この世界の「リナ」として、完璧に振る舞うと決めた。


両親が叩き込んでくれた教養とマナー。

歩幅。指先の角度。視線の落とし方。

微笑みは三秒。


いざ、戦場へ。


見た目は可憐な美少女。


中身は、終電と上司と納期を渡り歩いてきた元OL。


対応スキル、発動。


カップを持つ手は優雅に。

相槌は一拍置いて。

笑うときは控えめに。


「まあ、なんて素晴らしいお嬢様」


母が褒められている。


内心、拳を握りしめる。


よし。


偽物だなんて、まだバレていない。


年の近い令嬢たちと、流行の刺繍や新作の香水の話題で盛り上がる。

言葉を選び、笑顔を添え、空気を読む。


案外、いけるかもしれない。


この世界でも。


そう思いかけた、その時。


「リナ! やっと……やっと回復したのか!」


弾む声。


振り向く。


春の光を受けて、銀色の髪がさらりと揺れた。


紫の瞳。

澄んだ色なのに、底に深いものを抱えている。


整った顔立ちに、隠しきれない安堵が滲んでいた。


近づく足取りは、迷いがない。


「あ……えっと、初めまして……?」


その瞬間。


彼の時間が止まった。


紫の瞳が、ほんのわずかに揺れる。


一呼吸。


「……そうか。本当に、記憶喪失なんだね」


落ちた声は、静かだった。


騒がず、責めず。


ただ、事実を受け入れるように。


「ルシアンだ。リナ、君の幼馴染だよ」


幼馴染、いたかー。


そりゃそうだ。

この顔面レベルなら標準装備だよね。


逃げ場、なし。


「幼馴染、さん……その、また仲良くしてくれますか?」


慎重に。

でも明るく。


彼は、まっすぐに私を見る。


「僕のこと……本当に、何も覚えてないの?」


その問いは、優しいのに鋭い。


胸の奥が、ちくりと痛む。


「ごめんなさい……」


伏せた視線の向こうで、空気が張り詰める。


一拍。


長い一拍。


やがて。


彼は、あまりにも綺麗な笑みを浮かべた。


春の光に溶けるような、完璧な笑み。


「いいよ。じゃあ、思い出せるように、これからいっぱい一緒にいよう。ね?」


やわらかい声。


穏やかな提案。


中身が入れ替わってるから、一生思い出せないんだけど。


それは言えない。


ここで拒否は、不自然。


快諾、一択。


「うん! ありがとう、ルシアンくん」


彼の瞳が、ほんの少しだけ細められる。


その奥に、一瞬だけ。


何かが、沈んだ気がした。


――それが、始まりだった。


その日から。


ルシアンは当然のように、我が家へ通うようになった。


春の庭を抜けて。


迷いなく。


まるで、ずっとそこにいたかのように。

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