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ヤンデレ幼馴染に監禁されたけど、快適すぎた。  作者: ChaCha


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いつから知ってたの?

熊の咆哮は、数分後には嘘のような静寂へと変わっていた。


父と騎士たちの連携は完璧だった。


巨躯は地に伏し、森は何事もなかったかのように平穏な風を取り戻す。

鼻腔を突く生々しい血の匂いと、どこまでも残酷に突き抜ける高原の青い空。


その青が、網膜を刺すほどに、やけに澄みすぎていた。


「リナ……大丈夫か?」


「ちょっと、びっくりしたけど……大丈夫よ」


そう答えた自分の声が、やけに遠い。

まるで深い水の底から、水面へ向かって叫んでいるような感覚だった。


足元が、ぐらりと揺れる。


視界の端から、どろりと濃密な闇が侵食してくる。


――冷たい。


それが、私の意識が最後に捉えた、この世界の温度だった。



次に目を開けた時、天井が頼りなく揺れていた。


いや、揺れているのは天井ではない。私の意識の輪郭だ。


全身が、内側から焼かれるように熱い。

喉は砂漠のように乾き、肺に滑り込む空気ですら剃刀のように鋭い痛みを伴う。


それなのに、指先ひとつ動かす力も残っていない。


私の身体は、すでに私の所有物ではないかのようだった。


誰かが、私の名前を呼んでいる。


「リナ……」


低く、掠れた、祈りのような声。


額に触れる布が何度も取り替えられているのがわかる。

ずっと握りしめられている手の温度だけが、やけに現実的で、痛いほどに熱い。


「今の君が、消えてしまうのが怖い。……リナ。魂を繋ぎ止める方法が、この世界に必ずあるはずだ。禁忌だろうと、俺が必ず見つけ出す」


魂を、繋ぎ止める……?


朦朧とする意識の奥で、胸のどこかが軋んだ。


ルシアン。


あなた、いつから知っていたの?


それとも、最初から気づいていたの?


私が、あなたの知っていた「本来のリナ」ではないことに。


その空っぽの器に、どこからか紛れ込んだ「別の誰か」であることに。


問いは、答えを得る前に、熱の中に溶けていく。


意識が、再び沈んでいく。


光も届かない、暗く深い水の底へ。



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