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ヤンデレ幼馴染に監禁されたけど、快適すぎた。  作者: ChaCha


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20/23

あるうひー森のっなぁかー

すっと、自然な動作でタオルが差し出される。


私はてっきり侍女だと思い、「ありがとう」とお礼を言おうとして振り向いた。


――そこにいたのは、あの護衛騎士だった。


「どうぞ、リナ様」


にこり、と。それはもう爽やかな笑顔である。


「あ、ありがとう」


思わずつられて微笑み返すと、騎士はぽっと頬を赤らめた。


その瞬間。


世界の温度が、一気に氷点下まで叩き落とされた。


「――護衛は、護衛らしく分を弁えて控えていろ」


低く、冷え切った、地這うような声。


「ちょっとルシアン! 私の騎士にそんな尊大な態度はやめてくれる!?」


食ってかかった私の言葉を、ルシアンは奇怪なものでも見るかのように繰り返した。


「……『私の』……騎士……?」


誰が呟いたのか、判別できないほど掠れた声。


その言葉が落ちた瞬間。


ルシアンから放たれる気配が、明確に「殺意を帯びた魔力」へと変質した。


空気が重く沈む。

息が詰まる。


「リナ! 俺を見ろ!」


「わっ! なになに!? 急に肩を掴まないでよ!」


「いいから深呼吸をして、俺だけに集中するんだ。他を視界に入れるな!」


いきなり始まった謎のスパルタ。


……あ、これいつもの実験ね?


「ひっひっふー」


(あ、違うなこれ……出産の練習になっちゃう)


「スー、ハー、スー、ハー……」


指示通り、数回深呼吸をしてルシアンの瞳を真っ直ぐに見つめる。


揺らぎのない紫の焦点。

私の網膜を、魂ごと焼き切らんとするほどの凝視。


「いい……。そのままだ。俺だけを見ていろ」


その瞬間。


森の木々が、悲鳴を上げるように一斉にざわめいた。


何千、何万という鳥たちが空を覆い尽くさんばかりに飛び立ち、高原の風が物理的な圧を持って私を押し包む。


ズシン。ズシン。


地面が、地鳴りのような震動を始めた。


え、何。


何が来るの……?


茂みを強引に押し分け、圧倒的な質量を伴って姿を現したのは、巨躯。


見上げるほどの毛皮に覆われた、森の主。


わぁ……おっきな、おっきなクマさーん!


「ルシアン! リナを守って即座に邸へ戻れ!」


父の鋭い号令が飛ぶ。


「俺も加勢します。リナ、下がっていろ」


ルシアンの即答。


「え!? ちょっと!? 私はとりあえず全力で逃げればいいのよね!?」


「リナ様! こちらへ!」


侍女と騎士が瞬時に私を囲み、防衛陣形を組む。


弓が限界まで引き絞られ、剣が鞘から抜かれる鋭い音が響く。


熊は天を突くような咆哮を上げ、地面を力強く蹴った。


鹿。猪。そして、熊。


……ねぇ、出てくる動物が少しずつランクアップしてるの、ちょっと笑えないんだけど。


全然笑えないはずなのに。


私の胸の奥が、何かに共鳴するように微かに震えた。


呼応するように、森全体のざわめきが激しさを増していく。


混乱と怒号が飛び交う戦場のような空気の中で。


「……やはり、そうか」


ルシアンのその声だけが、恐ろしいほど静かに、私の鼓膜へこびりついた。



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