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ヤンデレ幼馴染に監禁されたけど、快適すぎた。  作者: ChaCha


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異世界でもホイホイ

あの日、あの階段から落ちた瞬間。


私はすべてを置いてきたつもりだった。


けれど、どうやら“それ”だけは、魂の隙間にこびりついて離れなかったらしい。


私は昔から、少しだけ「普通じゃない」好意を向けられることが多かった。


補習と称して密室に呼び出され、延々と朗読をさせられたこともある。


背後では、荒い息遣い。


バイト先では、汚れた私物を「拾った」と言い張り、なぜか新品とすり替えて渡してきた先輩もいた。


「一緒に残業できることが癒やしだ」と、深夜のオフィスで瞳を湿らせていた上司。


そして――。


自室で「おかえり」と笑っていた、見知らぬ男。


いや。


ホイホイ能力の癖が強すぎるのよ。


どうせなら爽やかな王子様とかさ。


贅沢は言わないから、せめて話の通じる人を寄越してほしかった。


唯一の救いは、彼らが“鑑賞”や“収集”に執着するタイプだったこと。


実害が出る前に、なんとか回避できていた。


トラウマにはならなかったけれど。


代わりに私の恋愛運は、異世界転生を果たすまで更地のままだった。


異世界での生活は、思いがけず快適だった。


残業もない。


納期もない。


ふかふかのベッド。


温かい食事。


そして何より、“魔法”という未知の力。


「……すごい」


指先に意識を集中させると、微かな熱が宿る。


この身体の本来の持ち主――リナには、治癒魔術の才能があったらしい。


両親は「記憶を失った娘」を不憫に思い、付きっきりでこの世界の常識と魔術の基礎を教えてくれた。


ごめんね、本物のリナちゃん。


でも君の人生、私が責任を持って最高に満喫させてもらうからね。


基礎を学び終え、邸での生活にも慣れてきた頃。


私は初めて、邸で開かれるお茶会に参加することになった。


朝から、母や侍女たちが慌ただしく行き交っている。


鏡の前で、慣れないドレスに身を包む。


その時。


控えめなノックの音が響いた。


「リナ様、御髪を整えてもよろしいでしょうか?」


今日はいつもの侍女ではないらしい。


まあ、お茶会で忙しいのだろう。


「あ、お願いします」


背後に立った侍従が、銀の櫛で丁寧に髪を梳き始める。


うっとりするほど滑らかな手捌き。


けれど。


……。


……。


なんだろう。


視線が、妙に熱い。


それに。


首筋に触れる指先、ちょっと多くない?


「……あの、くすぐったいです」


ぴたり。


動きが止まる。


次の瞬間、重い吐息がうなじにかかった。


「申し訳ございません。あまりに……美しいもので」


掠れた低い声。


その刹那。


ドアが勢いよく開いた。


「申し訳ありません! 呼び出しを受けたのに人違いだと言われて足止めを――って、えっ?」


息を切らした侍女。


私の首筋に指を這わせたままの侍従。


視線が空中でぶつかり合い、しん、と静寂が落ちる。


……この空気。


知ってる。


デジャヴだわ。


まさか。


いや、まさか。


このホイホイ能力、異世界まで連れてきちゃったの?


関税とかで引っかかって、日本に置いてきてよ。


結局、侍従は最後まで満足げな表情で髪を整え、退出していった。


残された侍女が、顔を青くして詰め寄る。


「リナ様!

 あの……彼は普段、あんな風に振る舞う人ではないのです!

 本当に、信じてください!」


「……あ、大丈夫です。慣れてるので」


鏡越しの自分が、少しだけ遠い。


美しく結い上げられた髪は、執念めいた完璧さで整えられていた。


マジかー……えー……。


逃げた先が、異世界。


でも。


寄ってくる男の性質は、やっぱりハードモードだった。



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