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ヤンデレ幼馴染に監禁されたけど、快適すぎた。  作者: ChaCha


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17/27

高原で川釣り。

翌日、私は両親と共に念願の川釣りにやってきた。


高原の朝はひんやりと澄んでいて、

川面はきらきらと陽光を弾き、せせらぎの音はどこまでも心地いい。


……はずだった。


「……あれ? 私の知ってる川釣りとルールが違う気がする」


釣り竿を構えて、わずか数分。


ぽちゃん。びちびちびち!

ぽちゃん。びちびちびちびち!


気づけば、魚が面白いように集まってきていた。

というか、寄ってくるというより……もはや

「一刻も早くリナ様のバケツに入りたい!」と言わんばかりの猛烈な押し寄せ方である。


網を入れれば、

もはや「漁」ですらない「収穫」状態。


「……思っていた川釣りじゃないよね、これ」


しみじみ呟いた直後、背後の茂みがガサリと大きく揺れた。


ひょっこり現れたのは、

「山神」と言っても差し支えないサイズの巨大なワイルドボア(猪)だ。


「……でかい。そして、美味しそう」


私が呟くのと、父と騎士が動いたのは同時だった。


一瞬。本当に一瞬。


次の瞬間には、ワイルドボアは芸術的な手際で仕留められていた。


「リナ、お前がいると食卓が豪華になるな! はっはっは!」


「あなた! 素敵! さすが!」


「惚れ直したかい? ハニー♡」


高原に響き渡る、親バカとバカ夫婦のイチャイチャ会話。


(来年には、弟か妹ができたら嬉しいな……)


あまりの光景に、私は遠い目で現実逃避をしてみた。


「ね? 君もそう思うよね?」


肩に乗っているリスに話しかけてみる。


「きゅ!」


「……え、意思疎通できる? 右手上げてみて!」


「きゅ!」


……鳴くだけ。


「じゃあ、まわってみて?」


「きゅ!」


……鳴くだけ。


(ちっ、言葉の壁は厚いか……。一度はやってみたかったんだけどな、プリンセスごっこ)


そんな私の様子を、両親が微笑ましく見守っている。


「可愛いですね、リナ様」


「このもふもふ感が最高なのよ」


返事をした私を、騎士が笑顔のままじっと覗き込んできた。


その視線に、ほんのわずかに――熱に浮かされたような、粘つく違和感が混じる。


(あれ……?)


けれど、その違和感は侍女の声にかき消された。


「リナ様、そろそろお戻りになる時間です」


「はーい!」


大量の川魚と、巨大なワイルドボア。


洋館へ戻ると、留守番をしていた使用人たちは大興奮だった。


「これは宴ですね! さすがリナ様だ……!」


違う、私の功績じゃない。

全部動物たちが勝手に身を投げ出してきただけなの。


でも、避暑地最高。

楽しい。平和万歳!


――そう思っていた。


夕方。


夕食のボア料理が楽しみだな、とお腹を空かせていた時間帯。

高原の空気がひんやりと冷え込み、窓の外では夕陽が山の稜線を真っ赤に染め始めていた。


コンコン。


「ん? お母様かしら」


ガチャ、と扉を開ける。


「――俺を置いていくなんて、ひどい婚約者もいたもんだよね?」


バタン!!


私は無意識に、全速力で扉を閉めていた。


……やってしまった。手のひらに伝わる扉の感触が冷たい。


「今のは流石に傷つくぞ、リナ! 扉を開けてくれ。

 ……開けてくれないなら、魔法で鍵ごと消し飛ばしてもいいかな?」


扉の向こうから聞こえるのは、

穏やかで、けれど逃げ場を一切与えないルシアンの声。


なにこの、「きちゃった♡」みたいなノリ。


ここ、王都から馬車で数日の距離だよ? 徹夜で馬を飛ばしてきたの?


高原の静寂が、一瞬で「ルシアンの被験者」という名の重圧に塗りつぶされていく。


避暑地。平和。楽しい。


……の、はずだったのに。


私の「快適な夏休み」に、真っ黒な暗雲(婚約者)。


いや、逃げられない被験者の夏になったと思った瞬間だった。



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