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ヤンデレ幼馴染に監禁されたけど、快適すぎた。  作者: ChaCha


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16/23

夏は避暑地で。

季節はもう、すっかり初夏だ。

じんわりと肌が汗ばむ陽気に、庭の花々も心なしか項垂れているように見える。


そして――。


「ねぇ、ルシアン。君、もう我が家に住所を移してるんじゃない? ってくらい入り浸ってるわよね。主に私のパーソナルスペースに」


朝食からお茶の時間まで、気づけば隣にいる。

もはや家族の肖像画の一部と化しているルシアン。

こんにちは、もはや「被験者」という役割が日常の一部になってしまったリナです。


「本当に、あれから熱も出てないし、元気いっぱいなの! だからその『元気ハツラツ魔導具』の実験、今日で終わりにしましょうよ!」


ルシアンは記録用のノートから顔を上げることなく、冷徹に言い放った。


「ダメだ。再発する可能性はゼロではない。……万が一、君の体調が悪化し始めたらどうする」


便利な言葉である、

「可能性」。ゼロでない限り、この観察は終わらないらしい。


そんなわちゃわちゃした日々を経て、夕食の席。


「そろそろ夏も本格的になる。今年も、避暑地へ行こうか」


父の言葉に、母がぱっと顔を輝かせた。


「そうね! リナと久しぶりに川遊びもしなくては。涼しい高原なら、リナの体調もより安定するでしょうし」


避暑地!


「お父様! 一緒に川釣りをしましょう! お母様も、採れたての魚を塩焼きにして……!」


思わず身を乗り出す。

涼しい高原、冷たい川、のんびりとした時間。


最高ではないか。


私はさっそくルシアンへも手紙を出した。


『しばらくの間、被験者はお休みします。ピクニック同様、お詫びに美味しいお土産と空気のお裾分けでも送るわね!』


準備を終え、私たちはのんびりと避暑地へ向かった。

緑溢れる高原に建つ瀟洒な洋館。白い壁に蔦が絡み、木々の影が揺れている。

空気はひんやりとしていて、深呼吸するだけで肺の奥まで洗われるようだ。


侍女たちが荷を解いている間、私はさっそく洋館の探検をすることにした。

隅々まで管理が行き届き、湿気も少なく、最高に過ごしやすい。


「リナ様。お足元にお気をつけください」


護衛の騎士が、そっと紳士的に手を差し出した。


「ああ、本当だ。少しぬかるんでるわね。ありがとう」


私は素直にその手に自分の手を添えた。

騎士はにこやかに微笑み、他愛のない世間話をしながら、私の歩調に合わせてゆっくりと歩いてくれる。


ぬかるみは、数歩ですぐに越えた。


……それなのに。


手は、まだ、離れない。


「……もう大丈夫よ。そろそろ離してもらえる?」


問いかけると、騎士の完璧な笑みが一瞬だけ固まった。


「……っ、失礼いたしました。かしこまりました」


そう言いながらも、

離れ際、彼はきゅっと私の指先を

――壊れ物を掴むような強さで握り込んだ。


しん、と高原の空気が止まる。


「あの……?」


その瞬間。


逃げ場のない悪寒が、ナイフのように背筋を走り抜けた。


同時に、騎士が何かに弾かれたように目を見開く。


「申し訳ございません! 私は……っ、私は何を……!」


即座に手を離し、彼はまるで罪でも犯したかのように距離を取った。


何事もなかったかのように、涼しい風が吹き抜ける。


……ほんの一瞬の出来事。


けれど、私の指先に残ったわずかな熱が、なぜか妙に生々しく、粘りつくように感じられた。


(今のゾクッとしたのは……風? まさか、高原で風邪を引いちゃったとか!? せっかくの川釣りが中止になったら泣いちゃう、気を付けなくちゃ!)


私は自分の体調管理に気を引き締め直した。



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