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ヤンデレ幼馴染に監禁されたけど、快適すぎた。  作者: ChaCha


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10/23

婚約者ができました。

「婚約者が決まった」


……へ?


先日、誘拐されかけて絶賛トラウマ引きずり中のリナです。こんにちは。


あまりに唐突な発表に、口に含んだ紅茶を本気で吹き出しそうになった。


父は、かつてないほど真面目な顔で言葉を継ぐ。


「未遂とはいえ、あのような事態を招いたのは私の不徳だ。……今後のリナを、物理的にも社会的にも守る必要がある」


なるほど。


「乙女の証明」がなされたとはいえ、ああいう“強引に既成事実を作れば勝ち”みたいな不届き者が、今後も現れないとは限らない。


だから婚約者。


名実ともに“この娘には既に守り手がいる”という、不可侵の盾を立てるわけだ。


私を守るため、か。


「ありがとうございます、お父様。ぜひ、そのお話を進めてください」


自分でも驚くほど、素直に頷いていた。


正直、あの拉致未遂は怖かった。


この快適な“異世界お嬢様ライフ”を守るためなら、盾の一枚や二枚、喜んで受け入れようじゃない。



コンコン、と控えめなノック。


「お客様が到着されました」


父が立ち上がり、私へ大きな手を差し出す。


エスコートされるまま、私はまだ見ぬ“盾”――もとい婚約者殿に会うため、応接室の扉をくぐった。


そこにいたのは。


ひまわりが咲いたような満面の笑みを浮かべた、ルシアンだった。


あ。


なるほど。


ルシアンの両親が、春の陽だまりのように穏やかに微笑む。


「昨日は本当に心配しましたよ。ご無事で何よりです、リナさん」


「いえ、ルシアンのおかげで無事に済みました。本当に感謝しております」


母がそっと背中を押す。


「リナ。これからはルシアンから離れてはいけませんよ?」


あ、そういう流れ。


え? 本当に?


昨日の今日で、幼馴染が婚約者にジョブチェンジするって、そんなにトントン拍子でいいの?


「一生涯、君を守ってあげる!」


ルシアンは私の手を両手で包み込み、迷いのない宣言を放った。


その瞳は、馬車の扉を蹴破った時と同じ熱を宿している。


私は深く頷いた。


「わかった。じゃあ、私が独り立ちできるその日まで、よろしくお願いします!」


――ぴしり。


室内の空気が凍りついた。


父が咳払いをし、


母が「あらあら」と目を伏せ、


ルシアンの両親が微妙な顔でこちらを見る。


あれ?


何か間違えた?


それでも話は驚くほどスムーズに進み、


私たちは「幼馴染」から「婚約者」へと進化した。


その日を境に、私は彼を呼び捨てにするようになった。


「ルシアン!」


振り向いた彼の頬を、指先でつん、と突く。


前世のドラマで見て、ずっとやってみたかったやつ。


ルシアンの顔が一瞬で真っ赤に染まる。


「な、なんだよ、いきなり」


「ほっぺにツン。婚約者の特権だよ」


「その特権の使い道が根本的におかしいだろ……」



数日後。



「リナ!」


「なぁーに?」


今度は彼が、照れながら指を伸ばしてくる。


つん。


「ぷはっ……引っかかった……!」


子供みたいに嬉しそうに笑うルシアン。


“一生守る”なんて大見得を切ったくせに、


こういう些細ないたずらであっさり崩れるところが、彼らしくて可笑しい。


私たちは、以前よりずっと近くなった。


このまま穏やかな婚約期間が続くのだと、疑いもしなかった。


けれど。


数か月後。


私の誕生日を目前に控えたある日。


私は突然、逃げ場のない高熱に襲われた。


意識が熱に溶ける。


視界が歪む。


遠くで、両親の声が重なる。


「身体の成長と、魂の定着が……」


「まだ安定していないのか……このままでは、また……!」


母が、冷えた私の手を握り締める。


「大丈夫よ、リナ。愛しているわ。さあ、これ、飲める?」


いつものポーション。


喉を焼く苦味。


ごく、ごく、と飲み干す。


安心するはずの味なのに、


どこか遠い。


滲む視界の向こう。


ルシアンが、私の枕元へ膝をついた。


「僕が、リナを……今の君を、絶対に守る」


それは宣言ではない。


誓いでもない。


対象を逃がさないと決めた者の、静かな決意だった。


私は、そのまま深い闇へと沈んだ。


……目を覚ました時。


私は、本物の“リナ”の誕生日を越えていたらしい。


まるで。


誰かが見えない糸で、私の魂をこの身体に縫い止めたかのような。


奇妙な違和感を残したまま。




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