第7話 【 主たる神の言葉《ロゴス・エヒイェ》 】
「ヨハネ……だとッ!! なぜ、聖人がそんなことを……!?」
美佑は驚愕していた。
聖人であるヨハネが、なぜ人間の敵として立ちはだかったのか。
そもそも、なぜここに聖人がいるのか。
そんな考えが脳内を埋め尽くす。
『『なぜ…か。そんなの決まっているだろぅ。
我が主たる神の望みだからだ。願望だからだ。野望だからだ。
そんな主の望みを断るわけにはいかないだろう?』』
「神の…願望?」
『『そうだ、主は望んだ。
「現代の人類は罪を抱えすぎだ。今一度、その罪を洗い流し、洗練された人類へと還るのだ」
と』』
ヨハネは続けて言う。
『『人類は罪を抱え過ぎたのだ。無害の者を脅し、晒し、殺す。
そんな人類はもぅ、この世にはいらないと言っているのだ。
だから――!!』』
無数もの腕を頭上にあげ、それを振り下ろす。
撃ちつけた拳を中心に、床にひびが入るとともに、地響きと衝撃波が詩織たちを襲う。
「そ……それと、声を奪うことの何が関係あるの!?
そんなことをしたって、人類の罪は消えない――」
詩織の叫びにかぶさるように、ヨハネは言う。
『『馬鹿が!!
「口は災いの元」と言うように、言葉からも罪は生まれているのだ!!
ならば、まずは言葉を奪う方が効率がいいだろう?』』
確かに言葉を失えば、”言動からの罪”は無くなるだろう。だが――
「そんなことをすれば、次は行動による罪が増えるに決まってる!!」
『『そんなの分かっている。
”まずは”と言ったはずだ。ゆくゆくは行動も制限する……いや、そうだな』』
ヨハネがにやりと笑う。
『『確かにそんな小さいことをしなくてもいいかもなぁ。
初めから、人類を創り直せばいいんだ。そうだ。そうすれば、罪も穢れも――
主たる神の死さえも、無かったことになる!!』』
『『はははははははッ!!ありがとう、礼を言うぞ』』
いらないことを言ってしまった。
マズい、このままだと人類が、世界が終わる。
動け。
動け。
今動かなくてどうするッ!!
『『……まぁ、その前に邪魔なお前らを甚振ってからにしようか』』
ヨハネが詩織たちの方を見る。
無数の腕が動く。
その姿はまるで、千手観音のようだ。
『『終わりだ、貴様らはもう』』
手のひらから無数の光の球が現れる。
その光が詩織たちを囲む。
『『主たる神の言葉』』
その言葉と同時に、光の球が爆ぜた。




