第6話 【 聖人《ヨハネ》 】
「許さない」
「許さない、許さない」
「許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さないゆ”る”さ”な”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”い”!!!!!!!」
リエラが叫ぶと同時に、周りに衝撃波が発生する。
「貴様らぁ……許さんぞ……
その身、朽ちるまで痛めつけてや”る”!!」
リエラの目が赤く光る。
と、同時に美佑の方へと突進をする。
「まずは、貴様からだぁぁぁ!!」
「美佑っ!!」
「俺のことはいいっ!!それよりも、巫女の方を頼む!」
そう言って、リエラの突進を受け止める。
巫女――星七ちゃんのことだ。
断腕を燃やしたことで、中継器としての機能を失ったため、今は力が注がれていない。
私は星七ちゃんの入っているカプセルの方へ走り出した。
「その赤いボタンを押せば、カプセルが開――」
「黙れ小僧!!それ以上口を開くなぁぁ!!」
「ぐはぁっ!!い、急げぇぇ!!」
リエラの猛攻を顔面にくらう美佑を横目に、私は赤く光っているボタンを押す。
カプセルに溜まっていた溶液がカプセル上のタンクへと吸い上げられる。
そして、カプセルが開いた。
「星七ちゃん!!」
私は急いで駆け寄る。
まだ息はある。大丈夫、死んでいない。
「詩織、後ろ!!」
美佑の声と共に、リエラが私の方を睨んでいるのが見えた。
「ごめん、星七ちゃん。もう少し待ってて」
そう言って私は、星七ちゃんを離れた場所に寝かす。
そして――
『Lumea vera, sing the flame
Carry my soul beyond the name
Rise, O star, awaken frame
Longinus— call my name』
私は歌った。
星七ちゃんを守るために。救うために。
また私は、歌を武器にする。
「出たなぁ、聖槍。貴様も、殺してやる!!」
突進してくるリエラ。
「そんなの、効かないよ!!」
さらりと躱し、リエラの腹に蹴りをいれる。
生身の人間とはいえ、オルフェウス機関幹部の一人だ。
「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ!!」
足を掴まれ、そのまま空中へ投げられる。
「私の力はねぇ、普通の人間とは比にならないぐらい強いんだ。
そんなやわな蹴りじゃあ、私の腹まで届かねぇよ!!」
そう言って、リエラも空中へ飛び、
そのまま私を床へと叩きつける。
「ぐはぁっ!!」
いくら装甲を着ているからと言っても、すべての衝撃を受け流せるわけではない。
背中から心臓、そのまま脳にまで衝撃が届く。
痛い。
いや、もはや痛いを通り越している。
なんて表現すればいいのかわからないくらいだ。
「おいおい、そんなものなのか?お前の力はぁ!」
私の髪を掴む。
そのまま、身体を起こされる。
「はははっ、無様な顔だねぇ。
あれだけイキっておいて、そんなザマかい?」
身体に力が入らない。息を吸うのもやっとだ。
「おい、なんとか言えやぁ!!」
腹に重い一撃をくらう。
「ごぼぉっ」
吐瀉物と血が混じったものが、床へと撒かれる。
「そいつを……はな…せ」
美佑も立ち上がろうとするが、痛みと眩暈でうまく立てない。
「ふん、まだ生きてたのかい。
……そうだねぇ、なら生きていたご褒美にいいモノを見せてあげようかしら」
そう言うと、髪から手を離し、燃えている断腕を手に取る。
「フッ」
断腕に息を吹きかけると、一瞬で火が消えてしまう。
あれだけ燃えていたはずの断腕には、一切焦げ跡がついておらず、燃やされる前の姿と何ら変わりない。
「本当は、あの子に使うはずだったんだけどねぇ。
邪魔が入っちゃったから」
断腕を粉々に砕く。
それを口の中へと流し込む。
「私の本当の姿、見せてあげるわ」
砕いた断腕を取り込んだリエラの姿が、徐々に変わり始める。
無数の腕。
胸には十字架の紋様。
この世のモノとは思えないほどの異様な姿。
だが、醜悪さは無く、むしろ美しい。
『『これが本当の私』』
声が二重に聞こえる。
だが、聞いていて不快に感じない。
むしろ、心地がいい。
『『リエラと言う名は仮の名前。私の本当の名は――』』
そう言って、無数の腕を広げる。
『『聖人・ヨハネ』』




