第25話 【 決着 】
双星の太刀・炎神絶槍が振り抜かれた瞬間。
世界が、真っ二つに割れた。
白い大地。
空の円環。
無数の記憶。
すべてが裂ける。
旋律が空間を削ぎ、
炎が存在そのものを焼き払う。
カーマの巨体に、一直線の断裂が走った。
無数の腕が止まる。
鎖が崩れる。
領域が崩壊する。
「……あら」
声が、戻っていた。
重なっていた無数の声が消え、
たった一人の声になる。
巨大だった身体が縮んでいく。
黒い粒子が剥がれ落ちる。
翼が崩れ、
円環が砕け、
神話が終わる。
ドサリ、と音がした。
カインが地面に膝をつく。
もう立てない。
もう戦えない。
ただ呼吸だけが残っている。
「……強いのね」
乾いた笑いが漏れる。
「ほんと、つまらないくらいに」
美佑は炎を収めない。
杖を構えたまま近づく。
警戒は解かない。
カインはそれを見て、
小さく肩をすくめた。
「もう無理よ」
「これ以上は……動けない」
空気の中に、黒い粒子が混じり始めている。
身体が崩壊を始めていた。
「……ねぇ」
カインが詩織を見る。
その瞳には、
狂気ではなく、
ほんのわずかな疲れがあった。
「美空ちゃんを探してるんでしょ?」
詩織の心臓が跳ねる。
「……どこにいるの」
カインは空を見た。
崩れていく世界の残骸を見ながら。
「北の廃都」
「研究施設」
息が乱れる。
粒子が肩から崩れ落ちる。
「急いだほうがいいわよ」
「賛歌者ちゃん……もう限界だから」
美佑が目を細める。
「なんで教える」
カインが笑う。
弱く。
「だって」
「最後くらい……“愛”っぽいことしたいじゃない」
風が吹いた。
その身体が、
砂のように崩れ始める。
指先が消える。
腕が消える。
「アタシね」
ぽつりと言う。
「ずっと愛を集めてたけど」
「結局」
「自分は一度も愛されたことなかったのよ」
詩織が言葉を失う。
カインは静かに目を閉じた。
「だから」
「愛の神の力を授かったの」
カインが微笑む。
「あなたたちがちょっと羨ましいわ」
次の瞬間。
身体が完全に崩れた。
黒い粒子が舞い上がる。
光に溶ける。
そして――
消えた。
静寂が訪れる。
領域が完全に崩壊する。
元の廃ビルの空間に戻っていた。
遠くで炎が燻っている。
詩織が息を吐く。
歌が止まる。
音装が静かに光を失う。
美佑が杖を肩に担ぐ。
「行くぞ」
詩織は頷く。
瞳には、もう迷いはなかった。
「北の廃都」
「研究施設」
二人は歩き出す。
次の戦場へ。
美空を救うために。




