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戦唱魔導録アリアスコード  作者: 音律科学附属高等学校 音装部
第1章 【 愛《カミ》と双星《ツインスター》 】

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第21話 【 愛の結晶 】

 ライトの中心で、影がゆっくり歩み出る。


 ヒールの音が、やけに大きく響いた。


 コツ


 コツ


 コツ


 涙で滲む視界の向こうで、青い髪の人物が口元を歪める。


 「期待してたのよぉ?」


 「だってあなた、”第二の器(セカンド・ヴェッセル)”なんでしょ?」


 カインはしゃがみ込み、詩織の顔を覗き込む。


 冷たい指が顎を持ち上げた。


 「なのに」


 「この程度で壊れちゃうなんて」


 「ほんと……つまらない」


 詩織の身体が震える。


 声が出ない。


 喉が閉じている。


 呼吸すら、うまくできない。


 「ほら」


 カインが指を鳴らす。


 乾いた音。


 その瞬間――


 拘束されていた”美空”の身体が、ぐにゃりと歪んだ。


 血が逆流するように引き戻されていく。


 肌がノイズのように崩れ始める。


 「……は?」


 詩織の目が見開かれる。


 次の瞬間


 人の形を保てなくなった”それ”は、

 ただの黒い粒子の塊へと崩れた。


 「偽物なの」


 カインが楽しそうに笑う。


 「あなたが壊したのは」


 「アタシの”おもちゃ”」


 「愛の深さを測るための、ね♡」


 詩織の呼吸が止まる。


 「……じゃあ」


 声が掠れる。


 「……美空は」


 「さぁ?生きてるんじゃない?」


 疑問形で返された。


 「……あんたが、攫ったんでしょ?」


 「そうだけどぉ、今あの子を見てるのは」


 「賛歌者(ヒュムノス)ちゃんだからねぇ」


 「どうなってるか、アタシもわからないのよぉ」


 胸の奥が冷えていく。


 ここには、いない。


 その現実が、遅れて理解として落ちてくる。


 「しっかしねぇ」


 カインの目が細くなる。


 「あなたはもう駄目ね」


 その瞬間、空間が歪んだ。


 詩織の足元に巨大な影が落ちる。


 黒い


 ただただ黒い”人型の何か”が、そこに立っていた。


 「これはねぇ」


 カインが誇らしげに腕を上げる。


 「何億もの愛から集めて作ったアタシの作品」


 「愛の結晶よ」


 低く、重い鼓動。


 「恋愛」


 「家族愛」


 「友情」


 「自己愛」


 「物への執着」


 「平和を願う祈り」


 「その全ての愛を、これに集めたの」


 詩織の身体が凍りつく。


 「美しいでしょう?」


 「……なんでそんなこと」


 「なんで?」


 カインは微笑む。


 瞳の奥が狂っていた。


 「決まってるじゃない」


 巨大な存在が、ゆっくりと脈動する。


 空気が重くなる。


 呼吸が潰れる。


 心臓が握り潰されるような圧力。


 「”愛する人”のためよ」


 詩織は今だ動けない。


 立てない。


 歌えない。


 カインが耳元で囁く。


 「あなたも、ここに入るのよぉ?」


 「もちろん、あの子も一緒に」


 詩織の瞳から光が消えかける。


 そのとき


 遠くから、微かな振動が伝わった。


 ドン


 ドンッ


 ドンッ!


 カインが眉をひそめる。


 「……あらぁ、もう時間かしらね」


 天井の一部が崩れ、

 光が差し込む。


 次の瞬間――


 巨大な火柱が、壁ごと突き破って飛び込んできた。


 爆炎。


 灼熱の衝撃波が空間の歪みを焼き払う。


 黒い影が揺らぐ。


 「……お仲間がいたようねぇ」


 火柱の向こう側から現れたのは――


 紅蓮の炎を纏う人影。


 赤と黒の装甲。


 手には長く巨大な杖。


 背には燃え盛る翼。


 美佑だった。


 以前とはまるで別人の姿。


 炎そのものが人格を持ったような存在感。


 カインが目を細める。


 「……その姿、あなた”猛火”の能力使いかしら」


 美佑は笑う。


 「いんや、違うね。俺の炎はそんな生ぬるいものじゃねぇ」

 

 杖を肩に担ぐ。


 瞳が深紅に燃える。


 「俺の炎は」


 「存在ごと燃やし尽くす」


 「灰すら残さねぇんだよッ!!」


 次の瞬間、


 床が爆ぜた。


 美佑の身体が弾丸のように跳ぶ。


 一直線に――


 カインへ殴りかかった。

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