第15話 【 アイ愛哀して 】
詩織が美空と出会った同時刻。
オルフェウス機関――
「はぁーあ、賛歌者ちゃんのせいで実験体が減っちゃったじゃないのぉ」
ネイルをしながら、そう話す男。
鎮魂者――それが彼の地位だ。
役割は、実働部隊の統率とそれを処理することだ。
「うるさいカマ野郎。だいたいあんたが寄こしてきたあの布切れ、何なのよ」
「あれかい?あれはぁ、指揮者ちゃんから渡されたものだから私もよく知らないわよぉ」
いちいち癪に障る話し方だ。
イライラする。
「それよりぃ、見てみてこれ」
鎮魂者が作り出したキューブ型の投影機。
そこには、詩織と美空の姿が映っていた。
「ねぇ、この子使えると思わない?」
鎮魂者は、詩織を指さしながらそう言った。
「馬鹿か、あんたは。そいつが件の『聖人殺し』だよ」
「あらっ!そうなのぉ?かわいい顔して、恐ろしい子ねぇ。じゃあ……」
そういいながら、美空の方に指を移す。
「この子はどうかしら」
「……どうかしらって言われてもねぇ」
正直、どうでもいい。
私は、我が主が復活できれば、それでいいのだ。
「あらあら、このピンク髪の子。いい「愛」をお持ちで」
「愛?」
「そう、愛よ愛」
投影機を覗くと、美空が詩織に「一緒に住まないか」と言い寄っている場面だった。
「この子、『聖人殺し』ちゃんに「とてつもない愛」を感じるわぁ」
何言ってるんだこいつ。
「愛、いいわよねぇ。」
「愛」
「愛」
「あい、あい、あいあいあいあいあいあいあい哀哀哀哀哀哀哀哀哀!!」
「哀ぃぃぃぃぃぃぃ!!」
鎮魂者が、そう叫びながら勢いよく立ち上がる。
「……あぁ、この子たちの「愛」を「哀」に変えてあげたい」
「そしてあわよくばその「哀」でワタシを……ワタシをぉぉぉぉぉぉ!」
「うるさい!!」
鎮魂者の頭を叩く。
本当に腹が立つ。
何が愛だ。
お前の愛は愛じゃない。
お前の愛は、歪んでいる。
「……あぁ、そうだ。指揮者からの神託よ」
落ち着きを取り戻した鎮魂者が、静かに言う。
「神託?」
「えぇ、「ヨハネよ、先刻の働き見事であった。微量ではあるが、復活に近づいている」ですって」
「よかったじゃない」
そうか
微量……か。
あれだけやって、微量か。
いや、邪魔が入ったから微量だったのだ。
そうだ
邪魔が入らなければ
あいつが
『聖人殺し』がいなければ
いなければ――
「ねぇ、鎮魂者。その話、乗ったわ」
「あら、珍しい。熱でもあるの?」
「違うわ」
私はヨハネ。
我が主を――神を愛し、愛される者。
「私の愛を邪魔するものは、全て壊す」
「それだけよ」




