第8話 始之巫女《ハジマリノミコ》 】
『『はははッ、吹き飛んだ。全てが吹き飛んだ!!ハハハハハハハハッ』』
光が爆ぜ、あらゆるものが光の粒子となった部屋で、ひとり笑みをこぼしていた。
『『主よ。あぁ、我が神よ、すべての罪が洗い流され、新たな世界へと生まれ変わります』』
星七も、美佑も、クローン体も。あらゆるもの全てが光の粒子となっていく。
ただ一人を除いて。
『『洗練から免れたか』』
詩織の姿を見て、目を細める。
『『聖人殺しとは、名ばかりではないようだな。つくづく癇に障る力だ』』
―――♪
どこかから歌が聞こえた。
か細く、今にも消えそうな歌。
「……歌が、聞こえる」
「この声は……星七ちゃんの……」
『『どこから聞こえるッ、この歌――歌…だとッ!?』』
詩織の方を見る。
口は動いていない。
他の光になっている奴らも声は出せないはず。
なら…どこから――
『『あぁ、クソッ!!不快だ!』』
そう言いながら、暴れ回る。
「……星七ちゃんの……声だ。へへっ……きれいな声じゃん」
星七は言っていた。本当は歌が好きだって。
でも、好きには歌わせてもらえなかった。
だから、こっそりと残していたのだ。
リエラが。検査員がいない隙を見て。
ボイスレコーダーに、歌を。
勇気の出る歌を。
あのとき助けてくれた歌を。
手に力が入る。
「……星七ちゃんが歌ったんだ」
拳に力が入る。
「……勇気をもらったんだ」
大丈夫
まだ諦めない
まだ――
「歌えるッ!!」
その言葉とともに、詩織の身体を蒼い光が包み込む。
と、同時に衝撃波が起こる。
『『なッ!?まだ、歌える……だと?ありえん……ありえない!!そんな姿で戦えるはずが!!』』
「それでも……私は歌うッ!!」
喉は……大丈夫。
もう、触らなくていい。
あのときのようになるかもしれない。でも、
今だけは、破ってもいいよね――
息を吸う。
心臓は静かだ。
私はそれをいつも歌っているような感覚で
歌った。
――Sing, O Maiden — the world begins.
それを歌った瞬間、包み込んでいた光が装甲へと変わる。
『『!?そんな力、まだ隠していたのか!!』』
巫女装束――だが、拳のそれは、まるで神を――聖人を殺せるような、そんな形をしていた。
『『なんだ、その姿は……さっきのとは違うじゃないか』』
慌てふためくヨハネ。
『『そうだ、貴様の装甲は――ロンギヌスは消えたはず』』
粒子になっていた光が徐々に元に戻っていく。
『『なのに、なんなんだッ!それはッ!!』』
『『貴様の纏うそれはなんだッ!!なんなんだッ!!』』
詩織に向けて、攻撃を放つヨハネ。
だが、その攻撃は音となってかき消されてしまった。
「これは――私の全身全霊だ……全てを捧げた私の――私だけの力だッ!!」




