第8話 あいしゅ♪あいしゅ♪あいしゅ~♪
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回想。
『しゃも、ぐっすり寝てて全然起きないなぁ』
『えー? しゃも絶対起きてるわよ。あなたにおんぶしててもらいたいからずっと寝たふりしてるんだわ』
パパの背中で揺られながら、ぼんやりと両親の会話を聞いている。
『そうなのか?』
『ししゃも。~? 起きてるんでしょ??』
『すやすや・・・むにゃむにゃ』
『ふ~ん、寝てるんだぁ。・・・ねぇあなた、せっかくだからアイス買って帰りましょう』
『そうだな!』
『しゃもは寝てるから、パパとお母さんの分だけで大丈夫そうね♪』
『ヤダっ! しゃももアイス食べりゅ!』
『ほらぁ~やっぱり起きてた! 悪い子ね』
『だって疲れたぁ。もう歩きたくなぃ~!』
『もうわがままばっかり言って・・・悪い子はアイスなしよ』
『ヤダヤダヤダァ!』
『こーら。駄々こねないの』
『だってママがあいしゅ買ってくれないっていうんだもん!』
『悪いことしたときはなんて言うの? お母さんいつも言ってるわよね?』
『・・・ごめんなしゃい』
『はい。あなた、そろそろししゃも。に自分で歩いてもらったら?』
パパにずっとおんぶしててほしくて、パパの身体にまわした腕に少しだけぎゅって力を入れた。
『まぁ、もうすぐ家だから今日はこのまま帰ろう』
『やっちゃぁ!!!!』
『もうあなた・・・またしゃもを甘やかして』
『まぁまぁ。ししゃも。も反省してるんだしもういいじゃないか』
『まったく・・・。ししゃも。、パパに何か言うことあるんじゃないの??』
『パパありがちょう!!! あいしゅ♪あいしゅ♪あいしゅ~♪』
『まったくこの子は・・・調子がいいんだから。笑』
ママが呆れたように笑って、それにつられてパパも少しだけ目を細めて笑ってた。
どこにでもいる幸せな家族。それだけのことがただ嬉しくて・・・
***
「・・・・・・」
俺はししゃも。をおんぶしたままゆっくりと歩いている。
「・・・・」
「ねぇ・・・」
「ん?」
「・・・・・・ありがと」
「・・・お礼は言わないんじゃなかったのか?」
「しゃもを人に親切にしてもらったときにお礼が言えないようなゴミカスと一緒にしないで!」
「どの口が言ってんだよ・・・」
「・・・あと...」
「ん?」
「・・・・・・ごめん。...さっき、色々言い過ぎた」
「・・・・・・」
「キモイ男たちに追いかけ回されて・・・怖くて。他人のこと考えてる余裕なんてなかった。
大事なペンダントもなくしちゃって・・・不安で、どうしたらいいかわからなくて八つ当たりしちゃった」
「・・・・・・」
「ずっと何がなんだかわからなくて、頭の中いっぱいいっぱいで・・・助けてくれたのにぶっきら棒な態度取っちゃった。・・・・・・ししゃも。が最低だった。・・・・・・ごめん」
少年は背中で小さく震えているようだった。俺は一つ息を吐く。
・・・。
「・・・もういいよ。そんなに気にしてないからさ」
「・・・・・・助けてくれてありがとう」
「別にいいっての! こんくらい普通だ」
「普通・・・か・・・。・・・・・・普通って難しいよ」
「んあ?」
「さっきあのクソ野郎どもに捕まりそうになったとき、まわりにぽ前以外にもちらほら人いたけど、誰も助けてくれなかった」
「・・・」
「さっきだけじゃない。しゃもが助けてって言ったって、誰も助けてなんかくれない。助けてくれたと思ったら簡単に裏切られる。だからししゃも。は誰のことも信じない」
「・・・俺のことも信じられないか?」
「・・・・・・わからない」
「そっか・・・」
俺は少しだけ視線を上に向けた。
「じゃあそれでいいよ。俺は別に、俺のしたいようにしてるだけだからな。全部が全部、お前を助けるために何かしてやれるわけじゃねぇかもしれねぇし。だけど・・・」
「だけど?」
「とりあえず今は、お前のペンダントが見つかればいいなって本当に思ってるし、そのために俺がなにかできるならやってやりたいって思ってるからさ。だからよ・・・そのぉ・・・俺のこと全部は信じてくれなくていいけど、そのことだけは信じといてくれ」
「・・・・・・・」
「・・・うん。・・・・・・わかった」
「おう」
「・・・ねぇ、そういえばぽ前、名前は?」
「あ、そういえば言ってなかったっけ?」
「うん。君の名は?」
「燈真だ。五十嵐燈真。かっこいい名前だろう??」
「はぁ? ししゃも。のほうがいい名前だし!!」
「お前なぁ・・・まぁいいか」
「五十嵐燈真・・・。燈真くん・・・じゃあ燈真きゅんね」
「きゅん!?」
「燈真きゅん。そっちの方がキュートでしょう?? ししゃも。がつけてあげたあだ名なんだから大事にしてよね!」
「あだ名ってほど捻りねぇよなぁ!? ・・・まぁいいか。なんでも好きに呼べよ」
「芋顔ボロボロ制服チー牛怪力クソ野郎」
「投げ捨てるぞお前!!」
二人はときに罵り合いながら、内容のない話をしながら進んでいく。
「ていうかどこに向かってるの??」
「最初に俺たちがぶつかったところだ」
「でもそこ、もうしゃもがさっき探して見つからなかったんだけど」
「でもそこで落した可能性が高いんだろう? もしそんとき落したんじゃなくて、ぶつかった後か前かのどっちかに落としてても、ぶつかった場所を起点に歩いて探していけばいいだろう??」
「そうかもしれないけど・・・」
「まぁ今んところ手がかりもなんもないんだから、とりあえず行ってみようぜ」
「うん・・・」
二人は最初にぶつかった場所に到着し、あたりを捜索する。
「んー・・・やっぱなさそうだな・・・。つーかペンダントってどんな見た目してんだ??」
「水色の、魚の形したペンダント」
「大きさは?」
「んーーー日本人のち○ぽの平均サイズぐらい」




