第83話 確執
しばらくして、リビングが賑やかになった。
ジペットやゼロ、デジデジ、それから俺の家族がぞろぞろと帰ってくる。
それぞれの調査結果を報告し合いたいところだが、まずは夕飯だ。
母ちゃんの号令で、全員がテーブルにつく。
「今日はなんだかおかずがいっぱいね! 豪華じゃなぁ~い」
「うほぉ……! 旨そうだ。母ちゃん、おかわり!」
「お父さん、食べる前におかわりしないの」
「早く食べようよ! 俺お腹ペコペコ!」
弟の颯真が騒ぐ。母ちゃんが時計を見る。
「ちょっと待って。一真ももうすぐ来るから……。あっ、来たわ」
リビングの扉が開いて、五十嵐一真――兄貴が入ってくる。
「うほ……。なんかまた人が増え……」
「一真兄ちゃん遅いよ! こちらジペットさんとゼロさんだって!」
颯真が元気に紹介した瞬間。
ジペットが、でかい声で言った。
「おぉ!一真だな!こいつは問題発言が多いから気を付けないといけないんだ!」
「……お前はどっちだ!?」
兄貴の視線が、ゼロを捉えた途端に鋭くなる。
眉間に深い皺が寄って、ずかずかと詰め寄った。
「兄貴……?」
俺が声をかけても、兄貴はゼロから目を逸らさない。
ゼロは静かに息を吐いて、ほんの少しだけ寂しそうに笑った。
「そっか……まだ仲直りできてないんだね」
「答えろ!!」
兄貴の喉が震える。
でも次の瞬間、兄貴の顔から怒りが抜けた。
「……まぁ……アイツが……そんなふざけた格好……するわけないか……」
落胆したように呟いて、兄貴は席につく。
「ちょっ、一真兄ちゃん!! 急になんなのその態度!? ゼロさんに謝ってよ!」
颯真が食ってかかる。
「ゼロ??」
「そうだよ! 須戸ゼロさん! なんで急にそんな冷たい態度取るの??」
ゼロは首を振った。
「颯真くん、僕は大丈夫だよ。ありがとう」
「でも……! 一真兄ちゃん!!」
父ちゃんがテーブルを軽く叩いた。
「おい一真。颯真の言う通りだぞ! ちゃんと謝れ! それができないならお前は飯食うな!!」
母ちゃんも続く。
「そうよ一真。事情があるのかもしれないけど、こんなところでそんな態度取るもんじゃないわ。あなたならわかるでしょ?」
その空気を、ゼロがやわらかく割った。
「みんな、大丈夫だよ。せっかくのご飯が冷めちゃう。早く食べよう?」
兄貴が、少しだけ目を伏せて――短く言った。
「……悪かった」
その一言に、ゼロの目が見開かれる。
「……!! うん! 早く食べよう!」
母ちゃんがため息をついて、手を合わせた。
「まったく。たまに子供みたいにぶっきら棒になるんだから。誰に似たのかしら??」
そして母ちゃんはゼロへ頭を下げる。
「ごめんなさいね、ゼロさん。さぁ食べましょう。いただきます!」
「いただきます!」
全員の声が重なる。
「旨いんだな! 燈真は天才だ!!」
ジペットが最初に叫んだ。
「今日はししゃも。も一緒に作ったんだ」
俺が言うと、颯真が目を輝かせる。
「そうなの!? ししゃも。、料理できるんだな!」
ししゃも。が胸を張った。
「ししゃも。、才色兼備だから料理もできちゃうの!」
母ちゃんが嬉しそうに笑う。
「あらぁ~デジデジくんと一緒に、うちの子になってほしいわ。これでうちは大家族ね!」
「もうママさんったらぁ~☆」
ししゃも。がノリよく返しながら、俺はデジデジにだけ小声で聞いた。
「……デジデジ、味大丈夫そうか?」
「え?」
一瞬だけ固まって、次の瞬間にいつもの笑顔を作る。
「……あっ、大丈夫! すごくおいしいよ!」
その言葉に、少しだけ安心する。
「……そうか。ならよかった!」
でも、どこか浮かない顔をしているデジデジへの心配を、完全に消すことはできなかった。




