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【BL男子の日常】出会った男たちが嘘つきすぎて、洗脳事件とヤクザ抗争に巻き込まれて恋愛どころじゃない件  作者: 須戸コウ
第16章 推理と調査

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第82話 碁石



沈黙を破るため、俺はわざと明るい声を出した。


「……なぁ! 夕飯、一緒に作らねぇか??」


「え?」


「今日、母ちゃんたち遅くなるから俺が飯作ることになってんだ」


俺は勢いのまま続けた。


「ジペットたち、腹すかせて帰ってくると思うしよ。旨い飯作って待ってようぜ!」


ししゃも。は少しだけ口元を緩めて、ふん、と息を吐いた。


「……しょうがない。二人で待ってても暇だし、やるかぁ~」


「お前は一言余計だよな!」


キッチンへ向かうと、ししゃも。は案外迷いなく動いた。

手際がいい――と言いたいところだが、包丁の持ち方だけちょっと危なっかしい。


「んお? お前、結構普通に料理できるんだな……。包丁、気をつけろよ」


「当然でしょ!? 料理は乙女のたしなみなんだが?」


ししゃも。は胸を張ってから、少しだけ視線を泳がせた。


「……基本、施設は食堂みたいな感じだから作る必要ないんだけど。月一でみんなでご飯作りましょうー、みたいなのがあって。それに参加してたから」


「へー。そんなのあるんだな」


「うん……あ」


ししゃも。が急に眉をひそめた。


「なんだ?」


「ムカつくこと思い出した」


「おい、物騒だな」


「前に施設で、バレンタインだからみんなでマカロン作ろうってのがあってさ。ししゃも。も作ったの」


「おぅ、いいじゃねぇか」


「で、できたからケンちゃんにプレゼントしたんだけどさぁ!」


ししゃも。の声が一段上がる。


「あいつ、ししゃも。のマカロン見て開口一番に『碁石』って言ってきたんだけど! あり得ないんだが!?」


俺は思わず、鍋の前で固まった。


「……真っ黒に焦がしたのか?」


「焦がしてないんだけど!!」


ししゃも。が包丁を振り上げそうになって、俺は慌てて止める。


「アレンジで、きな粉とかすりごまとか使っただけなの!」


「あー……(察し)」


俺は視線を逸らして、咳払いした。


「……なんていうか、その……ドンマイだな!」


「変な気を遣うな!!」


怒鳴りながらも、ししゃも。の口元が少しだけ上がってる。

……なんだよ、笑ってんじゃねぇか。


「でもさ」


俺は包丁で野菜を切りながら続ける。


「こういう風に誰かと一緒に飯作んの、楽しいよな」


「おい、無理やり話題変えるな!!」


……って言いながら、ししゃも。も、ちょっとだけ頷いた。


「……でもまぁ、そうだね。ししゃも。も料理するの、割と好きかも」


「そうか!」


俺は嬉しくなって、勢いで言った。


「じゃあ今度料理対決しようぜ! どっちが旨いか、健人に審査してもらおう」


ししゃも。が即答する。


「いいよ。まぁぽ前じゃ、ししゃも。の相手にならないと思うけど!」


「はぁ!?」


「で、コーナー名は『ししゃも。のおしゃべりクッキング』で決まりかなぁ」


「なんだよコーナー名って! つーか俺の要素どこだよ!?」


「あるわけないだろ。ししゃも。が主役。脇役は黙ってろ!」


「この野郎!! ぜってぇお前より旨いもん作ってやるからな!!」


……そうやって、くだらない言い合いをしてる間だけ。

俺たちは、普通の中高生みたいに笑えていた。




挿絵(By みてみん)

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